第3幕ー3
折角なのでアステラスの方も読んでみてくださいね。
次の日の朝猛烈な悪夢を見てクワイガンは目を覚ました。夢の中に三田園朱理が出てクワイガンを呼びかけており、やがて出てきたと同時に朱理が放射能でドロドロに溶けた状態へと変わりやがて消えてゆくという夢であった。それは悪夢であった。しかし記憶を失った今朱理の顔をきちんと思い出す事ができなかった。
ベッドの中でクワイガンは溜息をついた。
クワイガンは眠れなかった。その理由の一つに火傷の痛みと精神の不安が同時に襲ってきたのも理由の一つである。いきなり記憶を消去されてしまい命の危険と隣り合わせの軍隊に入隊しなければならない実感が湧かないまま朝を迎えてしまった。
「あの女の子は俺を呼んでいたのか。だとしたら俺は??」
「おはよう!クワイガン、起きたか?どうしたお前そんな暗い顔をして。。」
クロスはクワイガンが暗い表情をしている様子であったので心配した。それに対してクワイガンは、クロスに思わず本音を吐き出してしまった。
「なあ、夢の中で女の子が俺の事を呼んでいるんだ。なあ一体誰なんだ。あの子は??ミズーリに乗っていた筈なのに思い出せないんだ。」
時間は朝の5時5分になった。地獄の朝の訓まで後25分ある。25分後の5時30分から地獄のランニングがスタートするのだ。その時ふと怒るような恐ろしい声で怒りの放送が入るのであった。その怒鳴り声は寮全体に響き渡った。
「おいさっさと起床しろ!!!25分後に朝の40周のランニングを行う。場所はアクアポリス士官学校の体育館だ。時間に遅刻した奴はプラス10周と朝飯抜きだからな。それから逃げた奴は承知しないから覚えておけよ!!!」
怒りの放送をしたのはベレドゥール・ローデンベルグであった。その余りの声の大きさにクワイガンとクロスは耳を塞いだ。
(朝からうるせえな。分かってるっつうの!!)
クワイガンは歯磨きをする為に立ち上がり洗面所へと向かった。壁にかかっている茶色の時計を見つめた。部屋を出て外の洗面所へと向かう。これから地獄のランニングで体育館を40周も走らせられるとなると拷問を喰らう。クワイガンは憂鬱な気持ちで洗面所へと辿り着いた。
水が流れるとふと思った。
「あー、、ってかここ真水なんだなぁ。ちゃんと水は出るんだな。湖の底だって言うのにね。
不思議だわ。」
クワイガンは身嗜みを整える為に顔を洗って歯を磨いた。顔を濯ぐ為に水を飲むとしょっぱくない事に気づいた。そんな時に1人の男がやってきた。それは、寮生で部屋が同じのデビット・ポーターであった。
「あんた昨日酷くうなされてたろ?悪夢でも観てたのかい?」
「ああなんか悪夢だった。覚えているはずなのに思い出せない。」
クワイガンは溜息を着いた。やがて朝5時半になるとクワイガン、クロスら30名近くのアクアポリス士官候補生達は、アクアポリス士官学校の体育館に集合した。やがてベレドゥール・ローデンベルグが竹刀と鞭を持って現れた。
「それではこれから点呼を始める。いいかこのランニングは毎日行うものだ。軍隊の訓練の基礎と言っても過言ではない。まず40周なんて可愛いものだ。それでも足りないくらいなんだからな。朝は5時半から7時までの1時間半。夜は、7時から12時までの5時間だ。昨日も言ったが軍隊における基礎体力育成の為にだ。これから戦場へ行き、魚人など、超越した能力を持つものと戦わななければならない時が来る。その時に逃げなければならないこともあるだろう。その時に走る気力がなければそれが原因で命を落とすと言うことも考えられる。いいか、辛いのは皆同じだ。弱音を吐くことなくしっかり望んで欲しい。では、返事を1人ずつ行え!!!わかったら返事をしろ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「はい!!!!!!!1番アレイス・ローウェルゼン!!!!」
「はい!!!!!!」
「声が小さい!!!!!やり直せ!!!!!聞こえねえんだよ!!!!!!てめえ朝から図に乗ってんじゃねえぞ!!!!!!あ??????返事しろよ、、、こらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「もういい次、、、アミャーダ・ロウウェン!!!!!!」
「はい!!!!!!!!!!!!!!!!」
茶髪の長身の女子士官候補生のアミャーダ・ローウェンは大声で返事をした
「はい!!!!!!!!!!エヴェンス・アレン!!!!!」
「声が小せえんだよ!!!!!!!腹から出せよ!!!!!!!こらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ベレドゥール・ローデンベルグは怒鳴り声を上げた。ベレドゥールの怒号に圧倒されながらも女性士官候補生のエヴェンス・アレンは、大きな声で返事をしたのであった。
「はい!!!!!!!!!!!!!!!!エヴェンス・アレン!!!!!!!」
「デルヴィス・リーフィレイア、、、いやクワイガン・アラハルト!!!!!」
「はい!!!!!!!」
「てめえよぉぉ、、、、、声が小せえんだよ。1人で50周走れよ!!!!!!分かったか!!!!!分かったら返事しろよ!!!!!!こら!!!!!!!次、、、クロス・レッサー!!!!!!!
「デヴィッド・ポッター!!!!!!!!!!!!!!!!」
「はい!!!!!!」
「ドリステン・リーズリ!!!!!!!」
「はい!!!!!!!!!!!!!!!!」
約40名近くの軍隊員の点呼が終了すると隊員達と士官候補生は一列になって体育館にてランニングを開始したのであった。そんな士官候補生をベレドゥール・ローデンベルグは恐ろしい形相で睨み付けていた。手には鞭を持ちやる気のない士官生達が手を抜かないように見張っていた。また20周以上走り続けてペースが遅くなってゆく士官候補生達に怒鳴り散らした。
「こらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!手を抜いてんじゃねえぞ!!!!!!この野郎!!!!!!!!!!!!!!!!さっきから列が乱れてんだよ!!!!!!アミャーダ・ローウェン、、お前ペース乱すんじゃねえぞ!!!!!おせぇぇんだよ!!!!!てめえはよ、、、、早く走れこら!!!!!!!デヴィッド・ポーター、、、足遅えんだよ!!!!!殺すぞ、、、、こら!!!!!走れ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「はい!!!!!!」
25周目を迎えた。既にクワイガンは、地獄のような声を出し続けたせいで声が枯れてしまい体力が限界を迎えていた。
「おい、、、クワイガン・アラハルト!!!!!クロス・レッサー!!!!!!貴様もっと早く走れ!!!!!とろいんだよ!!!!!姿勢が乱れていんだよ!!!!エヴェンス・アレン!!!!貴様は、手を曲げるな!!!フォームがなっとらん!!!!!本当にやる気があんのか????こらぁぁぁ!!!!!!!」
ベレドゥール・ローデンベルグは怒鳴り散らしていた。どこからそんな声が出るのかとクワイガンは心の中で唱えていた。40周は地獄であった。なんとか終えた。まだ朝の7時にすらなっていない。そんな中アミャーダ・ローウェンは、疲れ切ったのか、ランニング途中に休憩を申し出た。
「大尉申し訳ありません!!休憩を!!!」
するとベレドゥール・ローデンベルグは手に持つ鞭を使いアミャーダの身体を引っ叩いたのであった。ベレドゥールは怒りの形相であった。そして冷酷な目でアミャーダを睨み付けていた。彼女の髪の毛を引っ張り付けると怒鳴り散らした。
「誰が休憩して良いって言った??走れ!!!!!」
アミャーダは余りの激痛に耐えたがそれでも痛かったのであろうか、悶えた。彼女の目から涙が溢れていた。それに観かねたドリステンはベレドゥールに食ってかかった。
「良い加減にしてください!!!彼女は休憩したがっているじゃないですか!いくらなんでも酷すぎます!!!」
「うるせえんだよ!!!!!」
べレドゥールは、ドリステンを殴りつけた。
「ここに来てからじゃ、もうおせえんだよ!!!早く走れ!カスが!!!」
べレドゥールの剣幕に圧倒され、ドリステン・リーズリは、恐怖のあまり震えながら走り出した。
ようやく50周走り、もうヘトヘトだった。このランニングを毎日行わなければならなかったのは苦痛だった。
「今日のランニングはここまでにする。午前中は朝食後に、銃撃訓練と、戦車演習!!。午後はミエスタに向かって市民の救出だ!!!今は戦争中だということを身に染みて、こうどうしろ!!!。解散!!!!」
「一同、礼!!!ありがとうございました!!!」
軍隊員全員で敬礼をした。
べレドゥールは、ムチを持つと消えていった。
直ぐにクワイガンはドリステンの方へ言った。
「おいおい、大丈夫か??」
「大丈夫よ。気にしないで!!こんなの、軍隊にとっては当たり前なんだから!!、あなたこそ、50周も走って大丈夫なの??」
ドリステン・リーズリは、べレドゥールにぶん殴られた傷を抑えながら、クワイガンへ聞いてきた。
「平気さ、今のとこはね。」
あまりの地獄に、クワイガンの心は折れかけていた。そしてこの後の朝食でクワイガンとクロスは恐るべきこの世界の真実を知る事となる。
読んで頂きありがとうございます。




