つくりもの
2016/08/15
ため息も、悲しみも、きっとそれは正しいのだろう。正しいことを突き詰めれば、必ず絶望へと行き着くのだから。それがこの世界だ。生きるために目をそらそう。僕らは夢を語らねばならない。空しく輝く夢を見ねばならない。ほんとうも、かりそめも、行く先は絶望だけれど、歩きやすいほうを選べばいい。
2016/08/28
初めて歩くあぜ道の非日常的な風景に、少しの後ろめたさが背中を押して、私の心は浮き立っていた。当たり前のことを忘れていた。こんな場所も、私は歩けるんだ。その気になれば田んぼの中も。服や靴が汚れても、草の匂いが慰めてくれた。平坦なアスファルトの上で揺らぐ空気を、私は遠くから見ていた。
2016/09/08
夜の冷ややかな風が、時の流れを感じさせる。あれほど嫌っていた暑さも、もう少しと思うと名残惜しく思える。もし明日また暑くなったら、きっと早く終われと思うのに。ひと回りすれば、本当にまた来るのだろうか。「またね」が最後の人たちのおぼろげな姿が頭をかすめた。ひと回り。どれくらいだろう。
2016/09/08
うん。すごいね。僕はいつも通りの相づちを打つ。笑いが起こる楽しい話。筋の通ったキレイな話。愛想の良い笑顔を、僕はうまく作れているだろうか。そんなことばかり考える。それでさ、と切り出してみて、なんでもない、と笑ってごまかす。みんな話したいことを持っている。僕の醜さを見る猶予も無く。
2016/09/12
音も光も少ない夜の薄まった時間は、あまりにも長く感じられる。時計は規則正しく時を刻むのに、時の速度は限りなく遅く、止まっているようにすら思える。虫の声は昔と変わらない。河の流れる静かな音も、弱く瞬く星の光も。今はもう変えようのないことを思い出す。変わったのは、弱いままの僕だけだ。




