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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

黒歴史クロニクル

作者: 七瀬ネオ
掲載日:2014/03/07


あぁ、えっと……初めまして。

小説を書き始めて祝6年目、七瀬ネオと申します。

もう6年、なのに長編ものが書けない…!

その結果、こんな短い文章が出来上がったので載せてみようかな、ということで。


 __僕は弱虫だった。


 僕の世界には“断る”という動作が無かった。“嫌”だとか“止めてくれ”なんて言葉も無かった。

 僕の世界は常に誰かに“支配”されていた。


「__.....今、何て?」

「あぁ?てめぇの耳はどんだけ悪くなったんだよ」

「飯買って来いっつったんだよ、この間抜け野郎が」


 僕は弱虫だった。僕は、間抜け野郎だった。たまに僕は死にたがった。


「勿論、てめぇの金でな」


 この世界は僕だけの地獄だった。




 僕の頚動脈は人一倍生々しく脈打っている。僕の前髪は人一倍早く伸びる。僕の友達は人一倍少ない。僕の家族は人一倍僕を嫌う。

 僕の人生は人一倍面白くない。


 昔からそうだ。いつからか、僕の世界から色が消えた。白と黒だけで風景が構成、成立した世界は楽しくない。

 見えているはずの色彩は、みんないつしか白と黒に変わる


「......楽しそうだね」


 誰かが綴ったように、僕の人生は幸福だけを避けて進んでいる。幸せ、なんて感じたことは生まれた瞬間くらいだけだった気がする。


「あぁ、楽しいぜ?その顔が歪んでいくのがよく見えてさ」


 目に掛かる鬱陶しい前髪をぐいっと掴まれ、青い痣の出来た頬に緩い拳がぶち当たる。痛い。


「......ねぇ、楽しい.......?」


 僕の世界を支配する者に快感を与えること、支配者を楽しませることこそが僕の生きる理由らしい。

 墨は僕の辞書に新しい文字を刻むことにした。



 __もう、嫌だ。





 そんな過去を経験していた僕にそれからの数年、これと言って変わったことはなかった。

 何処に居ても弱虫のまま、弱虫らしい数年を流れるように過ごした。


 この世界には人間不信という言葉があるらしい。また新たな言葉が辞書に刻まれる。

 現実逃避、人間不信、対人恐怖、弱虫。


 __僕は弱虫だ。

 自分も自分以外の人間も信じない。

 引きこもること、逃げること、隠れること、避けることを何よりも最優先する日々に溶け込む人生。

 出来れば布団から出たくない。日を浴びるのも嫌だ。


「......死んじまえ」


 サ行、画数六画、動詞。

 世間から避けるように退けられる負の動詞。

 僕にはそれが似合うらしい。

 人と会うことも外に出ることすらを拒む。

先程の言葉は訂正しよう。これと言って変わったことはなかった、なんて嘘だ。

僕の生活はまた違った意味で一変した。


 布団を深く被り、手だけを出してパソコンを操作し続ける。目だけを向けて青っぽく明るさをもたらす画面を見通す。


「......私は、クラスで虐められています。避けられたり陰口を......」


 被害妄想、思い上がり、ただそれだけのこと。

 この世界が平和じゃないから。


「平和って何だよ......、肩書きか、建前か」


 平和なんて言葉はこの世界には無いも同然だと思う。

 悲報ニュース、睨み合い、実験、紛争冷戦土地争い。

強盗殺人誘拐事件、体罰虐待虐め問題。

解決済みなんて言葉だって無いも同然。


「......くだらん」


 僕はもう何もかもを自覚している。

 自分の存在価値も必要性もみんな手に取るように見透かせる。みんな分かっている。

 要らない。いっそ死ねばいいと思う。死んでいいと思う。


 ただ、僕には死ぬ勇気が無い。


 毒薬を飲めることも無い。あの生々しく脈打つ頚動脈を断ち切ることも無理、首を括ることも飛び降りることも何もかも。

 僕には勇気が無い。

勇者が剣も盾も持っていないように、魔法使いが杖を持っていないように、仙人が龍も操れないように。

 冒頭で僕は言っただろう。僕は弱虫だ。


 自分に都合の悪い世界だから嫌いになる。自分に優しくない世界だから全力で嫌う。自分を嫌う世界だから、勇気が無いのに死にたくなる。

 死に損ない、嫌なんて言葉も断り文句も使えない。自分の世界すら自分で支配出来ない。


 自分の世界は、滅亡を目前にしていた。

 最初、世界は色鮮やかで平和だったと思う。広い大地に緑がいっぱいあった。それから、世界の真ん中に大きなお城が建っていて、絢爛豪華な飾りが眩しかった。

お城の大広間には黄金の王座が置かれていた気がする。そこには生まれたばかりの僕が座っていた。


「__......はぁ」


 パソコンを閉じ、枕に顔を埋めて色のあった時代を思い出す。

 __あぁ、いつから世界から色が消えたんだったか。



 小学三年の夏、冷たい水にはしゃぐクラスメイト達の姿を日陰に座って眺めていた。

少食故に平均より細い身体。体力が無く走っては貧血を起こす弱々しい身体を、こうして持て余していた。

 多分、その頃の秋の始めだった気がする。


「お前、声も身体も小さくて気持ち悪いよ」


 その言葉と共に、何かが切れる音がした。


「給食残してばっかだし、弱々しくて嫌な奴だな」


 クラスで一番足の速い男の子がそう言ってきた。僕よりも背丈が二十センチも高くて、力強くてかっこいい男の子だ。


「......ごめんね、あの、僕頑張るから......」

「謝れって言ってんじゃねーよ、バーカ」


 彼はそう怒鳴って僕に丸めた雑巾を投げ付けて帰ってしまった。その日、彼は掃除当番だった。


 薄汚れた雑巾で泣きながら床を磨く。磨いても磨いても綺麗にならない。

ぽたぽたと、折角磨いた床に落ちてくる汚い液体は何だ。


「......あ」


 先程から僕はずっと泣いていたじゃないか。

馬鹿だな、僕は。

周りから浮いて友達が居ないこと、みんなと同じように走り回れないこと、気持ち悪いなんて言われたこと、全部真に受けてしまった。


「......僕が弱いのがいけないんだ......」



 あの時、微かに世界は霞んで見えた。きっとあの時からだ。

 クラスで一番足の速い男の子に、クラスで一番頭の良い女の子に、昆虫好きの男の子に、ピアノが得意な女の子に、みんなに嫌われていた。

 席替えの度に隣の席争奪戦が繰り広げられる可愛いあの子も、やんちゃでいつも先生に叱られているあいつも、というかそもそも先生も、みんな僕を嫌っていたんだ。



 ある日、お城に足の速い大臣がやってきて王座に座る僕にこう言った。


「お前、声も身体も小さくて気持ち悪いよ」


 その一言にお城は怯えるように揺れた。幾つかの飾りが落ちて割れ、壁にもひび割れが沢山できた。

 次の日、頭の良いお姫様がお城にやってきて、怯える僕にこう言った。


「あなた、いつもウジウジしてて見ていて不愉快なの」


 僕の頭から冠が落ちた。ビクビクと王座の後ろに隠れた僕に溜息を一度だけ吐き、お姫様は帰っていった。


「あの時からか......」


 寝返りを打ち、目の前に天井を見出す。ああしてクラス全員から悪意有る言葉をぶつけられているうちに、世界から色が消えたんだ。


 中学一年の春が終わり、もう桜の木が緑に染まっていただろうに時期に、世界は再び変容の時を迎えた。

 既にお城は半壊していて、痛いくらいに青々しく生い茂っていた緑の殆どが枯れ、自分の世界にも居場所を無くしかけていた。


「よぉ、ヘタレ」


 似合わない制服をありとあらゆるアイテムで克服する生徒に、僕はどうやら紛れ込めなかったようだ。

 何もかも自分が悪い。


「......俺たちが何を言いたいか分かるか?」


 嫌でも分かってしまう。それくらい慣れきったことだ。

 目の前に立ちはだかる彼等が手に持つノート、それを見るだけで嫌な予感しかしない。


「分かんだろ、ヘタレ」

「放課後までにやっとけよ」


 新緑深まるとある週の木曜日昼休み、乱暴に投げつけられたノートには提出期限金曜朝、と書かれた付箋が貼られている。冷や汗しかかけない。

 足の速い、陸上部期待の新星な彼とサッカー部新入部員、入部早々レギュラー入りの彼。二人と同じクラスになってしまったことを恨む。


 あの時、僕を嫌な奴だと言った彼等だ。



 嫌で嫌で仕方なかった。それでも逃げなかったのは、抵抗する術を持っていなかったから。

 その結果がこれ、引きこもって閉じこもって出られない。

 __実に笑えそうもない下らない話だ。


 今、こうして引きこもることで逃げている。辛い現実から、逃れようが無かった恐怖から逃げている。

最初から逃げていたら、辛いことも無かっただろう。最初から嫌だと言っていたら。


「先生にチクったらぶっ飛ばすからな」


 不意に脳内に過ぎった誰かの声に肩が揺れる。そう、逃げようとしたらぶっ飛ばされる。

ぶっ飛ばすなんて物理的に無理だとは分かっていたのだろうが、自分は逃げられなかった。

 今も昔も、教師をはじめとする大人達に己の悪行を知らされない為なら若者は何だって言う。どんな手も使える限り使う。

 例えば、チクったらてめぇの画像をネットに公開する、だとか。


 あの時、それは肖像権の侵害だと訴えることが出来ていたら、あの時学校で辛い思いをしていると両親に相談出来ていたら、嫌だと叫び助けを懇願に今という未来は少しでも変わっていただろうか?


 自らを助けられなかったおかげで失った色鮮やかな世界はもう返って来ない。

ならせめて、最期に一色でもいいから色を体感したい。例えば、赤を。

 何度も躊躇った。せいぜい瘡蓋ができる程度の浅い傷を重ね、重ね、それでも怖かった。

幾重にも連なった手首の傷が治る度に死にたくなった。躊躇いの傷が消えるのが辛かった。

 自分の中の世界が酷く荒れ、凄まじい音を立てて崩れていくのが怖かった。


 僕の人生は黒、黒い歴史の塊だ。

 死ぬ勇気も持てなかった色の無い世界の王座に踞る弱虫の黒い人生。

 せめて最期は赤に染めよう。


 死にたがっても死ぬ覚悟が無かった幼い僕はもう居ない。躊躇いの血で錆びたカッターナイフを、肌が破れるギリギリの、強さで突き立てる。

 __足りない。もっと、未練無く赤い道を創らないと。


「......僕、は......弱虫だ。嫌なんて言葉も、止めてくれ、なんてことも言えなかった......。なんで今まで死ななかったか不思議なくらい、に......」


 今、耳元に響くのはシャワーの音、あとは幼い自分の小さな泣き声。冷たい水に少し震えてから狂ったように笑う自分の憎たらしい声。


「っ......はははっ、逃げるぞ......僕は逃げてやる!逃げて__てめぇ等が地獄に堕ちるまで呪ってやる!あははははっ......」


 最期に聞いた音は身体が倒れる音。最期に見えたのは、手首から続く赤い死の道のみ。



 __The end.


……あぁ、何も言えない。

読み返してみるとやっぱりまだまだだなって感じが。

そもそもこれ、すごく気分が沈んでる時に書いたんでね…(; ・`д・´)

話はどうとして、ネット上に自分の文章を載せるのは半年ぶりです緊張してます。

どうか描写について意見やアドバイス、物語の感想等、くれたら…嬉しいなぁ…って思います(〃´・ω・`)ゞえへへ…

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