幕間
デルヴィスは、アクアポリス士官学校の入学が決まった日の翌日になり、リハビリステーションへと向かった。段々と義足も使えるようになり、ふと足を見てみると、義足と思っていた所は前と同じように問題なく、足が付き、歩けるようになっていた。デルヴィスは、女医のヴェスターに質問した。
「ヴェスター先生、俺の左足に接合しているのって義足だった筈じゃないですか??一体どうして??」
「ああ、デルヴィス君、、あなたの義足は特殊でね、時間が経つと、取れた足を再生して元通りの皮膚細胞へと変わっていくのよ。つまり義足は元通りの足へと変化していくって訳。死んでしまった細胞の代わりに新しい細胞が作りだされるの。そうする事で、あなたは、今まで通り歩けるようになるのよ。」
ヴェスターの説明によると、失った足を再生してくれる最新鋭の義足らしいのだ。つまり前と同様、足を使って歩いたり走ったりできるようになるという事だ。
「骨だけ、人口の物になるってことですね。なるほど。」
「もうすぐ退院だわね。退院したらいよいよ士官学校に入るのね。大変ね。陸上人なのに。」
「いいえ、、まだ諦めた訳ではありませんから。絶対にこの世界で朱里を取り戻す為に、必死に頑張りますから。だから良一いや、、ジェレミアと共に、この世界で生きていきますから。」
デルヴィスは覚悟を決めていた。デルヴィスが海上自衛隊で公平だった時も、常に自分の意思は貫き通す性格であった。それは変わっていなかった。デルヴィスは、ベッドへと戻ると隣のベッドにいたジェレミアは、思い出したように口にした。
「今日って、、綾と琹と由佳と梨紗ちゃんの命日だよな。覚えてるか、チャレンジャー号の沈没事故。」
「チャレンジャー号、、、、まさかあの爆発事故か。まさかあの事故も、、、」
デルヴィスは、親友のように仲の良かった3人の友人、結城綾、結城琹、村尾由佳、そして幼馴染みで同じゼミの後輩加納梨沙が死亡したチャレンジャー号の沈没事故を思い出していた。
ジェレミアも思い出していた。何故ならあの事故は、イスラムの核保有国による核実験の失敗によって起こされた事故だと報じられたからだ。だが今日で確信した。今回のミズーリの事故。そして、バイキング号などのカスピ海の悪夢と呼ばれている船の沈没事故の原因はブルエスター帝国が放つミサイルにあったのだ。
「間違いねえ、、、あれは事故なんかじゃねえさ、核実験の為に街に放ったミサイルが水上で爆発したんだ。だから、、あの4人は、、湖底人によって、、ブルエスターの奴らによって殺されたんだ。」
ジェレミアは、怒りを露わにしていた。
特にデルヴィスは、この4人とはかなり仲が良く、家に遊びに行ったり、旅行へ行った事もある仲だった。もちろん付き合う前の朱理もいたが。綾と琹、由佳の3人が朱理とデルヴィス(公平)を出会わせてくれたと言っても過言ではなかった。
「朱理を紹介してくれたのは綾と琹と由佳だった。全く喋った事がなかった朱理と喋るきっかけを作ってくれて俺たちは付き合って結婚の約束までしたんだ。なのに、、殺されたなんて、、、、そんなの許せるかよ。
俺は決めたんだ。あの4人の仇と、朱理を取り戻す為に、、、この世界で戦う。どんな辛い事になっても、、一人の軍人として。」
デルヴィスは、決意した。
強い決意と裏腹にこの世界を変えたいという信念がぶつかる中、この世界のあり方を変えるようなものすごいエネルギーをデルヴィスは感じていた。
「明日から士官生として人生をやり直す。そのために、心を入れ替えて、、陸上人としてではなく、、湖底人としてな。ジェレミア、、お前はどうする?」
「俺も同じだ。。4人いや5人の仇を取るさ。
何度挫ける事になってもなあ。」
ジェレミアも決意した。そして2人の思いは、この世界で生き抜くという決意へと繋がった。
そして次の日、病院を退院する事になったデルヴィスとジェレミアは、荷物を持ってアクアポリス士官学校へと向かった。そうここは、湖底人のアレイティ湖底軍隊へと入隊する多くの軍人を輩出した学校だ。湖底軍隊の軍曹であるヴァルデンス・ユーグベルト、ベレドゥール・ローデンベルグ、、そして総合司令官ベテルギウス・クロウリーの出身校でもあるのだ。
「ここが、アクアポリス士官学校??」
2人は、アクアポリス士官学校の入り口の前へ向かった。そこにはアクアポリス士官学校の総長の像が建てられている。そして恐る恐る中へと入る。事務員らしき男に話しかける。
「あのすみません。士官学校長はいらっしゃいますでしょうか??」
「少々お待ちくださいませ。」
事務員らしき男は、無線を繋いだ。暫くすると、女校長らしき女性が現れた。そしてその女性の格好を見て、デルヴィスは、声をあげそうになった。彼女はいかにもな魔導士の格好をしていた。女校長は礼装を着飾っていた。
ここは士官学校のはずだ。
「初めまして。アクアポリス士官学校校長のミスキーヌ・ロレンツィと申します。あなた方お2人が当学校に入学希望の士官生でございますね。私共の学校アクアポリス士官学校では95パーセントのお方が、後にアレイティ帝国湖底軍隊へと入隊をなさっている軍隊育成学校なのです。当学校は、アレイティ理事会の管轄の元、軍隊入隊に必要な基礎知識からアビリティを使った戦闘などにかなり重点を置いたカリキュラムを用意しております。デルヴィスさん、ジェレミアさん、あなた方おふたりには特別クラスへと入って貰います。そこで湖底軍隊員になる為の基礎的な知識を学んでくださいね。」
ミスキーヌ・ロレンツィは魔道理事会の1人、そしてアレイティ理事会の単語を聴いた時に、デルヴィスは、疑問を覚えた。この世界は魔法でできているのか。だとすれば、自分達がこの水中で呼吸できているのも、魔法の力なのかと思う。
「あの学費は??学費ないと払えないんじゃ。」
「学費、、、それは、湖底軍隊員なった時に払って頂きます。もちろん給料から差し引くという形でね。あなた方は陸上人ですし、特別待遇という形を取らせて頂きますので、、その代わり、、しっかり叩き込んでくださいね。当士官学校は、鬼のように厳しい教官がしっかりと指導して下さいますから。」
ミスキーヌ・ロレンツィは笑っていたがその中に、何か狂気を感じるものがあった。そしてミスキーヌの案内で校長室へと呼び出されたデルヴィスと、ジェレミアは、軍服を手渡された。これから毎日、この軍服を着て士官学校に通う事になるとの事であった。そして軍人が使うソードと呼ばれる謎の剣。
「まずあなた方が着て頂くのは、この軍服です。この軍服は軍人の証でもあります。現在アレイティ帝国は戦争を繰り返しており、こないだもミエスタの街へ、核ミサイルが落とされました。そして大勢の人々が亡くなったのです。そしてそれだけではなありません。隣国ブルエスター帝国から魚人が攻めてきたのです。」
「魚人??なんですかそれは??」
デルヴィスは、ミスキーヌへと聞き返した。そうミエスタで暴れていたあの超進化生命体こそ魚人である。
「人類を喰い尽くす恐ろしい生命体です。我々アクアポリスは、強力なシールドを張り、魚人が攻めて来ないように見張っているのですが、
ミエスタでは既に多くの市民が殺され犠牲になりました。」
「人類を喰い尽くす??、、そんな恐ろしい奴らが。」
「ですので、、このアビリティソードは魚人を倒す為に必要な武器なのです。所持する事でその使用者の能力を最大限に引き出し超能力へと変化させます。それにより雷撃や嵐、、竜巻、、爆発など、ありとあらゆる力を使いこなす事ができる。元々我々アレイティ理事会が開発して優れものです。軍隊員として自覚を持っていただきたいのです。軍人の仕事は、、戦うだけではありません。人類を喰い尽くす魚人をこの手で殺す。それだけなのです。アビリティというのは湖底人が生まれつき持つ魔力のことです。我々の祖先は元々魔族でした。強い魔力を持つものは魔道士として修行の道に入ります。」
魔族という歴史が明かされていく中、ミスキーヌの長話を聞いているとどうやら不思議な感じがしてきた。どうやらこの世界は本当に異世界のようであった。湖底に住む人間に魚人の存在。そして恐ろしさのあまり、魚人が生息するブルエスター帝国の存在。2つの課題がずっしりと襲いかかる中、デルヴィスは思い出していた。それは7年前に起きたチャレンジャー号の沈没事故である。もしその事実が本当ならば、綾と栞、そして由佳、梨沙、朱里はどこへ行ってしまったのだろうか。
「教えてください。7年前、このカスピ海で1隻の船が沈没したんです。その船は表向きでは事故として処理されたんです。なのに遺体は半数以上が発見できなかったんです。まさかこの事故は、、ブルエスター帝国の仕業だったんですか???」
「その事実があることは、我々も認識できませんでした。事実カスピ海のあのエリアには核弾頭が装備をされています。もしそうならば、ブルエスター帝国の領地に入ったということで迎撃された可能性もあります。そしてあなた方が乗っていたという艦隊、ミズーリもその傾向があります。その事実に関しては国家機密事項ですのでお話する事ができません。軍本部の情報を外部に漏らす訳には行かないのです。」
ミスキーヌは口を閉ざした。そしてこの2つの沈没事故、そして過去に沈没した多くの船は
爆発を遂げている。それはまさに魔の3角海域、バミューダトライアングルに酷似していた。まさか、バミューダトライアングルが何か関係をしているのかと、デルヴィスは、考え始めた。
「なあお前、、魔の三角地帯って聞いた事あるか???バミューダトライアングルって呼ばれている恐ろしい地域の事。」
デルヴィスは、ジェレミアに小声で聞いた。その伝説が事実ならば、このカスピ海にも魔の三角地帯が存在する事になる。
そしてそこに存在する魚人の存在。沢山の謎がぶつかる中、2人の地獄のような軍人生活が始まろうとしている。
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