夫の好みのドレス以外を着てみた。
なんでもあり。
「なっ、そのドレスどうしたの…!?」
夫であるアンドレが驚愕したように、私を見つめてきた。
うん、驚くかなとは思っていたけど、そんなに?
「どうかしら、いつもと違う雰囲気のものなんだけど」
私がくるりと後ろも見せてみると、レースたっぷりのドレスにアンドレは顎が外れそうになっている。
だから、そんなに?
「な、ぼ、どっ」
「『なんで僕の選んだドレス以外を持っているの?』で、言いたいことは合ってる?」
首を傾げると、アンドレにガシッと肩を掴まれた。
「そう!なんで!?僕以外に誰が選んだの!?嫌だよ!」
「落ち着いて、大丈夫だから」
「なにも大丈夫じゃないっ!」
泣きそうなのか怒っているのか、私を揺さぶってくるので、容赦なく頭が揺れる。
ちょっと驚かそうと思っただけだったんだけど、こうなるなら、先に許可を取っておけばよかったわ。
順番、間違えたわ。
「ぼ、僕の選ぶものがもう気に入らなくなっちゃった…?というか、僕、もういらない……?」
「違うから、落ち着いて」
「だってっ」
「これね、弟が選んでくれたの」
「……弟君が?」
「そう、今度6歳になるうちの弟が」
「ああああ、他の男からかと思うと正直腹立たしいけど、弟君なら致し方ないね…!」
この人、弟相手でも嫉妬するのか。
本当に悔しそうに顔を歪めているから、やや引いている。
いつもの夫が選ぶ夫好みのドレスじゃないだけで、こうなるのか。
このドレス、弟と生地がお揃いなの、とか言わない方がいいな、うん。
「で、どうかな?」
「似合ってるよ!かわいい!」
「なら、よかった」
私が笑うと、ぎゅうーっと抱きつかれて、それが弟みたいで余計に笑いそうになる。
可愛い弟は、1人だけのはずなんだけどなぁ。
「今度はまた僕が選んだドレスを着てくれたらうれしいな」
「それでしたら、よかったら弟のも選んでくれないかしら?」
「……敵に塩は送りたくないけれど、君のお願いなら」
究極なお願いをされたとばかりに、ぐぬぬ…となっている夫がちょっと心配になってくる。
敵って…。
「せっかくなら3人でお揃いとかがいいなって」
「お揃い…?」
「ええ、私と弟とあなたと、3人でお揃い。よくないですか?」
抱きつかれたままそう答えると、アンドレの顔をは急にぱああっと明るくなった。
「それはいい!名案だよ!」
「それならよかった」
「弟君にも君の義兄がお姉さんの一番なんだからね!って見せつけられるし」
「……?」
「いつかいい男に成長した時のためにも、今から経済力や愛情で負けないところを見せておかないとね!」
「……なんか思っていた方向と違う」
「君の弟君に尊敬されたら、僕もうれしいし!」
「なるほど…?」
「早速、オーダーメイドしなくちゃ。今度、弟君を家に招いてもいいかな?」
「それはもちろん、いいに決まってるけど」
「すぐに手紙を出すね!今書いてくるから!」
アンドレはあっという間に物事を決めて、執務室に戻っていった。
うーん、まあ、このドレスを着てもいいみたいだし、いいか…?
弟とお揃いの生地のドレスをもう一度見て、可愛い弟にも会えるしいいかという気持ちに切り替わったのだった。
うん、アンドレの暴走はいつも通りだし、特に問題ないかも。
3人でのお揃いも、楽しみね。
了
お読みいただきましてありがとうございました!!
221日目。




