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出会い1

「やったぞ成功じゃ!」

 聞き慣れない声が聞こえた。さっき夢で合った女神の声ではない。

 いや、あれは夢ではないのか……

 パッと目を開き起き上がる。周囲は煙のような白いモヤに包まれていた。


 目の前には2つの人影のようなものがうっすら見える。次第にそれははっきりとしていった。

 そこには背が低く幼い顔つきの小学校高学年くらいの年齢だと思われる少女と年齢的には20代前半くらいであろう若い長身の女性が立っていた。

 どちらも肌の色は白く顔の造りから言って日本人でないことは間違いないだろう。

 少女は目をキラキラさせて期待に満ちた表情をしている。

 たが、俺と目が会うなり目を大きく見開いてぽかんと口を開けたのだ。

 長身の女性は表情は変わらず、すました顔でこちらを見つめたままである。


「こ、これが知の精霊なのか……?」

 少女は目を見開いたまま言葉を漏らす。

「言い伝えに聞いている姿とは違うようですね」

 長身の女性は冷静に答える。


 モヤも薄れ周囲もはっきりと見えてきた。薄暗い空間を蝋燭の火だけが明るくしている。

 周囲は石壁に囲まれており、自分の真下の床には魔法陣のようなものが描かれていた。

 ここが俺の部屋でないことは明らかだ。

女神が言っていた通り異世界に召喚されたというのは間違いないだろう。

 そして反応を見る限りこの二人のどちらか……

 もしくは両方が俺を召喚した主だろう。


「と、とりあえず確認してみんと分からんの」

「そうですね」

 彼女たちが話している言葉は理解できる。女神から貰った言語スキルのおかげだろうか。

「聞こう!そなたは知の精霊オニキスか?」

 俺はその問いかけに正直に答えるしかなかった。

「違うけど」

「やっぱりかああああー!!」

 少女は大声を上げて落胆する。


 うむ、言葉は通じた。言語スキルは正常に機能しているようだ。

「で、ではそなたは何者じゃ」

「俺の 名前は中浜光次郎。 普通の人間だよ。多分こっちの世界とは違う世界のな」

「つ、つまり異世界人と言う訳じゃな・・・?」

「そういう事になるかな」

「な、なんという事じゃあ。異世界人を呼び出してしまうとは……なぜこんな事に」

「サリエル様見てくださいここの文字が違っています。」

 長身の女性は魔法陣に描かれた文字を指差した。

「ほんとじゃ!わらわとした事がぁ~」

 サリエルと呼ばれた少女は頭を抱えて悔しがっていた。

 どうやらこの少女が俺を呼び出した張本人らしい。

  女神に言われた通り俺の召喚は彼女たちにとって想定外のようだ 。


「とりあえず俺はどうしたらいいんだ?」

「ああ、お主はもう帰っていいぞ」

 ここで想定外の返答。

「いや帰れって言われても自分じゃ帰れないんだけど!」

「めいどいのお……テルサよ、こやつを送還魔法で元の世界に送り返してやってくれ」

「承知しました」

 この女性はテルサと言う名前なのだろうか。

 俺の方にスタスタと歩いてくる。

「申し訳ございません。いきなりこの世界に召喚してしまって」

 そう言ってぺこりと丁寧にお辞儀をした。

無表情であったが声の調子から申し訳なさそうな感じが読み取れた。


 しかし、こうやって前に立たれるとやはり大きいなあ。

俺も背が高い方ではないが日本の成人男性の平均身長よりは高い。

 しかも彼女は出るとこ出てるしモデル並みのスタイルがある。

「いやいいっすよ。その変わり送還魔法は確実に成功させてくださいね」

 美人に謝られたら怒る気にはなれない。

 だがしかし、いきなり返されることになるとは思いもしなかった。

 折角女神さまからスキルまで頂いたのに。

 ……言語スキルだけだけど。

 でもこれから異世界でのチート無双が始まるかもと若干期待していたので少し寂しい気持ちになった。

「では送還の魔法陣を描くので少々お待ちを・・・ん?」

 何かに気づいたような顔をしたと思ったらいきなり俺の首筋に顔を大きく近づけてきた。


「これは……?!」

 彼女の目は俺の首筋に釘付けである。

 無表情は崩れない、だが何かに驚いているのが分かる。

 まさかさっきの女神の口づけの痕でも残っていたのか?だとしたら恥ずかしいのであんまり見ないでくれ。


「サリエル様これを見て下さい」

「なんじゃ? わらわは今大急ぎで魔法陣を描き直しておるから忙しいのじゃぞ」

「すいません少ししゃがんでくれませんか?」

「ああ、分かった」

 俺はは言われたとおりしゃがんだ。

 不機嫌な面持ちのサリエルが近寄ってきて俺の首筋を見つめる。

 その瞬間その顔は驚きの表情へと変わった。

「これは伝説の痣ではないか?!」

 伝説の痣? 一体何の事だ?

 テルサに手鏡を手渡され、それで首筋の辺りを写してみる。

「な、何だこれ?!」

 そこには桜の花びらのような痣が3つついていた。

 こんな痣、元の世界ではついていなかったぞ。

 一体いつの間に……


「これは間違いなく伝説の判事オブギョウさまと同じものじゃ……なぜこやつに……」

 オブギョウさま……?

 なんだそれ、江戸時代の町奉行と関係あるのか?


「サリエル様も、しかしたら……」

「うむ、こやつならこの難題を解決できるやもしれん」

 さっきから彼女たちが何を言っているのかさっぱり分からない。

「送還は中止じゃ! お主付いて参れ!」

「着いて来いって何処にだよ?」


「法廷じゃ!!」

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