離れ離れ
短編
「僕は、人を殺した。」
「右手で殺した。」
僕の右手は怒りの右手。
かっとなって殺してしまった。
「左足が震えている。」
僕の左足は恐怖の左足。
殺す前も、その時も、その後も、全くもって動かない。
「左手が目を覆う。」
僕の左手は哀しみの左手。
僕の殺人を認識したくない。
「右足が子供の様に跳び跳ねている。」
僕の右足は喜びの右足。
殺人行為は初めてだ!
「心臓の鼓動はとても速い。」
僕の心臓は興奮の心臓。
鼓動が速いのはいつものことだ。
「僕が殺したのは、僕の友人。凶器は包丁、場所は僕の部屋だ。」
僕の口は、僕に現実を叩きつける。
僕の頭に、人格に、精神に叩きつける。
意味はないのに。
無駄なのに。
僕の頭は、俯瞰症。