1人目③ 楠 さゆり:語り手→志伊良 秋穂
「また あきほ と同じクラスだよ。やった」
4月。
一階の渡り廊下に貼られた、クラス分けの掲示を見て、さゆりが嬉しそうな声を上げた。
私の背中を掴んで、ぴょんぴょんと跳ぶ。
さゆりが、こんな姿を見せるのは珍しい。
この子は、自分の感情を出すことを我慢してしまうことがよくあった。
私に対しては、なるべく無理しないよう言ってあるけど、それでも。
何かを言いかけて止めてしまったり、言い辛いことがあると困ったように笑って済まそうとする。
だから、こうやって嬉しそうにしている様子を見ると、本当に嬉しいんだろうなぁというのが伝わる。
「ほんとだ」
私は素っ気ない振りをしてみる。一緒になってはしゃぎたい気持ちもあったが、周りの目を気にした。
どうにも私は”しっかり者”を演じてしまう癖があるのだ。
無意識にそうなってしまうのだから、これはもう私の”性格”と言ってしまってもいいだろう。
そんな私の様子を見てか、さゆりが飛び跳ねるのをやめてしまった。
後ろを振り返ると、「あれ、私だけが嬉しいのかな」と戸惑った表情のさゆりがいた。
(まったく、可愛いんだから)
さゆりは、引っ込み思案でありながらも、思ったことがすぐ顔に出てしまうところがある。
私は、さゆりの頭をふわりと撫でた。
「そんな顔しないでよ。ほんとは、私もめちゃくちゃ嬉しいんだから」
私がそう言って笑うと、さゆりはパッと顔を輝かせた。
************
絶対に殺してやる。
さゆりをあんな目に合わせた奴を。
殺してやる
殺してやる
殺してやる
私は、知ってる。
アイツがあの子に毒を盛ったんだ。
昨日、メールが来た。
【あきほ、ごめんね。明日、全部話すから】
さゆりは優しすぎたんだ。
私は、全然優しくないから。
目に針をぶっ刺して、鼻をカッターナイフで切り取ってやる。
切り落とした鼻をライターで炙って、そいつをアイツの喉に無理やり押し込んでやる。
手足の指を全部、ペンチで根元から落としてやる。もしくは、鋸でゆっくりとゆっくりと切り裂いて、全身まで細々にして……。
くくく、愉快。
あああああ、さゆり。さゆりごめんさゆりごめんさゆりごめんさゆりごめん
私がふぁえfj」あょf付いていながら、可愛いさゆり、さゆり可愛い。
どおうしても許せない。
憎い憎い憎い憎い
クラスメイトのアイツだ。
アイツがやった。
その証拠に、アイツ、今も泣いてない。
すかした顔で、心の中できっとニヤニヤと笑ってる。
見てろよ。今に見晒せ。
さゆりの怒りを思い知れ。私の怒りを思い知れ。
「もう、いいよ。希美。ありがとう」
ずっと背中を擦ってくれてありがとね。希美
でも、もう大丈夫。私、もう泣かない。
私が仇をとるからね。
さゆり。
そしたら、また会えるね。