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国王の城は俺が召喚された裁判所のある街の中心にあった。

昨日馬車で帰る途中から立派にそびえ立つ姿が見えていたのであれがこの国の王様がいる城であることは薄々勘付いてはいたけれど。

俺とサリエルが馬車で門の前に到着すると見覚えのある長身の女性が立っているのが見えた。

テルサである。

「お主も呼ばれたのか」

「はい」

彼女はあっさりと答える。

国王に呼び出されるという大事であっても昨日と同じ感情の読めない表情だ。

門番の兵士に国王からの呼び出しの書状を見せると暫く待たされた後、門の中に通された。

そして俺達は兵士に連れられて謁見の間に案内されたのだ。

王冠を被り口髭を蓄えた初老の男性が玉座と思われる場所に座っている。

恐らくあれが王様だろう。

そしてその隣には白いドレスのような服を着た女性が立っている。

長く伸びた金色の髪にシミ一つない白い素肌。

それから最も特徴的なのが左右に伸びた長い耳だ。

あれはお伽話でよく見る種族に当てはめるなら……

「何をそんなに見とれているのじゃ。エルフがそんなに珍しいか?」

サリエルが不機嫌そうな顔で言う。

やっぱりエルフか、まあファンタジー風の世界なら当然いるよなあ。

「あの方はリプリア様、この国の司法機関全ての長である大法官にして国王様に次ぐ実質的なNo.2です。」

テルサが説明してくれた。

「人間の国なんだろここ?他種族がこんな重要な役職についても大丈夫なんだ」

俺はヒソヒソ声でサリエルに喋りかける。

「国王は優秀な者であれば種族、性別、年齢を問わないのじゃ」

「なるほどねーでも流石にこんなちびっ子に裁判官やらせるのは問わなすぎだろ」

「ちびっことは何じゃ!この」

サリエルが俺を大声で怒鳴りつけ杖でポカポカと叩き出した。

「悪かった、だからやめろって」

「クスクス……仲が宜しいのですね」

俺たちのやりとりを見たリプリアが笑いだした。

「ほら、お前が大声出すから」

「お主が失礼なことを言うからじゃろーが!」

「コホン、そろそろ本題に入って良いかの」

国王が咳払いをした。

「良いぞ」

サリエルがとても一国の王に対する返事としては不適切な偉そうな感じで応える。

「ここに呼ばれた理由、聡明なそなたなら分かっておるよな」

「コジロウに裁判を任せたのが気に食わんのじゃろ?」

「その男の名はコジロウと言うのか」

「光次郎です」

俺はすかさず訂正する。

「まあ良い、本当のことを言うとワシはそこのコジロウと言う者に裁判を任せたことそれほど大事にしたいとは思っておらん。じゃがの……」

国王はチラリとリプリアの方を見る。

「国王様、ここからは私が…」

国王と目が合ったリプリアはすっと前に出て俺たちの方へツカツカと歩いてきた。

そして俺たちの手間でピタッと止まった。

「サリエル、神聖なる裁判を裁判官でも何でもないこのコジロウと言う方に行わせたというのは本当ですか?」

「素人ではない!こやつは伝説の判事オブギョウ様の生まれ変わりじゃ」

「オブギョウさま……?」

「ハッハッハ面白いことを言うのサリエルも」

国王は笑いだした。

「冗談ではないぞ。ほれ、コジロウ見せてやれ」

俺は首筋にある痣を見せる。

「確かに言い伝えにある痣とそっくりですね」

「そっくりではなくこれは紛れもなく本物じゃよ」

「しかしそれだけで彼がオブギョウ様の生まれ変わりと判断はできません」

「リプリアよ、サリエルが魔相術が使えるのは知っておろう。この男がただの人ではないと見ぬいたのかも知れんぞ」

「それはそうですが……」

リプリアは困った顔をしている。

「では仮にこの殿方がオブギョウ様の生まれ変わりとしましょう。ですが、何故変わりに行わせたのですか?」

「こやつの力を見るためじゃ」

「ここに書記官より提出された裁判の記録があります。そこには被告人と原告に力比べをさせて収拾がつかなくなり一度裁判を休廷したとありますね」

「そ、それはだの……」

さっきまで強気だったサリエルがたじろぐ。

「自分の手に負えなくなったからこの方に丸投げしたと言うわけですね」

「最初から丸投げするつもりは無かったのじゃ!ちょっと知恵を借りようとしてだの……」

「はあ、情けない。私はあなたにかなり期待をしていたのですが」

「まあまあサリエルはまだ裁判官となって日が浅い。こんな事もあろうて」

「こんな事は前代未聞なんですが」

「まあ分かっとる。サリエル二度とこんな事はするでないぞ」

国王は優しい口調でサリエルを諭す。

「じゃがこやつはわらわが召喚した者じゃ。いわばわらわの召喚獣みたいなものじゃし知恵を借りる位は許してくれんか?」

「そうよのう……まあ知恵を借りるくらいなら大目に見よう」

「おお、流石国王!話しがわかるの」

「国王様、お言葉ですがサリエルに甘すぎるのでは?いくらご友人の忘れ形見とは言え」

忘れ形見?

「まあまあ良いではないか。ところでそなたよ、コジロウと言ったか」

「光次郎ですが」

「サリエルは人を見る目だけは確かじゃ。悪い者では無いのであろうと信じておる。くれぐれもよろしく頼むぞ」

「ええ……はい」

「では許可も貰ったし帰るぞコジロウ」

サリエルは踵を返し出口に向かってスタスタと歩いていく。

「コジロウ様」

俺もサリエルを追って歩き出そうとするといきなりリプリアに呼び止められた。

「あの光次郎なんだけど……」

「サリエルの事頼みましたよ」

そう言って彼女はにっこりと微笑んだのであった。


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