過ぎたもののこと
2015/12/10
世界が終わるんじゃないかってあのとき思ったほどの痛みも、気付けばどこかの風にさらわれていた。だからこの痛みも、いつか私の気付かないうちに、どこかに消えていく。あたたかさも一緒に、塵になって。私はさっきまであの人の声でしゃべっていた携帯電話をしまった。冷たい風からは雪の気配がした。
2015/12/14
この一年ほどの間、僕が言葉に乗せて必死に届けようとした幾万もの温もりは、数百キロを旅する間にすっかり失われてしまっていたらしい。季節も、生きる場所も、人の心も、ずっと変わらないものなんて何ひとつ無いんだと、手遅れになってようやく気付いた。カレンダーだけが、去年の師走のままだった。
2015/12/21
冬は寒いね、と笑ったから、玄関を出る度に君を思い出す。オリオン座が見えるよ、と笑ったから、星空を見上げる度に君を思い出す。コーヒーは苦手、と笑ったから、それを飲む度に君を思い出す。心の中に生き続けるってこういうことなのかな、なんて考えながら、今日も冬の星空の下でコーヒーを飲んだ。
2016/01/07
あの夜すべてが嫌になって身を投げたけど、一生消えない傷を服の下に残して命拾いし、白い息を吐きながら今日も帰り道を歩く。なぜ生きるのか、というあの頃何度も浮かんだ問に納得のいく答はまだ出せていない。でも、街路樹の電飾がきれいだとか駅前のラーメンがうまいとか、そんなものじゃないかな。
2016/01/15
私の想いは2秒で、6秒の沈黙があって、彼の返事は1秒で終わった。10秒にも満たないやりとりが、私をその何百万倍もの時間苦しめている。物語のあとには、それよりはるかに長く苦しい時間が横たわる。それでも私は、いつかまた2秒かけて想いを伝えるのだろう。物語こそが人の生きた証なのだから。




