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第一話 序論

新連載。まったり進行予定です。

第一話


「嫌な時期がやってきたなあ!」


開口一番このような言葉は自分でもどうかと思うが、それもそうだろう。何せそろそろクリスマスイブである。そう、クリスマスイブである。多くは語らずともわかるであろう。そう、人生の勝者と敗者がはっきりとわかるアレである。俺こと才羽波人はもちろん後者である。


「ああ、そうだな同士波人よ。こんなすがすがしい朝すらも今は恨めしい。」


コイツは俺の友人だ。特に特筆する点はないのだが、なぜか気が合う。そして俺と同じく年齢=彼女いない歴である。


「さて、今年も彼女が出来ず、隣で一緒に登校しているのがこんな汚らしい何の華もない男なわけなんだが。」


「言うじゃあねえかこのクソカス波人が。」


「まったく、なぜ俺に彼女が出来ないんだろうか。」


「そりゃあそんなクソカスな性格してるからじゃないのか。」


「容姿端麗・文武両道・高身長と非の打ち所がないと自負しているんだがなあ。」


「そういうとこだぞクソカス野郎。」


そんなにクソカスと連呼されるいわれはないと思うのだが。


「で、まじめな話なぜ俺たちに彼女が出来ないんだろうな。」


と、友人は非常に残念そうな顔でつぶやく。こいつはこいつでこの一年いろいろと動いていたから、その分つらさが大きいのだろう。


「なんでだろうな。やはり顔じゃないか?」


正直、俺たちは他の高校生と大きく変わっているところはない、一般的な高校生だと思っている。容姿・成績・運動・コミュ力など、他のやつらと劣っているとは思わない。なのになぜか他のやつらは普通だろと言わんばかりに彼女を作っていやがる。全く理解できない。


「でも顔面偏差値低いやつでも作っているという異端者も多いぞ。」


「あいつらは運999なのだろう。運に全振りしているから顔面偏差値低くても問題ないんだ。」


「反吐が出るぜ。」


「まったくだ。」


「「HAHAHAHA」」


全く、つらいぜ。何が一番つらいって、今俺たちを追い越していった同じ高校のカップルがこの話を聞いていたようで、大笑いされたことである。処すしかないか。


「どうする、あいつら処すか?」


「俺も全く同じことを考えていたよ。さすが我が友。」


「「HAHAHAHA」」


はあ…。やはりこの時期は憂鬱になるな。いつもならもっと会話も弾み、いつの間にか学校についているのだが。友人も言葉にキレがない。


「それはそうとだな波人よ。」


「うん?」


「彼女を作るにあたり重要なものは何だと思うね?」


いつになく真剣な面持ちでそう尋ねてくる。来年に向けて今から用意しておこうという腹なのだろうか。しかしそうはいかない。万が一こいつに彼女が出来てしまったら来年は本当にボッチじゃないか。


「やはり洗脳技術じゃないか?」


よう言うたな、と、そういいたげな顔で友人はこっちを向く。


「一度洗脳してしまえばこっちのものだ。理想の彼女が出来上がるぞ。性格はこっちの思い通りだからな。」


「人としてどうかと思うんだが。」


「その上二人目、三人目を作っても全く問題ない。ハーレムすら思いのままだ。」


「間違いなく人としての階段を転げ落ちてるな。」


「いや、それは違うよ。一歩踏み出したんだ。降りたんじゃない。」


「なにを言っているんだコイツ…。」



この時は、このなんともない会話がこれから先ホントに実現するなんて思いもしなかった。そして俺がこの世界でした最後の会話であったことも。



次回更新は未定ですが、そんなに更新期間は開けません。

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