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出会い2

第0話 出会い2


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 スタスタと出入り口と見られるドアの方に歩いていこうとするサリエルを呼び止める。

「何じゃ?時間が無いのじゃぞ」

「いきなり法廷に連れて行くって……そこでどうするつもりだよ」

 「法廷といえばすることはひとつじゃろ?お主の世界にはないのか?」

「いやある、あるぞ。裁判をするところだよな?違うか?」

「知っているではないか。なら良いな行くぞ」

「だから待てって!まだ話は終わってない。こっちはいきなりオブギョウさまとか言われても訳がわからないんだ。説明してくれよ」

 なんせ俺はこの世界に来たばっかりだ。説明も無しに法廷に連れて行かれても困る。しかもこいつ裁判するつもり見たいだし。

 ……まさか、こいつら俺を訴える気なのか?!


「サリエル様まだ少しは時間があります。それに私達中浜殿に一方的に尋ねただけでまだ自己紹介もしておりません」

「うむ、そうじゃったの……」

 少女はしぶしぶとこっちの方に戻ってきた。

 そしてふんぞり返ってこう言ったのだ。

「紹介が遅れたの。わらわの名はサリエル。大賢者にしてこの国の裁判官である。」

「私はテルサと申します。サリエル様の秘書をしております」

 長身の女性も続けて自己紹介をする。


「裁判官とその秘書……?」

 それで法廷なのか。

「サリエル様はこの国の裁判所で裁判官を務めておられるのです。」

「こんなちびっ子が?」

「ちびっ子じゃと……?」

 血管の切れるような音がした。


「お主ちびっ子と言ったの。わらわは今年15じゃ! それにこの国の裁判官には年齢制限なぞないわ!」

「そ、そうなのか……すまん」

 15歳だったのか。とてもそうは見えん。だがそれでも若すぎる気がする。裁判官とか結構歳いってるイメージだし。

 でも冷静に考えて見ればこの世界と元の世界とじゃ年齢の数え方も違うかもしれない。

 じゃあもこの見た目でもっと歳上なのか?


「サリエル様はこの国の大学を史上最年少で卒業しておられます。そして、卒業後すぐに裁判官に任命されたのです。それはこの国の歴史でも異例であり、神童と国外にも名が轟いております。」

「天才少女ってやつなんだな。」

じゃあやっぱり若いのか。なんとなくホッとした。


「それで裁判官様が俺を法廷に連れて行ってどうする気だ?俺を訴える気じゃないんだろな?」

「そんなことはせん!」

「……そっか」

 ほっとひと安心する。

「そもそも訴えるのは裁判官の役目ではないわ!」

 それもそうだな。それは元の世界でも同じか。


「じゃあ何なんだよ」

「率直に言うとお主の知恵を借りたい。」

「知恵?」

「もうすぐ開廷なのじゃが今回の裁判はちと厄介での。名判事と呼ばれるわらわでも手を焼きそうなのじゃ。

そこで知の精霊オニキスを呼び出してその知恵を借りようとしたのじゃ」

「そこで失敗してあなたを呼び出してしまったのです」

そういう事情だったのか。


「そこで替わりに伝説のサクラの痣を持つお主の出番なのじゃ」

「サクラの痣ってのは俺の首筋についてるやつか」

 俺は痣があるであろうあたりを擦る。

「そうじゃそれは伝説に残る名判事オブギョウさまと全く同じもの。そいつを見てわらわは確信した。お主はオブギョウさまと関り合いがあるとな」

「いや、知らないしそんな人」

 会ったことも聞いたこともないなそんな人。

そもそも俺は別の世界の人間だし。

「まぁそれはじゃの。オブギョウさまというのはこの世界の伝承に残る伝説の判事のことじゃ」

「伝説の判事?」

「ありとあらゆる物事の真偽を判別し裁いたとされており、どんな難題も解決したという。その裁きの記録は書物として残り我ら裁判官のバイブルとなっておるのじゃ」

 そんな偉大な人と俺は勝手に関連付けられていたのか。

 その割にはかなり雑な扱い受けているような気がするんだが。

 だけど、期待されても困るな。


「それで知恵を借りるっていうのはどういう事だ?すまないけど俺はその人みたいな知恵はないと思うぞ。学校の試験だって真ん中くらいだったしな。」

「お主の世界のことは知らぬが。試験なんてものは暗記でなんとかなってしまうわい。」

「だとしてもなあ~」

 そもそも俺は現実世界で裁判官でも弁護士でもない単なるニートだった。法律の知識なんてないし、ましてやここは異世界だ。この世界の司法がどうなってるかなんて全く分からない。

 そんな俺に知恵を期待されても失望されて結局送り返されるのがオチだろう。


「サリエル様、残念ですが来たばかりナカハマ様に頼るのは無茶だったのかと……」

「うーむ。そうじゃの……仕方ない!わらわ一人で挑むか」

「大丈夫なのか……?」

「安心せい!召喚に失敗した時のために秘策は考えておったのじゃ。もしかしたらあっさり解決してしまうかもしれんわい。その時はもうお主の出番は無いわ!」

「なんだよそれ」

 サリエルはわざとらしい高笑いをしている。

 まぁ解決するならそれでもいいか。


「折角ですからサリエル様の裁判を見て行きませんか?」

「ああいいですね」

 どうせ送り返されるならそれを見てからでも良いか。

「そうじゃ、お主は傍聴席に座っておれば良い。わらわの名裁きとくと見よ」


自身があるのか無いのかさっぱり分からんな、こいつの言動は。

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