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旦那とギャル子とクロスケと教師の勘違い




 私は高校で教師をしている。

 女教師というと男子生徒の憧れ的なイメージがあるけれど、そんなことは全然ない。

 若干ぽっちゃり系だし眼鏡かけてて黒髪を後ろでまとめた地味な感じで喪女な28歳。ジミー先生とあだ名されてるのは知っている。

 だけど教師は昔からなりたかった職業だし、生徒の為にも手は抜かずにしっかりと頑張っていた。

 私は学校が好きだったから、子供達にも学校が好きになって、笑顔で卒業してほしい。だから教師になったのだ。


 そういうのは言わなくても雰囲気で察してくれているのか、有り難いことに悩み相談をしてくれる子たちもいる。にも拘らずジミー先生なのは何でだろう。舐められているのか。

 とりあえず相談してくれるんだから嫌われてないと信じたい。

 でも逆に悩みを溜め込んでしまう子もいて、そういう生徒には厚かましいと思われてもいいので話を聞くようにしていた。


「最近暗いけど、何か悩み事? もし話せることだったら、先生に話してみない?」


 担任クラスの男子生徒。

 いつも幼馴染と一緒に居る彼だけど近頃は一人沈んでいることも多い。

 心配になって話かけると、しばらくは何も言わなかった。でも焦っちゃダメ。口を開くまでひたすらに待っていると、観念したのかポツリと答えてくれた。


「幼馴染が……俺の父親の愛人になりたいって」


 思った以上にディープなNTR展開だった。

 でも、言ってくれた以上、途中で投げ出すわけにはいかない。

 取り敢えずNTRについて深く知る為に、私は資料を集めることにした。




 ◆




 自分で言うのもなんだけど、ママ似のアタシはけっこーな美少女だ。

 スタイルだって高校一年生にしてはイケてると思う。大きさ的にもくびれ的にも。

 短いスカート、大きく開いた制服から覗く胸の谷間。露出多めの服を着こなして、染めた髪にばっちり決めたメイク。

 カッコは完全に白ギャル。元がいいしこれでもモテる。寄ってくるのがチャラいのばっかなのは、ちょっと引っ掛かったりするかもしんないけど。


 でもまー、なんというか、アタシは特別なヤツじゃない。

 家族が皆(一部除く)すごいから、そう思ってしまう。ていうかそう思ってるから、派手なカッコのギャルになっちゃったのかも。なんつーか、些細なハンコー的な。

 つまりアタシは目立たないフツーの女の子なのだ、きゃはっ……なんつって。


「ねー。今晩泊めてよ」

「えー?」

「お願いっ、親と喧嘩しちゃってさー」


 アタシの通う高校はスポーツが盛んな代わりに学力のレベルはそれなりで、運動部に所属していない奴らの中には放課後には駅前で遊び回ってるのも結構いる。

 アタシ達二人もそのタイプで、夜遊びはざらだ。外見からいけない想像をされがちだが、その辺りは真面目です。ウリどころかパパを探したりもしません。パパは一人で十分です。

 って、それはいいとして、ツレのゆーながウチに泊まりたいとか言ってる。どうしようか。


「しょーじきヤだなぁ」

「え、なに? ウチ嫌われてんの?」

「まさか」

「分かってるって。じゃー、あんたの家族がウチみたいなタイプ駄目な感じ? オヤジが厳しいとかぁ」


 人のことは言えないけど、ゆーなの見た目は結構奇抜だ。

 なんせ大人っぽい美形なツラに、アタシを遥かに上回る露出具合、制服のブラウス大胆に改造してヘソだし基本の谷間どころか黒のブラ見えてるし。いや、見せブラだけどさ。

 肌もしっかり焼いた黒ギャル、学校じゃアタシと合わせて白黒コンビなんて言われちゃってる。

 まー正直言うと真面目なご家庭ならものっそい怒られるタイプなのは間違いないし、友達として紹介されたら顔を顰められること請け合いなアタシ達だ、

 でも別に、泊まるのが嫌なのはそういう理由じゃない。


「んーん、そこは全然ダイジョブ。ただアタシ的に家族見られんのがヤなの」

「なになに、仲悪いの?」

「悪くはないし好きだけど、ちょっと色々あってさ」

「あー、ウチらみたいなんは風当たり強いしねー」


 けらけら笑うゆーなは大して気にした様子もない。

 てか、別にうちの場合はそんな風当たり強くない。思い切り遊んでるギャル風の格好してても、そこは本人のジシュセーに任せる的な感じだ。

 ただそれはそれとして、友達に家族を見られるのは嫌。なんというか、どっちかってーとアタシの親の方が変なので、可能な限り隠しておきたい。


「しゃーねーな、24時間のファミレスで時間潰すかー」

「そんならアタシも付き合う」

「いいの? わりーね」


 後でママに連絡しとけばいいだろう。

 偶には友達と一晩語明かすのも悪くないと、意気揚々夜の街を歩けば、なんかエンカウントモンスターみたいに行く先に立ち塞がる二人の男。


「ねーねー。そこのキミら、暇なの?」

「オレらと遊ばねー?」


 染めた髪にピアス、着崩した服にだらしない立ち姿。

 モノの見事にチャラい、大学生くらいのあんちゃんたちが、外見に相応しい軽さでナンパしてきやがった。


「遠慮しまーす、ごめんなさーいー」


 面喰いなゆーなは、一瞥しただけで興味を失い、男どもを押し退け進んでいこうとする。

 が、相手は諦めない。がっしりとゆーなの細っこい手首を掴んで、息がかかる距離までグッと顔を寄せた。


「そんなつれないこというなよ。美味しいとこ奢るよ?」

「代わりに君の体おごってもらうけどねー」


 ぎゃはは、と耳障りな笑い声を上げながら、もう一人はアタシの逃げ道を塞ぐように回り込む。

 ねっとりとした視線は、ゆーなのおっきい胸、谷間やブラに注がれている。……正直、気持ちはわかる。すごいよね、実際。アタシもそれなりに自信あるけどあれには勝てない。そういうレベルのシロモノを惜しげもなく晒してんだから、男は見るよそりゃ。

 まああいつらはアタシの方もエロい目で見てるけど。露出した部分を嘗め回すように。あからさま過ぎて居心地悪い。


「触んな。あと、息クセーんだから顔近付けんなブサイクども」


 そういうエロ視線が頭に来たらしい。

 沸点低いゆーなは暴言と共に唾を相手の方へ吐いた。うちの上のお兄ちゃんならご褒美だって言うだろうけど、残念ながらチャラ男達にそういう趣味はなかったらしい。


「このアマッ、優しくしてたらつけあがりやがって!」

「痛っ、離せよ!」


 いつ優しくしてたのかは分からないが、ともかく怒った男はゆーなの手首を思いっきり握りやがった。

 すごく痛がっている。流石に友達としてそれは見過ごせない。


「あんた、何やってんのよ!?」

「おとなしくしてなよー、キミも痛い目あいたくないっしょ?」


 アタシが文句を言っても、にたりと気持ち悪い笑みで、もう一人の男が肩を組んでくる。

 ぞわっとした。気持ち悪い。目は相変わらず胸を見てるし、こいつらホント腹立つ。

 でもやっぱり男で、力は強かった。振り払おうともがいても全然無理。それを見て「なに、くねくねしちゃって。誘ってる?」なんて言われてしまう始末。

 ゆーなも痛がっていて、でも逃げられなくて。周りも誰も助けてくれなくて、アタシ達は路地裏へと引き摺って行かれた。




 ◆




 東京モンはマジで冷たい。

 か弱い女の子が男に絡まれてんのに、誰も助けてくれない。

 路地裏を通ってアタシ達はどっかの廃墟ビルに連れ込まれた。

 卵が腐ったような嫌な臭いがする。気持ちが悪くなった。


「っ、何すんのよ!」


 乱暴に床に転がされて、ゆーなが思い切り怒鳴りつける。

 でも返ってくるのはにやにや笑い。イヤらしい感じ、こいつら本当にムカつく。けどまあ、こうやって廃ビルに閉じ込められて、逆に冷静になった部分もあった。


「大丈夫?」

「あー、アタシは一応」


 ゆーなは同じく床に這いつくばってるアタシをかばうように前へ出た。

 格好は完全に黒ギャルだけど、この子はそういう優しい子なのだ。なのに、ゆーなの勇気を馬鹿にするように男達はゲラゲラと笑いだす。


「おーおー、なに、麗しき友情ってヤツ?」

「可愛いねぇ」


 煽るような言い方をされても、アタシはもう「ふーん」としか思えなかった。

 こういうベタな状況になってしまうと落ち着いてしまうのは、家庭環境のせいだろう。

 けどゆーなは違ったらしく、激昂したまま全く収まらない。


「てめーらみたいなブサイクが調子乗ってんじゃねーよ!」

「あ? 調子乗ってんのはてめーだろ。メスはおとなしく言うこと聞いてりゃいいんだよ」

「まあいいじゃん、ちょっとくらい抵抗があった方が楽しめるだろ?」

「ははっ、それもそうだな」

「……っ。楽しむって、あんたらっ!?」


 ヒートアップしていくアタシを除く三人。

 その中で、ものっそい冷静な自分。なんか、もうなんかね? 一応質の悪い男に攫われて、友達ともども貞操の危機に陥っている訳だけど、何ら危機感が湧いてこない。

 だってしかたないじゃん。もう、こんなんオチが分かってんだから。


「そっちの子はどしたのー? 怖くて怖くて声も出ないかなぁ?」

「……ねえ、あんたらさぁ」


 いや、怖くないです。

 寧ろ呆れてます。この状況自体に。だからもう思いっ切り溜息を吐いてから、チャラ男達に最後の忠告をする。


「アタシらのこと、離した方がいいよ? ただじゃ済まなくなるから」

「ただじゃすまない。は? なに、お前、なんかできるつもりでいんの?」

「いや、そうじゃなくて。あの、言っておくけどね、アタシに手ぇ出したら、パパすっごい怖いんだからね」


 そう言うと辺りがしーんと静まり返った。

 けどそれも一瞬。男達は堪え切れず吹き出し、ぎゃははとすごい勢いで笑われた。てか嗤われた。


「なに、パパが助けに来てくれると思ってんの!?」

「馬鹿じゃねぇ!?」

「ほんよ、馬鹿すぎて笑えるぜ。大体よ……」


 そこで、空気の温度が下がった。

 男達の筋肉が沸騰したみたいにぼこぼこ音を立てて、ごきりと骨が鳴ったかと思えば、体の形がどんどん変わっていく。

 ゆーなは目の前の有り得ない光景にわなわなと唇を震わせている。

 変容は止まらない。纏っていた衣服を破る程に肥大化した体躯。既に容貌は人から遠くかけ離れている。

 男達は、僅かな間に、見るも醜悪な異形と化していた。


「ひぃ……っ!? な、なにこれ?」


 男達に攫われて、無理矢理犯されるくらいは想像していた。

 でもこんなの知らないと、ゆーなは怯えに後ずさる。

 裂けた口から零れる唾液、血走った目。あいつらは、凌辱だけじゃ飽き足らない。アタシ達を食い殺そうとしているのだと、直感的に理解したのだろう。


『どぉしたのぉ、お嬢ちゃぁん。パパが助けぇにきぃてくれるぅんだろぉぉ?』


 人に擬態して化け物。おそらくこうやって何人もの女性を喰らってきた。

 今迄そうやってきて、今こうしている。自分が捕食者だという自覚は、異形達を傲慢にさせる。

 愚かな餌の戯言を嘲り、おぞましい呻きを上げる。


「……っ!」


 化け物の視線がアタシに向いてると理解したゆーなは、やっぱりかばうように抱き着いてくる。

 怖くて震えてるのに、今にも泣きだしそうなのに、ホントいい子。優しい、大好きな親友だ。

 でも申し訳ないんだけど、アタシはあんまりこの状況に恐怖を感じていないというか、冷静というか。

寧ろ「やっぱりか」としか思えなかった。


「そーだと思ったんだよねぇ。もうね、大体想像ついてたもん。こっちはオチまで読めてるっつーの」

「ねぇ、な、なにいって」

「あー、ゆーな。怖がんなくてダイジョブだから」


 もしもこいつらがただのチャラ男だったなら、まだ怖かった。

 だけどこうやって化け物になってしまった以上もうなんら怯える必要はない。







「ああ、もう大丈夫だ」


 誰も筈の廃ビルに鉄の声が響くと同時に、アタシは溜息を零してしまう。

 そう、この手の危機は、アタシにとって全く怖くない。

 だって間に合うと知っている。

 どんな状況であっても、出待ちしていたかと思わせる絶妙なタイミングで登場する。


「何一つ、心配することはない」




 ────だって、アタシのパパは主人公なのだから。




『なぁんだ、てめぇはぁぁぁ?』

「名乗るつもりはないし、名を聞こうとも思わない。此処で死んでいけ」


 突如として現れ、ざっと一歩を踏み出したのは屈強な体躯をした男性。

 化け物たちは煩わしそうにそちらへ視線を向け。


 その時点で、もう終わっていた。


 断末魔の悲鳴も上がらない。

 アタシの目では追い切れないくらいの滅茶苦茶なスピードで間合いを詰めて、気付いたらもう化け物の首がなく、残った胴体を蹴り飛ばして。

 どっちが化け物か分からないくらいに呆気なく、異形の命は掻き消えた。




 ◆




「えーと」

「どしたの、ママ?」

「うん、いったい何があったのかな?」


 どうも、嫁子です。

 先日ドロビッチの襲来がありまして、リビングにて修羅場が繰り広げられました。

 本日、またしても大変なことになっています。

 うちの旦那が露出過多な黒ギャルをお姫様抱っこして帰ってきました。


「アタシらをナンパしてきた男の正体が実は化け物で、殺されそうになったんだけど、パパが来て助けてくれたの」


 一緒に帰ってきたのは私の可愛い娘、ムッスコの一歳下の妹になる。……仮称はギャル子にしておこうか。

 ギャル子が説明するには、あの黒ギャルは親友で、一緒に遊んでいたらしい。

 そこを化け物に襲われて旦那に助けてもらった。

 うん、後は聞かなくても分かる。

 どうせ完璧、ドンピシャ。まさに殺されようとする瞬間。旦那は最高に美味しいタイミングで登場して、化け物を圧倒的な力で退治したのだろう。

 だって主人公補正ってそういうものだからね。

 もうね時間調整しただろっていうくらい素晴らしき時機を、無造作にモノにしてしまう。

 つまり私の旦那様は、今日も今日とて主人公でした。


「えーと、あの。パパさん、ごめんね……腰抜けちゃってさ。ウチ、重くない?」

「軽すぎて心配になるくらいだ」

「そ、そう?」


 黒ギャル……ちらっとまくれたスカートの中、黒いスケスケ履いてたからクロスケでいいや。

 クロスケはお姫様抱っこされ、しかも落ちないようにか、事もあろうに旦那の首に手を回しぎゅーっとしがみ付いている。

 本人は気付いてないみたいが、おっきいお胸を押し付ける形だ。旦那は何ら動揺してないけど、見てるこっちは非常にモヤモヤする。

 だって私、娘のギャル子よりちっちゃいからね! 背も胸も! ……泣きたくなってきた。


「ねえ、ギャル子ちゃん?」

「此処に来るまでずーっとお姫様抱っこ。足くじいたって歩けない程じゃないのにさ、パパが“無理はしないでいい”って。なんかクロスケ嬉しそうだしさー」


 ちょっとふくれっ面なのは、ギャル子もまた旦那をちゃんと慕っているから。

 でも、まあ、それも想定済みだ。

 四十歳後半くらいの、年齢の割にガタイのいい長身の男性。

 イケメンというよりは強面。でも顔立ちがいいのは間違いないから、なんというか、古い映画の渋い俳優みたいな印象だ。頬に深い切り傷はあるけど。

 整っているとは言い難い黒髪もワイルドさを醸し出している。

 はっきり言って私の旦那はカッコイイ。そんな彼に命の危機を救ってもらったのだ、そりゃ悪い気はしないというものだ。


「ねえねえ、パパさんめっちゃカッコイイね。ギャル子、家族見られたくないって言うからどんな人なのかと思ってたけど」

「ちょ、クロスケ!?」

「あ、そういやさ。もう会っちゃったんだから隠す必要ないよね? 改めて泊めてくんない?」


 あ、もう言わなくても分かってるかと思いますが、実際はあだ名で呼んでいるけど、身バレ回避のため以後はクロスケ表記となります。

 んで、クロスケちゃんはもともと親と喧嘩して泊めてもらえるところを探してたとか。

 ギャル子は最初断っていたらしいが、「家族を見られたくない」という理由がなくなって、特に問題がなくなってしまった。

 それでも若干躊躇っていると、不意にクロスケが俯く。


「ごめん、無理言ってるって分かってるけどさ。流石にあんなことあった後じゃ、怖くて」

「あ……そう、だよね。アタシは慣れてるけど、ゆーなはあんなん初めてだもんね」


 友達のしゅんとした様子に心動かされ、ギャル子は仕方ないなぁと溜息を吐く。


「……ねえ、パパ?」

「構わないよ。泊めてあげなさい」


 穏やかな笑みで旦那はそう答える。

 普通の父親だったら見た目完全黒ギャルなクロスケにもうちょっと偏見もあるのだろうが、うちの旦那はそんなものまるでない。

 むしろ歓迎とばかりの態度。それが嬉しかったらしく、お姫様抱っこされたまま更にぎゅっと抱き着いてくる。


「マジで? ありがとー、パパさん!」

「こちらこそ」

「へ? なんかウチお礼言われるようなことしたっけ?」

「娘にいい友達がいると知れた、親としてはそれだけで有難いものだよ」


 その恰好から、大人からは結構煙たがられてたんだろーな、と想像がつく。

 だからこそ旦那のそのセリフは彼女の胸の奥の柔らかいところを突いたんだろう。

 いい友達、だなんて。そんな風に言われたのはきっと初めてだった。

 だからこそクロスケは頬を染めて、わたわたと。外見にはそぐわない少女らしい表情を見せる。


「これからも、ギャル子と仲良くしてくれると嬉しい」

「あ、や、そんな。ウチも、親友だって、思ってるし。あは、あはははは」


 はい、また一人陥落。

 もう完全に恋する乙女な顔をしているクロスケ。ギャル子はちょっと不満そうに「……だから合わせたくなかったのに」なんて呟いている。親友でも、大切にしている相手でも、やっぱり引っ掛かるところはある。

 そして当然、わたくし嫁子も同じ気持ちだった。

 

「ねね、パパさん。折角だしさ、なんか色々話聞かせてよ! 今日のあれもすっごかったし!」


 私達母娘の内心など知らず、クロスケはめっちゃはしゃいでいる。

 今の状況だけ切り取ると、その反応は憧れのヒーローに会った小学生男子みたいな感じで、わりかし微笑ましくはある。

 ただ、私は経験上知っている。

 この子もどうせハーレム要員希望になるんだろうなぁ。

 それがアリアリと想像できて、今から気が重くなる嫁子でした まる





 追記

 数日後、夕飯の食材を買いにスーパーへ行くと、ムッスコの担任の先生と出会いました。

 何故か顔を真っ赤にしていた先生は『んほぉとかダブルピースとか、貴女の旦那さんって本当に最低のクズだわ!』と言われました。

 意味が分かりませんけど、いきなり人の夫を屑呼ばわりはひどいんじゃないでしょうか。



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