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誰かの世界

2016/01/23

遠くを走る新幹線の光が、ゆっくりと夜の街を通り過ぎるのを見た。私と何の関係もない場所へと向かう、私と何の関係もない人々があの光の中にいるのだと思うと、世界がとても、とてもとても大きく思えて、恐ろしくなった。瞼の裏に微かに残った一筋の線が消えるまで、私はすがるように目を閉じていた。



2016/02/02

まだ本番じゃないぞ、と僕より少し長く生きた人が言った。僕が全力で苦悩する日々は、まだ生温い楽園だった。昔、好きになった女の子に、僕は全力で想いを告げた。全力で苦悩したあの日々は、いま思えば生温かった。だがあの頃の僕は全力で生き、泣いていたんだ。そんなことないですよ、と僕は言った。



2016/02/10

失ったものの数だけ、ロウソクに火をつけた。一緒に育った愛犬、危うい純粋さ、好きだった人。私はたくさんの灯に囲まれて、優しい光と心地よい温かさに包まれた。暗い世界と、冷えきった自分から逃げたかった。落ちた涙がロウソクの火を消した。薄く月明かりが射す部屋で、熱い涙がとめどなく流れた。



2016/02/12

みんな私と同じくらい、あるいはそれ以上に辛いのだから。そんな言葉を繰り返して、涙も喘ぎも全て飲み込んだ。悲しみを独りでも受け流せるように目を背けることだけが妙に上手くなっていった。明るい世界には誰の涙も流れていなかった。だけど何故だろう。そんな世界もどうしようもなく悲しく思える。



2016/02/14

夜の間にしとしとと降り続いた雨は何かを洗い落として、朝の空には頭の奥が痛くなるほどの青が広がっていた。しかし、その青は僕の心の痛みを軽くしてはくれなかった。あの雨が、できれば僕の憂鬱も洗い落としてくれればよかったのに。そう思いつつ、この青い空を見た誰かの心が救われることを祈った。



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