7月20日 その⑩ 異世界人とアイテムテレポート
食料品を買い終えた俺達は帰路につくべく歩き出すが、如何せん荷物が多い。
服に下着、2人の一週間分の食糧ともなれば結構な大荷物だ。
この荷物を抱えて真夏の炎天下を歩くことを考えると憂鬱になってくる。
「ソウタソウタ、私にいい考えがあります!」
俺のうんざりとした様子を伺っていたシオンが話しかけてくる。
どうせろくでもない事だと思うが、一応聞いてやる。
「なんだ?」
「私の魔法で荷物を家まで送りましょう、そうすれば楽ちんです!」
「そんなこと出来るのか?」
「出来ます、記憶にある場所ならどこにでも転送可能です!」
まじか、超便利じゃん!
早速この大荷物を転送するため、百貨店内のひと気のない避難用階段の踊り場まで移動する。魔法を使っているところを見られるわけにはいかない。
階段の踊り場中央に荷物をまとめて置き、シオンはスマホ片手に魔法を使う準備入る。俺は誰か来ないか周囲を警戒する。
ひとつ心配だったのが、スマホの残バッテリー量だ。
ここに来る途中、シオンがバスの中で無駄に浮き上がったせいでバッテリーはすでに半分以下になっていた。
マジックポイントが足らず、今日買った大切な荷物が失われることになれば目も当てられないが、今後のことも考えると試す価値は大いにある。
「ソウタ、準備出来ました、荷物を転送してもいいですか?」
シオンが魔法行使の許可を求めてくる。
「……よし、やってくれ」
「わかりました! アイテムテレポート!」
シオンが魔法を唱えると荷物が目の前から掻き消えた。
「おお! すげえ!!」
あれだけの荷物が一瞬で消えた、まだ安心は出来ないのだが成功していたとすれば、今後の買い物の負担は大幅に軽減できる。
「ソウタ! 褒めてください!」
そう言うとシオンがこっちに頭を突き出してくる。
「よしよし、よくやったな!」
「えへへ」
よしよしと頭を撫でてやっていると、中空から布切れが4枚落ちてきた、そのうちの1枚が撫でていた手に乗っかる。
「あっ……」
やはり、マジックポイントが足らなかったのか、スマホの残バッテリー容量では転送しきれなかった布切れ、いや、パンツが階段の床に散らばった……。
「見ないで! 見ないでくださいいいいいいいい!!」
床に晒された買ったばかりのパンツを回収しようとシオンが必死に手を伸ばす、それを背中で押し止める俺、まさに鉄壁のディフェンス。
先ほどはどんなパンツを買ったのか、まったく教えて貰う事は出来なかったのだが、それが今はどうだ、目の前にはパンツ達が惜しみもなくその形状を見せつけてくる。
では、1枚づつ詳しく見て行こう。
「バカ! エッチ! ソウタの変態!!」
まず1枚目は雪より白い純白パンツでピンクのリボンがアクセントの、いわゆるマンガパンツだ。
マンガの世界では非常にポピュラーなパンツであるが、実は現実世界での着用者非常に少なく、パンツとしては絶滅危惧種に指定されている。
2枚目はお尻の部分にかわいいネコちゃんがプリントされたキャラクターショーツだ。13歳でこれを穿くのはどうかと思うが、異世界人の女の子もやっぱりかわいいものが好きなのだろうか?
3枚目は白とピンクの縞々パンツだ。
あるキャラクターの出現により広く認知されたパンツであるが、アニメやマンガと違い現実世界で見ると、なんというかもっさりしている。
そして最後を飾るパンツ、こいつは他の3枚と比べ異質だった。
生地はパールホワイトの総レースで可愛らしいフリルがあしらってある。
さらにブラ付き、上下セットだったのだろうか、コイツにブラは不要だと思うが……。
パンツの観察に集中したせいで、シオンがついに俺のディフェンスを突破し、パンツを手早く回収していく。
「お前、そのパンツはなんだ? それはちょっと大人っぽすぎるだろ」
ブラは不要だろ、とはあえて言わない。
「わ、私もそう思いましたが、店員さんが『女の子なら一着は勝負パンツを持つべき』と熱弁されまして……」
何と勝負する気なんだ。
「まあ分かったから、それ俺の背中のバッグに入れろ」
「ソウタに渡すのは、なんだかイヤなんですが」
「じゃあそのままパンツ手に持って歩くんだな?」
「うぅ……」
いそいそとバッグの中にパンツをしまうシオン、なんだか言いようのない背徳感に包まれる俺。
しかし断言しよう、俺は何も悪い事はしていないと!
水玉ももっさりしてない?