第3話 恋は求める心…やがて嫉妬そして恨みへ
アライオルが姿を消して一年。
ラカの胸に積もった不安は、
やがて“疑い”へと形を変えていく。
そして突然訪れた知らせ――
「アライオルが、他の女と出ていった」
信じたい気持ちと、
抑えきれない嫉妬。
ラカの心が大きく揺れ動く第3話。
恋は求める心、そして……嫉妬へ。
・⋯━☞ラカの家☜━⋯・
アライオルと人族の女性との二人と別れた後、
一年がまた過ぎた。
ラカは、何も無かったかのように、
相変わらず、人々から魔法薬の依頼を受けていた。
「いつも、ありがとう魔女さま!」
「いいえ、どういたしまして!」
パタン!……
「ふぅ~……」
いつもなら、なんてことはない仕事である。
だが、今のラカにとっては、なんの張合いもない
ただただ、窮屈で退屈な日々。
つい、一人になるとため息が出てしまう。
ラカは、ふと視線を向ける。
そこは、いつもアライオルが座っていた椅子。
アライオルの幻が浮かんでは消える……
そして、またため息。
「……はぁ~~~……」
ラカは、壁に目をやる。
壁に貼り付けてある「魔女の暦」は、
魔法陣のような円で描かれた、二十四節季と呼ばれるもの。
「もう、一年が経つのね……」
そう、呟いていたときだった。
コンコンコン!
「あら、誰かしら?
今日はもう、お客は来ないはずだけど……」
カチャ!……
「! 貴女は?」
「魔女さま! アライオルがっ!!」
「えっ!?」
「アライオルが……アライオルがぁ……」
「ええっ!! アラがどうかしたの!?」
ラカの家にやって来たのは、
アライオルと一緒にいたはずの、人族の女性だったのだ。
だが彼女の吐く言葉には、耳を疑った。
「アライオルが、他の女と出ていってしまったの!」
「はあっ?!」
ボンッ!
「きゃあ?!……え? なに? え?」
「!!……」
突然、ボン!と破裂音とともに煙がたち、
煙の中から、可愛らしい少女が現れた!
人族の女性の視線が低くなる。
「あ、貴女は……」
「いやぁ! もう! どうしてくれるのよ!
変身が溶けちゃったじゃない!!」
「変身って……」
なんと!
ラカの姿が、少女の姿へと変身!
ラカは、魔女である。
しかも、軽く2000年は生きる大魔女でもある。
普通魔女は、500歳前後までは、
十代半ばの容姿を保つものだが、
大魔女とは、その長すぎる寿命のせいか、
1000年前後は、十代半ばの容姿を保つのだ。
しかし、大魔女とはいえラカはまだ若い。
300歳という大魔女としてのラカの正体とは、
少女の姿こそが、今のラカの真の姿なのだ。
だが、大魔女としてこの容姿では舐められる。
だから、見た目年齢を二十代に上げていたのだ。
「あ……えっと……ま、魔女さま?」
「そうよ! これが私の正体よ! 悪い?!」
ガクガクガクガクッ!
(人族の女性にしがみついて揺さぶるラカ)
「い、いい、いいあいいいあいいえ!!
ぜんぜん! 全然、悪くないですぅうぅ~!」
(平然を装うが全く平然ではない)
「そ! それより、アライオルが?」
「え? あ、はい! 私の名はリタン。
子爵家の娘で、実は……」
彼女の話は、こうだった。
人族の彼女の名は、リタン。
リタンは、つい先日伯爵家へ嫁ぐはずだった。
だが、結局は伯爵にはある企みがあることが分かる。
リタンは子爵家であるのだが、子爵の統治する土地を、
伯爵が取り込もうと企んでいると言う。
それに気づいた子爵は、その場でリタンの婚約を破棄。
普通、格下からの婚約破棄は認められないのだが、
理由がハッキリしているだけに、すんなり叶ったそうだ。
その一件以来、伯爵は子爵へ降爵。
爵位剥奪されなかっただけでもマシだ。
剥奪は過去に何度が例があるらしい。
また、爵位降爵の制度はあるものの、
今回の伯爵の降爵は初めてなのだとか。
そのせいか、国中で大騒ぎになっているらしい。
なので、アライオルがリタンから離れたのも、
いつの間にか有耶無耶になってしまったと言う。
「なによそれ! なんなのよ!!」
「やだ! やめて! スカートを脱がさないで!」
「何よこんなもの!!
私は真っ黒なワンピースなのに、
生意気にもこんな綺麗なスカート穿いてもぉー!」
(なぜかリタンのスカートを脱がそうとするラカ)
「いやぁあぁあぁあぁあぁ~~~(汗)」
ラカは、リタンのスカートにしがみついて暴れる。
リタンのスカートがずり落ち、
リタンは堪らず座り込んでしまう。
そんなリタンに抱きつくように、
リタンの胸ぐらを掴み吠えるラカ。
「バカ! なにやってるのよ!!
どうせ寿命の短い人族が相手だからって、
私から身を引いてあげたのに!!」
「そんなこと言われたって……(汗)」
「誰よ! その新しい相手ってのは誰っ?!」
「ぎょ、行商人の娘の、ナロライという子よ!」
「ナロライ?
なにそれ、”魅了”って意味じゃない!
いったい、幾つなの?!」
「じゅ、十三歳だそうよ!」
「じゅっ……?」
「……は、はい」
しぃ~~~~~~ん……
しばらく、静寂が支配した。
「じゅう?! じゅうさんさぁ~~~い?!
ロリコンかぁーー!!
アライオル! 絶対に許さないからー!!」
ガクガクガクガクッ!
(リタンを激しく揺さぶるラカ)
「で、でで…ででででもぉ!
あ、あ、あら、あら、あら、アライオルわあ~
こ、こここ、困ってるのよ~~~」
「そりゃあ、困るでしょうねえ!!
どこの馬の骨かも分からない子に
迂闊にも魅了されるなんてぇあああ~~~!」
ガクガクガクガクッ!
(また激しくリタンを揺さぶるラカ)
「ひいぃいぃいぃ~~~(汗)」
いったい、どうなることやら……
読んでくださり、ありがとうございます。
ラカの感情がついに爆発した回でした。
嫉妬、怒り、焦り、そして“恋の痛み”。
アライオルの真意はどこにあるのか。
リタンの言葉は真実なのか。
そして“ナロライ13歳”という衝撃の名前。
ラカの心は、まだまだ揺れ続けます。
次回もぜひ見守ってください。
”リタン”とは、”リターン”の「戻る」の意味。
”ナロライ”とは、”魅了”という意味。




