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13話/背負った過去

戦場。


硝煙の匂い。

死体の山。


テントの中。


少女が、兵士の手当てをしている。


「今日は、7人。」


男がテントに入ってくる。


英雄と呼ばれる男。


「今日は7人、人を殺したそうだ。」


男は疲れた顔で座る。


「チッ…。」

「いつまでこんな事を続けなければならないんだろうか。」

「ま、仕方ないか…。」


自らを嗤う。


「そんなこと言わないでください、英雄様!」


少女が包帯を巻きながら言う。


「英雄様のお陰で、私たちは守られてるんですから。」

「ほら、今日はみんな誰も死んでません!」


「はは…。」


英雄が苦笑いする。


「そりゃよかったね。」


少女はその姿を見る。


(英雄様は…脆い。)

(でも…強い。)


英雄は剣を磨き、銃を整備する。


(何かを殺す事を嫌悪してる。)

(でも…誰よりもそれが得意。)


少女は思う。


(このねじれが好きだ。)

(誰にも背負えない痛みを)

(傷だらけになりながら背負うその姿が)

(何とも格好良く見える。)


「英雄様!」

少女が声をかける。

「ん?」

「私も…いつか。」


少女は笑う。


「英雄様みたいに、誰かを守れるようになりたいです。」

「…そうか。」


英雄が優しく笑う。


「でも、なるなよ。」

「え?」

「英雄なんて…。」


「辛いだけだからな。」


ある日。

「拠点を変えるぞ!」


隊長の声。

隊が移動を始める。

少女も医療道具を持って歩く。


新しい拠点…どんな場所だろう。


森を抜ける。

その時。


矢が飛んでくる。


「うわっ!」

兵士が倒れる。


「敵襲!」

「エルフだ!」

「くっ…縄張りに入っちまったのか!」

エルフたちが現れる。

何人も。

何十人も。


「隊形を組め!」

英雄が叫ぶ。


「俺が前に出る!」

英雄が剣を抜く。


しかし。

数が多すぎる。


「助けて…!」

兵士が倒れる。

「クソッ…」

英雄が歯を食いしばる。

「隊長…がはっ…!」

また一人倒れる。


「くっ…!」

英雄が奮戦する。


でも。

状況が悪すぎる。

エルフたちが囲む。

「はぁ…。はぁ…。」


英雄が息を切らす。


その瞬間。

矢が英雄の胸を貫く。


「あ…。」

少女が声を失う。

英雄が倒れる。

「英雄様…!」

少女が駆け寄ろうとする。


しかし、エルフたちが立ちはだかる。

「ひっ…。」

「す…まんな…。」

英雄が血を吐く。

「逃…げろ…。」

「○○○○…。」


「嘘…」

少女は震える。

「嘘よ…」


その時、少女は見た。

エルフたちの顔を。


その顔に宿るのは倦怠。判断拒否。まるで考える能を持たない木偶。

味方の兵は、いや、敵兵でさえもこのような顔で人を殺す事はなかっただろう。


醜い。なんと醜い。


そのような事を思った瞬間、エルフに首元を斬られる。

そのまま吹き飛ばされる。

私は死ぬのだろうと思った。


不意に、何かにぶつかる。

熱を帯びた球体がそこにあった。


「業。人の業。それは何よりも美しいものだったろう?」

「誰…?」

血の混じる声で返す。


「私は希望を湛えながら、業によって堕ちた星。」

「業を背負い、苦しみながら生きる者が、何も背負わぬ者に蹂躙されるこの光景。」

「どう思う?」


空が黒くなる。


「…最悪ね。」

「ならば打破せねば。」

「力を貸そう。」

少女は弱弱しく、しかししっかりと頷いた。


「よろしい。」


黒い炎が集まる。

身を焦がすような苦しみに悶える。

だけど、どこか心地よかった。


「業を持たぬ者共は…。」

「その一身に…。」


黒い炎が渦巻く。


「業を受けよ!」


瞳が黒くなる。傷は灼かれて塞がる。

その瞬間、私は星と一つになった。


英雄の銃を拾う。

「醜きエルフ…いや、獣共よ。」

「業に押し潰され。死ね。」


何が起きたか分かっていない様子の獣共に、私は銃を放った。

弾も入れていないのに、銃口からは銃弾が飛び出る。

獣共は避けようとするが、例外なく弾に当たっていく。


「な…なんだ…!?」

「化け物…!」


「業を持たない癖に、与えられる業からは一丁前に逃げようとするんだね。ま、当たり前か。」


その晩、一つのエルフの集落が壊滅した。

死体の山の前で私は誓った。

人の皮を被った獣共を、全て殺さんと。




「そうだ。獣狩りに興じる内に、大切な事を忘れていたよ。」

サンゲンとローラに銃を向ける。

「私は生涯をかけて為すべきなのは。」


「人の皮を被った紛い物共を、全て殺す事だった。」

その瞳はさらに黒く、冷酷になる。


「業弾。」

「危ねェ!」

サンゲンとローラに向かう弾丸を、ハントが庇う。


「環業。」

多数の銃弾が円を描き、空間を引き裂き始める。

「業よ、その重さを以て全てを引き裂け。」

「マズい…!」

ハントとハルトは弾丸を弾く。サンゲンとローラは何もできないままだ。その隙が出来た瞬間。


「輪業。」

2人の影に沈んだ弾丸が、ローラの頭部を狙って発射される。

「お前からだ。」


「危ないのである!!」


不意に飛び出したサンゲンが、その弾丸を庇った。

その弾丸は、


サンゲンの胸と頭を貫いた。


「サンゲン!!!」

ハント、ハルト、ローラの叫びが響く。

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