14話/堕ちた業星
頭に風穴を開けられ、横たわるサンゲン。
「サンゲン…さん…!」
「私を庇って…。」
「感傷に浸るのは否定しない。」
「お前を除いてな!」
業星はローラに銃口を向けた。
「業弾。」
「あっ…。」
銃弾がローラに向かう。
「まだ…まだである!」
サンゲンが立ち上がり、銃弾を更にもう一発受けた。
「えっ…?」
「はァ?」
「まだ…まだ生きてるのか?頭をブチ抜いたのに…。」
「当然である!馬人族の生命力をなめるでないわ!」
サンゲンはむしろ元気になったように見える。
「…気脈が体に満ちてる。死んでもおかしくない傷なのに…。」
「本当に大丈夫なんでしょうか…?」
「まァ生きてんならいい。それよりもこの状況を打ち破る方法を考えるのが先決だ。」
「…化け物め。やはり生かしてはおけないな。」
「ならば肉体全てを吹き飛ばしてやろう。」
「因果業砲!」
徹甲弾を生成し、サンゲンに撃つ業星。
「させるかよ!」「させません!」
ハントとハルトが突撃し、弾丸の軌道を逸らす。
「まだだ…!」
もう一発、徹甲弾を生成する。
「緑脈"不朽萌芽!"」
無差別に生える巨木の幹が、狙いを外した。
「クソっ…」
力が切れたのか、一瞬怯む。
(今が好機と突撃しても、またあの意味の分からねぇ障壁に防がれるだろう…。)
(だが、あの野郎にハルトの投げた太刀やローラの杖は当たった…。)
(つまり"当たったアイツが悪い"状況を作り出せば…!)
「ローラ!」
「何?」
「さっき、サンゲンの体に気脈が満ちてるって言ったよな?」
「え、えぇ…。」
「じゃあサンゲン!」
「何であるか?」
「限界まで気脈を練れ。不安定になるほど濃く練るんだ。」
「む?まぁ分かったのである!」
サンゲンが集中し始める。
「ローラ、ハルト。こっちに来い。つまり…」
「仲良く話してるとこ悪いけど、待ってやる気はないよ?」
「業弾!」
「クソッ!いいな?作戦通りに動け!」
ハントが突撃し、銃弾を弾く。
「また馬鹿正直に突撃して来るかい!」
「悪かったな、そこまで頭が回らなくてよォ!」
その瞬間。
「赤脈"胎動噴柱"!」
再び溶岩の柱が無差別に広がる。
しかし、命中しない。
「クソッ…!」
「はは、こうして動きを止め、無差別に撃ち続ければいつかは当たるって事かい?」
ハントの一撃を障壁で受け止めながら業星が言う。
「甘いね!」
影に沈んだ弾丸が、ハントの背中を撃ち抜く。
「ぐッ…!」
そして、ローラに銃口を向ける。
「残念だったね。唯一の突破口は潰させてもらうよ。」
「まだ!青脈"豪雨連曲"!」
豪雨が視界を悪化させる。
「そんなもので業が向かう先が逸れるとでも思うかい?」
しかし、銃口は正確にローラを捉える。
「じゃ、終わりにしよう。」
「今だ!」
ハルトが再び、乱雑に太刀を投擲する。
「なっ…!」
業星はステップし、躱す。その先に何があるかも見ることができずに。
「作戦通りだな。」
その先にいたのは、今にも爆発しそうなほどに強烈に気脈を練るサンゲンだった。
「あっ…。」
業星はサンゲンに衝突する。その瞬間。
不安定だった気脈は大爆発を引き起こし、業星は防ぐ術もなく吹き飛ばされた。
「がはっ…そんな…私が…!」
「はッ。頭くらい回るんだよ。それに…」
「ぶつかったお前が悪いんだろ?」
「…ん。」
「目ェ、覚めたか?」
「はは…。また夕陽を見れるとは思ってなかったよ。」
「他の奴らはまた意識を失ったサンゲンの治療に向かってる。ここでなら取引できるだろ。」
「はは…そうだったね。いいよ。取引成立だ。」
「だけど一回、肩を貸してくれないかい?立てそうになくてね…。」
ハントは肩を貸し、業星と共に研究室へ向かう。
「沢山武具は用意したけど…。私を出し抜いたんだ。特別な品をくれてやるよ。」
「…こいつは?」
「大剣さ。私がムツキの力を最大限使う為に作ったものだけど…。いいよ。譲ろう。」
「…どういう剣なんだ?怪しいモン渡しやがったら承知しねぇからな。」
「こいつは人の感情を抽出する剣。堕ちた人工浮遊大陸に組み込まれた思考回路から、感情を抜き出して力に出来るのさ。」
「まだ最適化が進まなくてこの大きさだけど…君にとっては好都合だろう?」
「試しにムツキから抜き取ってみなよ?」
ハントは剣を受け取り、研究室に厳重に保管されていた、ムツキの思考回路が入った球体の前に出る。
「こいつをどうすりゃいいんだ?」
「その剣を突き刺してみるんだ。そうすれば勝手に完了する。」
言われるがままに、ハントは大剣を球体に突き刺す。すると、頭の中に声が流れる。
「人の業とは人の美しさ。」
「君はそれを理解できるかい?」
「あぁ、そうだな。業は美しさかも知れねぇ。」
「でも、業は業だ。他の奴ら…エルフとかも、別に背負ってるもんがあるんだよ。」
「俺らがそれを理解できないだけで、あいつらも背負ってるんだよ。業に近しい何かを。」
「…あの少女がたどり着けなかった域であるな。」
「よろしい。力を貸そう。」
剣と球体が共鳴する。
「…これで君の剣は、私に近しい能力を手に入れた。」
「…そうなのか。」
「何を話したかは知らないけど、きっとムツキと交信したんだろう?」
「あぁ。思ったより聞き分けが良くて驚いたな。」
「そりゃ、ムツキは人の業が故に堕ちた星だからね。人の本質に最も近いと言っていいのさ。」
「…。」
「人工浮遊大陸ムツキは、人が人らしくあった結果堕ちた星。人が利己的に動き過ぎた結果、集団の利を得られずに堕ちたのさ。」
「でも今は、それすらも愛おしい。人らしく死ねたんだからね。」
「俺はそうは思わないがな。人に固執し柔軟さを失った結果滅んだんなら、それは愚かでしかない。」
「…君とは、意見が合わなさそうだね。」
「合わなくていいさ、テメェなんかとな。」
「…ちなみに。私を殺したりはしないのかい?私のした事は、君にとっては罪なんじゃないかい?」
「…どうでもいいさ。」
ハントは新たな大剣を持って、治療室へ向かった。
「来てくれたのであるか!ハント君!私はこの通り元気であるぞ!」
「おぉ…そうか…。」
サンゲンの傷はもう塞がっていた。
「ありえないわね…率直に言って。」
「大丈夫なら良いんですけど…。」
その後、全員仲良く全治数週間を言い渡された。
四人全員で、病室で小さな祝賀会を開くのだった。




