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女装剤(呪の章)  作者: 嬉々ゆう


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5/8

第5話 呪も薬も使いよう

呪の魔法薬を作り上げたラカは、

7日間の眠りからようやく目を覚ます。


しかし――

寝ぼけたままのラカが起こした“たった一つのミス”が、

とんでもない事態を引き起こしてしまう。


ポーションと呪の魔法薬の混入。

そして、次々と訪れる“元男性”たち。


呪いは、使いよう。

薬も、使いよう。


第5話、混乱の幕開け。



 ・⋯━☞ラカの家☜━⋯・



 ラカは、「呪の魔法薬」を完成させると、

 まるで寝溜めするかのように、7日間目眠り続けた。


 だが、ラカが長い眠りから覚めると……



「……ん……んん……あら?

 いつの間に、眠ってしまったのかしら?」



 ラカは、のそのそと起き上がる。

 そして、完成した呪の魔法薬を片付けようと、

 テーブルの上の呪の魔法薬を一箇所に集める。


 だがこのとき、一本足りないことに、

 ラカは気づいていなかった……


 それはそれとして、流石は魔女である。

 普通なら、飲まず食わずで7日間も眠ってしまったら、

 命の危険すらあったばずである。

 ラカの大魔女としての膨大な魔力のお陰か。

 とはいえ、少しふらつくラカ。



 ガタッ!……


「あら、あらあらあら……ふらつくわね……」



 ラカは、ふらついたときに、テーブルに足をぶつける。

 その衝撃で、テーブルの上のポーション混ざってしまう。



「あら?! いけない!

 ……ど、どうしましょう?」



 なんと!

 他の普通の回復薬のポーションと、呪の魔法薬とが、

 ごっちゃ混になってしまったのだ。



「あら! あらあらあら大変!!

 どうしましょう! どうしましょう~!?」



 なんとも、おバカさんなラカである。

 寝起きのせいなのか、それとも元々なのか、

 どれがポーションなのか呪の魔法薬なのか、

 ラカ自身も分からなくなってしまうのだった……



「………………どうしましょう(汗)」



 どうもこうもない。

 ポーションと同じ瓶に呪の魔法薬を詰めたせいである。

 怒りと苛立ちと寝ずの精製のせいか、

 呪の魔法薬を、ポーションと差別化するのを忘れていた。



「……これは、一大事だわ

 とにかく、全てのお薬を

 とりあえずは仕舞っておきましょう!」



 何を思ったのか、ラカはポーションと一緒に、

 呪の魔法薬まで、商品棚へ入れてしまうのだった。

 まだ、完全に眠気が覚めていないようである。

 それとも、天然なのか……


 だが、そんなときだった!



 ドンドンドン!


「きゃあ!」


「魔女殿ー! ご在宅かー!」


「騎士様? ちょっと待ってくださいませ!!」



 ラカの家にやって来たのは、王国の騎士だった。

 ラカは毎月始めに、王国へポーションを卸している。

 安定した収入源であるはずなのに、

 アライオルへの恨みで忘れていたラカ。

 根っからの面倒臭がり屋のラカは、

 毎月王国へのポーション50本精製の仕事を、

 まだ終わらせていなかったことに気づく。



「今、開けますわね!」


 カチャカチャ……カチン!

  ガチャ! キィ~~~……


「やあやあ、魔女殿! 今日もお美しい……って?」


「……何かしら?」


「魔女殿、目の下にクマが出ていますぞ?」


「あ、あはは……気になさらないでくださいな」


「……そうか? では、いつものを受け取りに」


「あ、はいはい! ちょっと待って……きゃっ!」


「危ないっ!!」


 ガバッ!……



 ラカは、寝不足と空腹にふらつき、バランスを崩してしまう。

 そんなラカを、慌てて抱き寄せる騎士。



「だ、大丈夫かな魔女殿?」


「ええ、大丈夫ですわ 少し、無理をしただけ」


「では……」


「ひゃあ?!……」



 騎士は、ラカをお姫様抱っこで、ベッドへ寝かせた。



「無理をしないように……」


「す、すみません……」


「では、勝手にポーションを持って行きますぞ?」


 バタバタバタッ……ガタガタッ!


「ああっ! ちょっ……」


「代金は、ここへ置いておくぞ!」


 ズチャ!……


「あぁあっ! 待って!」


 バタン!


「!!………………嘘?」



 慌てるラカに構わず、騎士は棚からポーションの入った箱を掴むと脇に抱えて、懐から金貨の入った巾着袋をテーブルに投げるように置いて、さっさと家を出て行ってしまった。


 確かに、ポーションの箱には、呪の魔法薬を含め、

 ちょうど50本にはなっていた。

 なので、騎士は何の疑いもなく、持って行ってしまった。



「ああああああああ~~~っ!!

 どうしましょう~! どうしましょう~~~!」



 頭を抱えながら半泣きのラカ。

 魔女は、涙を流さないもの。

 だがこのときばかりは、本気で涙を流すラカだった。


 どころが、その数日後……



 ドンドンドンドン!!


「はきゃあ!?……なに?」


「魔女殿! 魔女殿はご在宅かあー!!」


「え? だれ? 女の人?

 はいはい、ただいまー!」



 突然、ラカの家にやって来たのは、

 どうやら若い女性なようだった。

 だがしかし、その言葉遣いは、騎士のものだった。

 はて……?


 カチャカチャ……カチン!

  ガチャ!……キィーバァン!!


「いやっ?!……な、なにを?!」



 ラカがドアの鍵を開けたと同時に、

 ドアは荒々しく開かれた!

 そして入口に立っていたのは、若い女性騎士だった。

 だがその身なりは、

 いつもこの家にやって来る騎士のような

 「フルメタルアーマー」を装備した騎士ではなく、

 見た目は、軽装な若い女性騎士。



「魔女殿おーー!!」


「きゃあ!! な、なんですか貴女は?!」


「なんですかじゃない!!

 いったいあの薬はなんなんだ?!」


「ほぇ……???」


「なんとか言ったら、ど、う、な、ん、だっ!!」

 ガクガクガクガクッ!

 (激しくラカを揺さぶる女性騎士)


「ちょっと…待っ…て…く、だ、さ、い、ませぇ~(汗)」



 イマイチ、状況が理解できないラカ。

 突然、若い女性騎士が家にやって来たかと思えば、

 いきなりラカの肩に両手で掴みかかり、

 ラカを激しく揺さぶるのだ。


 ラカは、何が何やらわけが分からない。

 まさか、目の前の若い女性騎士が、

 いつもポーションを受け取りに来ていた、

 王国の男性騎士だったとは思いもしないラカ。


 そうなのである。

 彼女は、ラカの精製した呪の魔法薬を飲んで、

 体が女性へと変身し、ついでに若返ったのである。



「はぁ…はぁ…はぁ……

 ああ、なぜだ? どうして?

 どうしてこんなことに? くっ…殺せ!」


「あ、あの……大丈夫ぅ……ですか?」


「ぁあん?!」


「ひっ!?……(汗)」



 ラカの、まるで無責任な問いかけに、

 若い女性騎士はラカを睨みつける。

 とにかくわけが分からないラカとは対照に、

 自分がなぜ女になってしまったのかを、

 もう既に理解していた若い女性騎士。

 そんなこと、ラカの薬を飲んだからに他ならない。



「魔物討伐で騎士人生の危機ほどの大怪我をしたから、

 魔女殿のポーションを飲んだら、

 途端に怪我は完全に治ったが、この有様だあー!

 どうしてくれるんだ! 早く俺を元に戻せぇー!」

 ガクガクガクガクッ!

 (またラカを激しく揺さぶる女性騎士)


「ま、ま、ま、ま、ま、待って……

 く、く、くらはい、ま、ま、ませぇ~~~(汗)」



 すると、そこへ……



「魔女さまぁーー!!」


「なんだ?! 今は、取り込み中だ!」


「今度は、なにぃ?!」



 またやって来たのは、見かけない若い女性。

 もう、お気づきであろう。

 そう。この女性もまた、ラカの精製した、

 「呪の魔法薬」によって、

 若い女性に変身してしまった

 最寄りの町に住む、元中年男性の冒険者だった。

 

 先日、ラカがまだ眠っていたときに、

 彼はどんなに起こしても起きてくれない

 ラカに痺れを切らし、仕方なく、

 テーブルの上の呪の魔法薬を、

 ポーションと間違い、お金を置いて、

 勝手に持ち帰って家族と分けて

 飲んでしまったのだ。


 ところが、怪我をしていない娘は

 ただ体力が回復しただけだった。

 だが嫁は若返り、自分は若返るだけでなく、

 女に変身してしまったと言うのだ。


 だが、この呪の魔法薬は、

 ポーション以上の回復効果があることが判明した!

 普通のポーションでは、ここまでの回復効果は望めない。



「なんなんだよ、あの薬わあ!?」


「はぁっ?!」


「飲んだ途端に怪我は治ったが、俺は女になっちまったぞ!」


「はあいぃいぃいぃ~~~?!」


「嫁さんに怒られるわ、子供には泣かれるわで、

 もう、最悪だよ! 早くどうにかしてくれ!!」


「そりゃ、そうでしょうね?」


「何を他人事のように~~!!」


「そ、そんなことを言われても~~~(汗)」


「いいや! まずは、俺からだ!

 俺を元の体に戻してくれ!!」


「そ、そ、そんな……(汗)」


「女っ気の無い騎士団だぞ!

 俺は危うく貞操を失うところだったんだぞ!!」

 ガクガクガクガクッ!

 (またまたラカを激しく揺すぶる女性騎士)


「わ、きゃ、そ、そ、そ、そん、そん、そん、

 そんなこと、い、い、い、言われてもぉ~~~(汗)」


「「早く元に戻せえーーー!!」」


「無理いーーーーーー!!」


「「ええええええええええ~~~?!」」


「もう、元には戻れないのですぅ~~~!!」


「「∑( ̄□ ̄( ̄□ ̄Ⅲ)!!………………」」



 ラカのそんな返答に思わず固まる二人の女性。

 ……いや、元男性。


 果たして、彼ら……いや、彼女らの運命は如何に?



読んでくださり、ありがとうございます。


ラカのうっかりミスから始まった今回の騒動。

呪の魔法薬の効果が、

まさかここまで強烈だとは……。


騎士も冒険者も、

次々と若い女性へ変身してしまう大惨事。


そしてラカの叫び――

「無理ぃーーーー!!」


呪いは、まだ始まったばかり。

次回もぜひ見守ってください。

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