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見えるもの、気づくもの

2016/06/09

子供の頃、僕はいろんな道を歩いた。柔らかい土の上、タンポポが並ぶあぜ道、大きな梅の木の下、とても道とは言えない草むら。歩きづらくてたくさん転んだ。服も靴もどろどろに汚した。いま僕はピカピカの服と靴で、硬くて平らな道を歩く。合理的で効率的な世界には、どんな草花も育ってはいなかった。



2016/06/11

あなたはこの星を見ているだろうか。いつのまにか、空には夏の星が瞬いている。この前まで春だったのに。あなたと別れた日と同じ、寒い夜だったのに。あなたの好きな天の川が、空をまっすぐ横切っている。涙やため息、冷たい目。私たちの周りは醜いものであふれているのに、星はなんて綺麗なんだろう。



2016/06/19

いつも、眠るのが怖かった。目を閉じる。風の音、虫の声、すべてがぼやけて意識が細くなる。よく悪夢を見る。大きな体がのしかかる。狼の口が体を喰いつくす。これは夢だろうか。現実だろうか。目が覚めたら生きているだろうか。僕は、狼は、世界は、どうなっている? 朝を迎え、僕はほっと息をつく。



2016/06/20

夜空は黒ではないと君は教えてくれた。満月の日は青いの、と目を細める君の横で、僕は黒にしか見えない空を見上げていた。なぜだろう、あの頃の僕にとっては本当にただの黒だった。世界が色鮮やかに見える君には、一体どれほどの醜い色が見えていたのかな。今なら分かるよ。なんて綺麗な青なんだろう。



2016/06/21

昔から私はどこかズレていた。世間というものから。普通というものから。みんなというものから。人の気持ちを考えなさい、と彼らは私に言う。私の頭を押さえつけながら。みんなと同じになりなさい、と。私のためと称された言葉は、私から多くの輝きを奪った。無理解な善意は、時に何よりも残酷になる。



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