第4話 呪の魔法薬
アライオルの失踪から一年。
ラカの胸に積もった不安と嫉妬は、
やがて“恨み”へと姿を変えていく。
そしてついに、
ラカはその感情を魔法へと変換してしまう。
これは、後に“女装剤”と呼ばれる
呪いの魔法薬が生まれる瞬間の物語。
恋が歪み、呪いへと変わる――
第4話、開幕。
・⋯━☞ラカの家☜━⋯・
リタンから、アライオルが行商人の娘ナロライと一緒に姿を消したと聞いて、ラカはアライオルへ対して「裏切り」を確信した。
ラカは、アライオルへの恨みを、「呪」に変えて、
『呪の魔法薬』を完成させてしまった。
「ふっふっふっふっふっ……
ついに! ついに完成したわ!」
ラカは、小さな小瓶を手に持ち、
マジマジと怪しい目で見つめながら囁く。
「”ヘルマの泉の水”がアッサリ手に入ったのは、
本当にラッキーだったわ!」
ラカの言う、「ヘルマの泉の水」とは、
ラカの家の近くにある、「妖精の泉」の水である。
実は、「妖精の泉」には、もう一つの名がある。
その名も、「ヘルマの呪の泉」である。
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■ここで、ヘルマプロディートスについて話そう。
ヘルマとは、”ヘルマプロディートス”の略である。
ヘルマは、15歳の超絶美男子だった。
ヘルマは旅の途中で、とても綺麗な泉を見つける。
そこは、妖精が管理する泉であり、その妖精もまた、
とても美しい超絶美少女であった。
旅で疲れていたヘルマは、妖精の泉とは知らずに、
体を清めるために裸になり、泉の中に入る。
ところが、物陰からそんなヘルマを見ていた妖精は、
ヘルマに一目惚れをしてしまう。
泉の中で体を清めるヘルマに、妖精は何を考えたのか、
突然飛びつくように抱きつき、ヘルマに求婚する。
しかしヘルマは、妖精の求婚を拒否。
だが、ヘルマを諦めきれなかった妖精は、
自称神様に、ヘルマと1つになることを願った。
そんな妖精の願いを、自称神様はどう勘違いしたのか、
ヘルマと妖精を1つにしてしまったのだった。
なので、男でもあり、女でもある体となったヘルマは、
絶望のあまりに旅を諦め、命を絶とうと泉に身を沈めてしまう。
ところが、ヘルマは半分は妖精であるために、
命を絶つことができなかった。
仕方なく、泉の管理者として生きていくことになる。
そんなある日のこと。
泉の外で、男女の言い争う声がする。
ヘルマは、何事かと慌てて泉の外へ出てみるが、
そこで見たのは、自称神様と男神様だった。
そんな神様たちが、何を言い争っているのかと
ヘルマが尋ねたら…
『男と女で、エッチをしたとき、
どっちの方が気持ち良いのか?』
だったそうだ。
呆れ果てたヘルマだったが、ヘルマを見つけた男神様は、
男と女の両方の体を持つヘルマなら、
エッチの時に、どちらが気持ち良いか分かるはずだと問われる。
そこでヘルマは、迷わず…
『女の方が男よりも、100倍気持ちいい』
と、答えたそうだ。
それに怒り狂った男神様は…
『そんなに女がいいなら、お前も女になってしまえ!』
と、男と女の体を持つはずのヘルマは、
完全な女へと、変身させられてしまったのだった。
それからと言うもの、
ヘルマは二度と泉から姿を表すことは無かったという。
そして、その後のヘルマの泉には、ヘルマの恨みによって、
『泉に入った男は、みんな女に変身してしまう呪い』
が、かけられてしまったのだった。
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ヘルマの呪の泉には、このような伝説があるのだ。
そして、間違いなく、「男性が呪の魔法薬の使用者以外の女性と性的に興奮すると女性化する」効果は、この、「ヘルマの呪の泉」であるのだ。
したがって、「呪の魔法薬」のレシピは次の通りである。
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■呪の魔法薬のレシピ■
●材料●
① 虹のキノコ1本。
② ヒールハーブ3株。
③ ”呪、復習、憎悪”の花言葉の黒百合1株。
④ ”快楽”の花言葉のチューベローズ1株。
⑤ ”許されぬ恋”の花言葉のボロニア1株。
⑥ ”復讐、私を思って”の花言葉のクローバー適量。
⑦ ”恨みを晴らす”の花言葉のミヤコグサ適量。
⑧ ヘルマの呪の泉の水。
⑨ マンドレイク少々。
⑩ ヒールスライム1匹。
⑪ ゴーレムの素少々。
⑫ 魔女の体液少々。
●作り方●
1) ①~⑪全てをすり鉢ですりおろふ。
2) ①~⑪を大釜で満月から三日三晩煮詰めかき混ぜる。
3) 水分が蒸発してきたら、”ヘルマの呪の泉の水”を足す。
4) 三日後、⑫術者の(魔女の体液)を混ぜる。
5) 呪の呪文”私のもとへ戻らぬならば女になれ!”と唱える。
完成!
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「くっくっくっくっ……
あっはっはっはっはっ……」
この日、夜遅くまで魔女のたか笑が聞こえたとか……
読んでくださり、ありがとうございます。
ラカの感情がついに“呪い”へと変わり、
呪の魔法薬が誕生してしまいました。
ヘルマの伝説、泉の呪い、
そしてラカ自身の恨み。
すべてが混ざり合って生まれたこの魔法薬が、
今後どんな運命を呼び寄せるのか――
物語はさらに深い闇へと進んでいきます。
次回もぜひ見守ってください。




