12私たちの出会いからここに至るまでをコミックにするのなんてどうですか
アルフレニスもまた、ヴィオラの絵の才能がコミックに与える影響の大きさを熱心に語る。
「そこまで……ですか」
ヴィオラはしばらく迷った後、静かに頷いた。
「……わかりました。情熱に免じて、一度だけ協力しましょう。そ簡単に制御できるものではありませんけれど」
ヴィオラの言葉にミルナリスとアルフレニスは喜ぶ。そこからは即座に動く。アトリエでミルナリス、アルフレニス、ヴィオラの三人は初めての色付きコミック制作に取り掛かった。
善は急げ。
ヴィオラはコミックの原稿に触れると指先から淡い光を放ち、絵に鮮やかな色彩を与えていった。
色は絵具で塗られたものとは異なり、絵そのものから湧き出るかのように深みと透明感を持っている。その光景に息を呑む。アルフレニスもまた、色付きの魔法に魅入られていた。
「これは……!物語が息をしているようです!すごい!」
アルフレニスは感動したように声を上げた。白黒だった絵が魔法によって命を吹き込まれ、登場人物たちの感情や物語の世界観がより一層鮮やかに伝わってくる。
やった本人は最初は戸惑いながらも、ミルナリスとアルフレニスが語る物語の面白さに触れるうちに次第に夢中になる。
特にエリーゼが描いた庶民の日常の物語やパージェルの壮大なファンタジーの世界に、彼女は魅了されていく。
「この光の表現……この水の揺らめき……私の魔法でここまで表現できるとは……信じられない」
ヴィオラは、日本自身の魔法の新たな可能性に気づき、瞳を輝かせた。
「色を付けられることでここまで変わるなんて」
これまで自分の力を疎まれるものだと感じていたが、ミルナリスとアルフレニスの言葉とコミックの絵に触れることで、その考えが変わっていっている。
「ヴィオラさん、あなたはコミック全てに色彩を与えることができる」
伝えると、ヴィオラの顔に初めて心からの笑顔が浮かぶ。こうして、ヴィオラはノラウグスト・コミック出版の専属の色彩師として、コミック制作に加わることになった。
魔法によって、コミックは新たな表現の領域へと進化を遂げたのである。
色彩豊かなコミックの制作が順調に進む中、ミルナリスはアルフレニスとの関係をさらに深めたいと考えている。
公爵から名誉子爵の位を授けられたとはいえ、二人の間には依然として越えなければならない壁が存在するが、もう迷わない。
アルフレニスを以前訪れた湖畔のコテージに誘った。今回は誰にも邪魔されない、二人だけの特別。
馬車の中でアルフレニスはミルナリスの手をそっと握る。
彼の指先が震えているのが分かった。それは緊張か、それとも喜びか。心臓の鼓動が伝わってくるような気がして、嬉しい。
「ミルナリス様、二人きりで過ごせる時間があることが、本当に幸せです」
「私も……アルフレニスさん」
コテージに到着し、二人で夕食の準備をした後、湖畔を散歩した。
「ゆっくり過ごせるのは幸せですね」
「そうだね」
夕暮れの空が湖面に赤や紫の美しいグラデーションを描き出している。ヴィオラの魔法がなくても景色は、すでに十分に色彩豊か。
「アルフレニスさん……」
立ち止まり、アルフレニスの方を向いた。
「これからもずっと一緒に、新しい文化を創っていきたい。隣にいてほしいと願ってる」
アルフレニスは優しく微笑んだ。
「同じ気持ちです。ミルナリス様がいなければ、今の私はありません。共に人生を歩んでいきたいと、心から願っております」
アルフレニスはミルナリスの手を両手で包み込み、額にキスをする。
「ミルナリス様。もしよろしければ……私の家族にお会いいただけませんか?」
アルフレニスの突然の提案にミルナリスは驚いた。王都の庶民街で小さなパン屋を営んでいると聞いている。家族に会うということは一歩踏み込むこと。
「喜んで。ぜひ、お会いしたい」
笑顔で答える。アルフレニスの家族に会うことで、二人の関係はまた一歩進むだろうから。貴族と平民という壁を乗り越えるための大きな一歩としたい。
ミルナリスとアルフレニス、ヴィオラが協力して生み出したカラーコミックは発売されるや否や、瞬く間にベストセラーとなる。物語の面白さに加え、鮮やかな色彩が加わることで物語の世界に入り込んだかのような感覚を味わう。
カラーコミックの登場は印刷技術の革新にもつながり、印刷業界全体に大きな影響を与える。
ヴィオラは自分の力が多くの人々に喜びを与えることができると知り、心が満たされる日々を送っていた。
アルフレニスと共に彼の家族が営むパン屋を訪れた。最初は緊張していたミルナリスだったが、彼の両親は温かく迎え入れてくれる。
家族の温かさに触れ、家族の一員になりたいと心から願う。
公爵もまた、娘の選んだ道を静かに見守り、二人の関係を全面的に支援する姿勢を貫いてくれた。結婚式はどうしようか、という話も出てくる。
二人は手を取り合い、コミックにちなんだものにしたいねと笑みを交わし合う。
出会いから始まって、最後にはウエディングで皆に囲まれるハッピーエンドにしたいなと、今から作るのが楽しみになった。




