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苦痛について

2016/07/04

涙を流す人がいた。液晶の画面の向こう、名も知らぬ町で、彼女は泣いていた。こんな病が、こんな苦しみが。悲しげなBGMに、冷たいテロップ。それを見て涙を流す人々。かわいそうに、と彼らは口を揃えて言う。病に苦しむ彼女に、同じ境遇にある全員のために、美しい涙を流す。そして、いつか忘れる。



2016/07/05

僕らは人々の苦しみを知れる。厄介な病、凄惨な事件、理不尽な災害、あるいはつまらない不注意。あふれる情報が、教えてくれる。心が痛む。涙も流すだろう。電源を切る。もう見えない。もう分からない。結局のところ、何も理解はできないんだ。苦しみに真に共感することなど、きっと、他人の僕らには。



2016/07/16

私のためだという言葉を、私は何度も聞いてきた。その言葉は、私を救うため? それとも、あなたを守るため? 周りの気持ちも考えてみて、という言葉も聞いた。その言葉は、私の気持ちを無視していた。言葉は銃と同じだ。大切なものを守るために放たれた銃弾は、誰かの大切な何かを、必ず壊している。



2016/07/17

個性的な人間になりたかった。他の誰にもない輝きを手にしたかった。誰にもできないことをして、誰も自分の代わりになれないような、そんな人間に。髪やひげを伸ばした。変な服も着た。激しい言葉を使い、他人が目を剥くようなことを言った。そしてできあがった俺は、変人という没個性にまみれていた。



2016/07/19

幸せが、怖かった。これ以上は無いくらいに幸せ、という思いになるのが、怖かった。それは終わりだから。そこはゴールだから。今が不幸なら、いつか幸せになれると思えるから。私は幸せから逃げ続けた。苦しさを糧にしか、私は生きられない。私は不幸だ。私は不幸を抱きしめて、明日も生きていくのだ。



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