第5話 呪も薬も使いよう
呪の魔法薬を作り上げたラカは、
7日間の眠りからようやく目を覚ます。
しかし――
寝ぼけたままのラカが起こした“たった一つのミス”が、
とんでもない事態を引き起こしてしまう。
ポーションと呪の魔法薬の混入。
そして、次々と訪れる“元男性”たち。
呪いは、使いよう。
薬も、使いよう。
第5話、混乱の幕開け。
・⋯━☞ラカの家☜━⋯・
ラカは、「呪の魔法薬」を完成させると、
まるで寝溜めするかのように、7日間目眠り続けた。
だが、ラカが長い眠りから覚めると……
「……ん……んん……あら?
いつの間に、眠ってしまったのかしら?」
ラカは、のそのそと起き上がる。
そして、完成した呪の魔法薬を片付けようと、
テーブルの上の呪の魔法薬を一箇所に集める。
だがこのとき、一本足りないことに、
ラカは気づいていなかった……
それはそれとして、流石は魔女である。
普通なら、飲まず食わずで7日間も眠ってしまったら、
命の危険すらあったばずである。
ラカの大魔女としての膨大な魔力のお陰か。
とはいえ、少しふらつくラカ。
ガタッ!……
「あら、あらあらあら……ふらつくわね……」
ラカは、ふらついたときに、テーブルに足をぶつける。
その衝撃で、テーブルの上のポーション混ざってしまう。
「あら?! いけない!
……ど、どうしましょう?」
なんと!
他の普通の回復薬のポーションと、呪の魔法薬とが、
ごっちゃ混になってしまったのだ。
「あら! あらあらあら大変!!
どうしましょう! どうしましょう~!?」
なんとも、おバカさんなラカである。
寝起きのせいなのか、それとも元々なのか、
どれがポーションなのか呪の魔法薬なのか、
ラカ自身も分からなくなってしまうのだった……
「………………どうしましょう(汗)」
どうもこうもない。
ポーションと同じ瓶に呪の魔法薬を詰めたせいである。
怒りと苛立ちと寝ずの精製のせいか、
呪の魔法薬を、ポーションと差別化するのを忘れていた。
「……これは、一大事だわ
とにかく、全てのお薬を
とりあえずは仕舞っておきましょう!」
何を思ったのか、ラカはポーションと一緒に、
呪の魔法薬まで、商品棚へ入れてしまうのだった。
まだ、完全に眠気が覚めていないようである。
それとも、天然なのか……
だが、そんなときだった!
ドンドンドン!
「きゃあ!」
「魔女殿ー! ご在宅かー!」
「騎士様? ちょっと待ってくださいませ!!」
ラカの家にやって来たのは、王国の騎士だった。
ラカは毎月始めに、王国へポーションを卸している。
安定した収入源であるはずなのに、
アライオルへの恨みで忘れていたラカ。
根っからの面倒臭がり屋のラカは、
毎月王国へのポーション50本精製の仕事を、
まだ終わらせていなかったことに気づく。
「今、開けますわね!」
カチャカチャ……カチン!
ガチャ! キィ~~~……
「やあやあ、魔女殿! 今日もお美しい……って?」
「……何かしら?」
「魔女殿、目の下にクマが出ていますぞ?」
「あ、あはは……気になさらないでくださいな」
「……そうか? では、いつものを受け取りに」
「あ、はいはい! ちょっと待って……きゃっ!」
「危ないっ!!」
ガバッ!……
ラカは、寝不足と空腹にふらつき、バランスを崩してしまう。
そんなラカを、慌てて抱き寄せる騎士。
「だ、大丈夫かな魔女殿?」
「ええ、大丈夫ですわ 少し、無理をしただけ」
「では……」
「ひゃあ?!……」
騎士は、ラカをお姫様抱っこで、ベッドへ寝かせた。
「無理をしないように……」
「す、すみません……」
「では、勝手にポーションを持って行きますぞ?」
バタバタバタッ……ガタガタッ!
「ああっ! ちょっ……」
「代金は、ここへ置いておくぞ!」
ズチャ!……
「あぁあっ! 待って!」
バタン!
「!!………………嘘?」
慌てるラカに構わず、騎士は棚からポーションの入った箱を掴むと脇に抱えて、懐から金貨の入った巾着袋をテーブルに投げるように置いて、さっさと家を出て行ってしまった。
確かに、ポーションの箱には、呪の魔法薬を含め、
ちょうど50本にはなっていた。
なので、騎士は何の疑いもなく、持って行ってしまった。
「ああああああああ~~~っ!!
どうしましょう~! どうしましょう~~~!」
頭を抱えながら半泣きのラカ。
魔女は、涙を流さないもの。
だがこのときばかりは、本気で涙を流すラカだった。
どころが、その数日後……
ドンドンドンドン!!
「はきゃあ!?……なに?」
「魔女殿! 魔女殿はご在宅かあー!!」
「え? だれ? 女の人?
はいはい、ただいまー!」
突然、ラカの家にやって来たのは、
どうやら若い女性なようだった。
だがしかし、その言葉遣いは、騎士のものだった。
はて……?
カチャカチャ……カチン!
ガチャ!……キィーバァン!!
「いやっ?!……な、なにを?!」
ラカがドアの鍵を開けたと同時に、
ドアは荒々しく開かれた!
そして入口に立っていたのは、若い女性騎士だった。
だがその身なりは、
いつもこの家にやって来る騎士のような
「フルメタルアーマー」を装備した騎士ではなく、
見た目は、軽装な若い女性騎士。
「魔女殿おーー!!」
「きゃあ!! な、なんですか貴女は?!」
「なんですかじゃない!!
いったいあの薬はなんなんだ?!」
「ほぇ……???」
「なんとか言ったら、ど、う、な、ん、だっ!!」
ガクガクガクガクッ!
(激しくラカを揺さぶる女性騎士)
「ちょっと…待っ…て…く、だ、さ、い、ませぇ~(汗)」
イマイチ、状況が理解できないラカ。
突然、若い女性騎士が家にやって来たかと思えば、
いきなりラカの肩に両手で掴みかかり、
ラカを激しく揺さぶるのだ。
ラカは、何が何やらわけが分からない。
まさか、目の前の若い女性騎士が、
いつもポーションを受け取りに来ていた、
王国の男性騎士だったとは思いもしないラカ。
そうなのである。
彼女は、ラカの精製した呪の魔法薬を飲んで、
体が女性へと変身し、ついでに若返ったのである。
「はぁ…はぁ…はぁ……
ああ、なぜだ? どうして?
どうしてこんなことに? くっ…殺せ!」
「あ、あの……大丈夫ぅ……ですか?」
「ぁあん?!」
「ひっ!?……(汗)」
ラカの、まるで無責任な問いかけに、
若い女性騎士はラカを睨みつける。
とにかくわけが分からないラカとは対照に、
自分がなぜ女になってしまったのかを、
もう既に理解していた若い女性騎士。
そんなこと、ラカの薬を飲んだからに他ならない。
「魔物討伐で騎士人生の危機ほどの大怪我をしたから、
魔女殿のポーションを飲んだら、
途端に怪我は完全に治ったが、この有様だあー!
どうしてくれるんだ! 早く俺を元に戻せぇー!」
ガクガクガクガクッ!
(またラカを激しく揺さぶる女性騎士)
「ま、ま、ま、ま、ま、待って……
く、く、くらはい、ま、ま、ませぇ~~~(汗)」
すると、そこへ……
「魔女さまぁーー!!」
「なんだ?! 今は、取り込み中だ!」
「今度は、なにぃ?!」
またやって来たのは、見かけない若い女性。
もう、お気づきであろう。
そう。この女性もまた、ラカの精製した、
「呪の魔法薬」によって、
若い女性に変身してしまった
最寄りの町に住む、元中年男性の冒険者だった。
先日、ラカがまだ眠っていたときに、
彼はどんなに起こしても起きてくれない
ラカに痺れを切らし、仕方なく、
テーブルの上の呪の魔法薬を、
ポーションと間違い、お金を置いて、
勝手に持ち帰って家族と分けて
飲んでしまったのだ。
ところが、怪我をしていない娘は
ただ体力が回復しただけだった。
だが嫁は若返り、自分は若返るだけでなく、
女に変身してしまったと言うのだ。
だが、この呪の魔法薬は、
ポーション以上の回復効果があることが判明した!
普通のポーションでは、ここまでの回復効果は望めない。
「なんなんだよ、あの薬わあ!?」
「はぁっ?!」
「飲んだ途端に怪我は治ったが、俺は女になっちまったぞ!」
「はあいぃいぃいぃ~~~?!」
「嫁さんに怒られるわ、子供には泣かれるわで、
もう、最悪だよ! 早くどうにかしてくれ!!」
「そりゃ、そうでしょうね?」
「何を他人事のように~~!!」
「そ、そんなことを言われても~~~(汗)」
「いいや! まずは、俺からだ!
俺を元の体に戻してくれ!!」
「そ、そ、そんな……(汗)」
「女っ気の無い騎士団だぞ!
俺は危うく貞操を失うところだったんだぞ!!」
ガクガクガクガクッ!
(またまたラカを激しく揺すぶる女性騎士)
「わ、きゃ、そ、そ、そ、そん、そん、そん、
そんなこと、い、い、い、言われてもぉ~~~(汗)」
「「早く元に戻せえーーー!!」」
「無理いーーーーーー!!」
「「ええええええええええ~~~?!」」
「もう、元には戻れないのですぅ~~~!!」
「「∑( ̄□ ̄( ̄□ ̄Ⅲ)!!………………」」
ラカのそんな返答に思わず固まる二人の女性。
……いや、元男性。
果たして、彼ら……いや、彼女らの運命は如何に?
読んでくださり、ありがとうございます。
ラカのうっかりミスから始まった今回の騒動。
呪の魔法薬の効果が、
まさかここまで強烈だとは……。
騎士も冒険者も、
次々と若い女性へ変身してしまう大惨事。
そしてラカの叫び――
「無理ぃーーーー!!」
呪いは、まだ始まったばかり。
次回もぜひ見守ってください。




