【番外編2】 二人のラブラブデート編
デートメーカー(http://usokomaker.com/date/?a=Maker&oo=%BF%CE%C2%BC&oo2=%C8%D3%C4%CD)
で出てきた結果に沿って書いてます。
●11:00景色のきれいな場所で待ち合わせ
今日は仁村の『取材』と恰好つけた外出である。
あんまり仁村が家にこもりがちなものだから、少しは日の光でも浴びて多少なりと紫外線を浴びろと、言ったら
『一人じゃつまんないから飯塚も一緒にどう?』
と誘われてしまったのである。特に断る理由も、予定もなかったのでそのまま約束を取り付けてしまっていた。
しかし当の仁村は今ここにいなかった。現在絶賛遅刻中である。
編集部に直接出さなければいけない原稿か何かがあったらしく、待ち合わせ場所を巨大コンテナの積み下ろしや港に停留している帆船などが
間近で見える海浜公園に設定したのだが、未だ来ない。
「あいつ・・・携帯持ってないから電話のしようもないし・・・」
仁村は未だ携帯電話を持っていない。本人の弁曰く、原稿の催促は家の電話一本で十分だ、らしい。
しかし、こういうときに不便だ。相手と連絡がつかないと、今もしかしたら仁村のことだからのっぴきならない事態に
陥ってるかもしれないと、嫌な想像が駆け巡る。
出版社に直接電話をしようか、と携帯のインターネット機能を立ち上げようとした時。
「ごめんごめん、飯塚、遅くなっちゃった。販促用のサイン頼まれて書いてたんだ。」
大きく手を振りながら仁村が息を切らしてやってきた。送れといて満面の笑みを浮かべている。
遅れておいて何様だ、と思いつつも、それ以上に無事だとわかった安堵感のほうが勝った。
「仁村・・・遅れるなら電話一本ぐらい入れておいてくれたっていいだろ?携帯の電話番号、教えたんだから。」
「ごめん。電話って苦手で・・・」
「・・・はぁ。」
苦手=編集者からの催促によるもの、だろう。
確かに、締め切りに近付くにつれへばりついてくる編集者の執念は筆舌しがたいものがある。
だからといって、親しい間柄の人間との電話すらも苦手になってもらっては困るのだが。
「わかった。・・・でも、これからは気をつけてくれよ、な?」
「ん、わかった。」
今日はやけに素直だ。
※飯塚、仁村とデートをするの巻。意外にも仁村から誘ってます。
●13:00カレーショップで食事
海浜公園近くの、船舶博物館を見て回った後『おなか減ったおなか減ったー!』と欲望に忠実な仁村の要望で
近くにあった有名カレーショップで昼食をとることにした。
入口近くに自動券売機でチケットを買って、それを店員に渡すと商品が出てくる、という寸法である。
「仁村、どれにする?」
「う~~~~ん・・・」
券売機の前で仁村はぐるぐる悩み始めた。仁村は、ファミレスとかに行くときもそうだが、見せられたメニューで延々と悩むタイプだ。
通常時で選択に迫られた時は特に悩まないらしいが、外食のような出てくる前何かわからない、という恐怖を味わう選択は
なかなか難しいらしい。
しかし、あんまり悩まれても後ろがつかえ始めている。早くしないと、そのうちどなられそうだ。
「仁村、あんまり悩むんだったら、俺と同じのにしろ。」
「えー!?」
「えー!?じゃない。」
そういって硬貨を入れて発券させる。仁村は渋々カツカレー中辛並盛の券を受け取った。
「・・・むぅ。衣がべちゃべちゃする。飯塚のばーか。」
「子どもっぽいこと言うな。さっさと食べる。」
「・・・中辛だけど異常に辛い。飯塚のあーほ。」
「んじゃ自分でさっさと他のを選べばよかったんだ。」
「・・・飯塚の作ったカレーのほうがよっぽど美味いんだよ、ぼーけ。」
「・・・・・・」
これは、褒められてるのか、貶されているのか。わからない。
とりあえず、何か返して墓穴を掘りたくなかったので、無言で貫き通した。
そのあいだ、心底不機嫌そうな顔で仁村はカレーを食べていたがやがて完食して両手を合わせて、聞こえるか聞こえないかの声で
「ごちそうさまでした。」
と言った。あれだけ文句を言ったのに、そこだけはきちんとしていた。
※どうやら仁村は舌が肥えている模様。私のように肥えすぎて甘味が苦手になっちゃダメだよ!(ぇ
●17:00モノマネ合戦で盛り上がる
「えーっと、次は・・・ジュリィ!」
「はい、やんや、やんや。」
手拍子代わりにタンバリンを鳴らす。相当、かったるいなーという顔をしてやっているつもりだったのだが、仁村はそれでも機嫌よく
「せめて~~~~すこしは~~~♪」
と沢田研二を唄っている。確か、ジュリィ全盛期はお互い生まれていなかったはずだ。なぜ、ジュリィ。
――なぜ仁村の沢田研二を聞く羽目になっているかと言うと、カレーを食べた後、ぶらぶら近隣の商店街を歩いてから何故か
『飯塚と一度カラオケに行きたい!』
と言い出したので傍にあったカラオケ店に入ったのだ。
しかし、なぜ、男二人でカラオケ。傍目から見たら、相当親密な関係だと思われているはずだ。
とはいっても、今日は仁村に付き合うと決めたのだから、男二人でカラオケは変だと理由にして断るのもおかしい。
それに、実際カラオケ店にいるからと言って苦痛を感じているわけではない。
けれども。
「ほーら、飯塚もなんか唄ってよ!飯塚のお母さんの十八番の都はるみ唄ってよ!」
「あのなあ・・・」
なぜかさっきから仁村はモノマネを強要してくる。それも、都はるみだとか、北島三郎だとか、かなり難しい曲選で。
「無理だ。仁村が一人で歌ってればいいんだよ。俺は音痴なんだから、ただの騒音だ。」
「・・・うぅっ・・・」
「に、仁村・・・?」
突然仁村が泣き始めた。カラオケBOX内に鳴き声が響く。片手に持っているマイクがonになっているからだ。
慌てて仁村の傍に寄って、手で握りしめているマイクをoffにした。
「に、仁村なんで泣くんだ?泣くこたないだろ・・・?」
「ど、どうして、い、飯塚は、俺の言うこと、聞いてくれないの・・・?」
「・・・仁村の要求がことごとくハイレベルすぎるからだよ・・・」
「で、でも・・・飯塚ならこれくらいのことできるでしょ・・・?」
「サブちゃんはともかく都はるみは・・・って、そもそもカラオケ自体苦手なんだよ。」
「でも、今日はせっかく、飯塚と二人きりだから、楽しいこといっぱいしたかったのに・・・!!」
そういって仁村は本格的に泣きじゃくりはじめた。ぽろぽろとまなじりから滴が零れ落ちている。
今日は少しきついことを言いすぎたかもしれないと反省して、仁村の方を抱いた。
「・・・わかった。仁村が今日あと言うことは、ちゃんと聞くよ。」
「ほんとう・・・?」
「ああ、ほんとうだ。」
「じゃあ・・・」
※なんかよくわからない展開に。まあ仁村はそういうキャラだからな、で許して下さい。(ぇ
●22:00仁村が財布の中身を気にし始める
それからカラオケ店を出て、仁村が
『取材するから付き合って』
とのことで、オタクショップが軒を連ねる界隈になぜかやってくることになった。
仁村は最近のB級スプラッタものでもこんなのねーよ、というぐらいただひたすらグロテスクとバイオレンスに徹した小説を書く。
たいがい、小説はやまがあってオチがあるが、仁村の場合はそれがない。本当に、ひたすらに、グロいのだ。
たまに、大手誌からお呼びがかかってまともな小説を書くこともあり、そのときはちゃんとやまがあってオチのあるものにしているので
決して話の組み立て方が苦手だったりするわけではない。むしろ仁村のまとも小説はグロを忌避する若い女性にも人気があるらしい。
ただ、グロを書くときは、ただグロにだけひた走ってしまう。それだけのようだ。
あんまりにも作品の傾向が違い過ぎるので、編集者から
『仁村さん・・・作品によって、ペンネーム替えましょうか?』
と提案してくれたことがあるらしいが、
『大丈夫です。僕の作品はどれも共通したテーマがあります。どれかいっこでも好きになって他の作品を読んでくれる目印に名前をしたいんです。』
と、断ったらしい。編集者の意図はおそらく
一般読者が爽やか作品を好きになって、他作品、つまりグロ作品にも著者が一緒だからと手を出してを読んだときに敬遠されないために勧めたのだろうが
仁村の断った意図はおそらく
どれも、書いてるテーマは変わりないから、是非一つの作品を読んで他にも興味を持ったら読んでほしい、ということのようだ。
どう考えても編集者の話に乗ったほうがよかったはずだ。
とりあえず、仁村の元に、作品によって傾向180度も変えるな!みたいな読者からの感想が届いたことはないようなのでまだ被害者は出てない。
・・・と祈りたい。
とまあ、そんなこんなで仁村と二人、最初は大型本屋だとか、ちょっとしたアニメショップみたいなところに立ち寄って
仁村が資料に用いる本などを買ったりしていたが、
徐々に、仁村が向かう場所が怪しげになってきていた。
「・・・仁村、次どこ行くんだ?」
「んー、次回作の資料用にちょっと買いたいものがあるんだけど・・・ちょっと財布の中キツいかも。クレジットでもいいのかなあ・・・?」
「・・・」
次に足を踏み入れた場所は、いわゆるミリタリーショップというやつで、いたるところに迷彩柄のグッズが置かれている。
モデルガンだとはわかっているが、機関銃やらショットガンやらがディスプレイされていて、なんともいえない圧迫感がある。
店の中にいる客と思しき人間も、オタクっぽいとはいえど、堅気の臭いがしない。自分と仁村の二人が、異様に清潔で浮いている。
「に、仁村・・・これって・・・」
「次回作では、KGBというかSVRを舞台にチェチェン辺りの攻防というかそんなんを書こうかと思ってるんだけどさ・・・」
「へ、へえ・・・」
仁村にはついていけない。そう思った。
※仁村はそういうキャラです。その2.
●lastそして・・・仁村の趣味についていけずさよなら
ミリタリーショップで一丁モデルガンのアサルトライフルを購入した仁村は(どう考えても作中で事細かに描写する必要が無いはずなのに)
ルンルン気分で今度は・・・
「なんだ・・・ここは。」
「SMグッズ販売店、なんだけど。」
・・・そういうことを聞きたかったわけじゃない。ショッキングピンクで『SMグッズショップはーと』と書かれたネオンに、有刺鉄線が巡らされた
格子窓のついた入口、そして中には怪しげなキャンドルやら縄やら鞭やらがこれまた怪しげな照明の下に置かれている。
どうしてこんなところに平気で仁村は来れるのか。わけがわからない。
「これも、資料でいるのか・・・?書いてる小説って、B級スプラッタもんじゃなかったか・・・?」
「んー、いつもはそうなんだけどさあ、あんだけグロい小説を描写を事細かに書けるんだったら官能小説もどうですか?って、
官能小説出してる出版社から依頼が来てさあ、本当は書いたことないんだけど引き受けちゃってー。」
「なんでそこで引き受けるんだ・・・?」
「この間、印税入ったんだけど、資料用に色々とさっきのモデルガンとか買ったらお金無くなっちゃって、そしたら大家さんに
『仁村くん、忘れてるかも知れへんけど、今月と先月分の家賃引き落としできひんかったねんか。』
って言われて、あ、口座の残高がなくなってる!って気付いたんだよねー」
「って、家賃滞納してんのか!?」
「そういうことになるのかなあ。」
「何やってんだよ仁村!!!大家さんがいい人だからいいけど、2カ月も払ってないって、ダメだろ!?」
「っていうわけで、てっとり早くお金になる仕事入れなきゃと思って、官能小説の依頼受けたんだよ~。
でも、掲載誌のテーマがSMっていうからさあ、そういう系は全然知識ないから今回資料探しに来たって言うわけなんだよー。」
そういって仁村はふむふむ、と見るからに怪しげなグッズを触っている。気持ち悪い造形のグッズやら、ぷにぷにとしたこれの用途何?みたいな
ゲル状のグッズとかを、平気で触っている。
なんとも恐ろしいので遠巻きに見守らざるを得なかったのだが、急にポンと誰かに手を肩に置かれた。
「ひっ。だ、誰だ!?」
咄嗟に振り向くと、そこには巨漢・・・否、フリフリのワンピースを着たオカマが立っていた。
「あら、ごめんなさいね、あたしはこの店の店主なんだけど、初めての方かしら?どういったものをお求め?」
「い、いや・・・連れが今そこで探してるんですが・・・」
「あらぁ、せっかく二人で来たのに、彼氏一人で商品選びさせてるの?ダメじゃない。あなたもほら!」
そういって怪しげなぷにぷにゲル状グッズを手に取らせようとする。手に乗せると形状をさらに液状化させる気持ち悪さだ。
「ひぃぃいいいいいい・・・!」
「まあ、これって結構うちでは売れ筋なのよ。これをね、二人の愛の営みの・・・」
「そそそそそそそそれ以上言わないでくれええええええ・・・!!!!!」
「あ、飯塚、どこに行くの!?」
あんまりの心的恐怖に、一目散に逃げ出さざるを得なかった。たとえ仁村を置いていっても。




