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10話/業との邂逅

「数日中に殺害される、ねぇ…。」

そう思い、ため息をつく。

「面倒ごとがまた増えやがった…。」

あれから一日が経ったが、サンゲンもハルトも意識を取り戻さない。

現在のギルドの制度上、回復を待たねば行動を起こす事さえできない。


その晩、寮を出て一人で夜風に当たった。

面倒ごとを忘れて、風に当たるのも悪くない。


足音が鳴る。

気持ちの良い夜風が、一瞬で暗く、重くなった。

「…!」

「やぁやぁ、ハント君。」

「業星…!」

即座に臨戦態勢を取る。


「あはは、そんな敵対心を露わにしなくてもいいじゃないか。」

「今私は、君とお話しに来ただけなのに。」

「悪ぃが、俺はあんたに殺されるかも、って忠告を受けたばっかりでな。」


「安心してよ、そんな事しないからさ。そういや、初めて会った時、君は私に何か言いたげだったよね?」

「…。」

「言ってみなよ?」

業星が近づく。


出かかったおぞましい言葉を一度は呑み込む。

"何か"が歯止めを掛けようとしている。

それでも。


「協力、して欲しい。」

「へぇ?私に協力?」

業星が目を細める。

「俺の目的を果たす為には、多分お前の力が必要だ。だから、協力して欲しい。」

「ふーん…。面白い、乗った。でも、対価として…」

「対価として?」


「…共に業を生み出そうよ。本気の殺し合いをするのさ。」

「…結局、戦うハメになるってか。」

「良いんだよ。争いは無数の業を生む。私はそれを観測するのが大好きでね。」

「殺し合いの果てに君が立っていれば、私は全力で協力しよう。」

「殺されてやる気は無いって事か?その矛盾した言い方。」

「それは…そうだね。だって君たちに私が殺せるとは思わないし。」

「じゃ、交渉は成立って事で。でも君も今は本調子じゃないみたいだし。その内また連絡するよ。」

「…。」


再び軽い風が吹き込む。その中でひときわ、重いため息を吐いた。


それから二日後。

サンゲンとハルトが目を覚ましたとの連絡が入った。


「うむ!少々疲れは抜けないが…私は大丈夫である!」

「あはは、僕も大丈夫そうです。」

「いやいや、まだ傷だらけじゃねぇかよ…。」

「大丈夫ですよ、これしきの傷。なにせ、師匠との修行ではもっと酷い大怪我を毎日のようにして来ましたからね。」

「へぇ?師匠?」

「そうです、僕が一番尊敬している人なんです。人々を救う為に剣術を磨く、憧れの人なんですよ。」

「…人を救いたいって割には、容赦なさそうなんだが…。」

「まぁ、そのおかげで今僕は戦えてる訳ですし、今となってはありがたいですけどね。」

ハルトは素直な笑みを見せる。


それから数日が過ぎ、やがて二人の治療も終わった。

「おいおい、少し早すぎるんじゃねぇか?退院許可。」

「僕も少しはそう思いましたが…。まぁ、三人のお役に立てるのなら嬉しいです。」

「うむ!どうやら支部長本人が直々に許可を下したらしいのである!馬人族は耳も良いであるからな!」

「盗み聞きかよ…。」

「ま、いいんじゃない?二人とも元気そうだし。」


夜も更け、サンゲンが寝て、ハルトとローラも寝る支度を始めた頃。

「悪い、また夜風に当たりに行っていいか?」

「え?もちろん良いけど…。」

「じゃ、行って来る。」

ハントは奇妙な確信を持って寮を出る。


「…。」

夜の風が重くなる。夜空が黒く染まる。

「やぁ。また会ったね?」

黒い炎を纏った女が、再び現れた。

「さて、君のお友達も元気になったみたいだし…。」

「明日。明日、私とゆっくり話し合おうじゃないか。」

「君の寮の前に、朝、一番に来た鴉を追ってきてくれ。そうしたらきっと、私のもとに着くはずだから。」

「…待て。他の奴らは関係ないだろ。」

「業を生み出す人は多い方が良いだろう?お友達も連れて来てくれ。安心しろ。彼の生死は交渉に含めないから。」

「連れて来てくれないと…はは、業が実っている内にこっそり収穫しちゃうかもね?」

「てめェ…!」

「じゃ、そう言う事で。よろしくねー。」


黒い炎が立ち上ったかと思えば、夜の黒に紛れ、業星の姿はもう見えなくなっていた。


「あの野郎…。関わるのは俺だけで良いだろうが…。」

ハントはもう寝る気など起きず、寮の玄関で立ち尽くしていた。

万一にも鴉を見逃さないために。


「あれ?何をしているのだ?ハント君!」

朝一番に起きてきたサンゲンが呼ぶ。

「…寝る気が起きなくてよ。」

「むむ?まぁ、そんな日もあるであろう。私は久々に、日課の散歩に行って来るのである!」

「そうか。気を付けろよ。」

「ありがとうなのである!では、行って来るのである。」


鴉は、まだ来ない。


「あれ?ハントさん。何してるんですか?」

「昨日居ないと思ったら…何を玄関で立ってるのかしら?」

ハルトとローラが呼ぶ。

「…悪いな、昨日は。寝る気が起きなくてよ。」

「もう一つ。悪いが、遠出する準備をしておいてくれないか?」

「へぇ?それまたどうして。」

「とにかく。何か面倒な事が起きる予感がしてな。」

「…じゃあ僕たちは部屋に戻ってますね。」


鴉は、まだ来ない。


「む?まだいるのであるか、ハント君。」

「…。」

「一体何をして…。」

「!」

その時、サンゲンの後方から鴉が飛んで来るのが見えた。

「サンゲン!ちょっとここで待ってろ!」

「えっ!この後散歩後のリンゴを食べる予定なのだが…。」

「じゃあリンゴだけ取って玄関に戻ってろ!」


「ハルト!ローラ!悪いが少し遠出の時間だ。」

「えっ?何なんです?」

「…本当に何もかも唐突ね…。何なのかしら。」

そう言いながらも支度を終えていた二人は、ハントに同行する。

「この鴉。こいつについて行けば業星に会えると…そうだな…そういう情報を掴んだ。」

「えっ!?業星って…業星本人に!?」

「あぁ、そうだ。」

「それなら私とサンゲンを連れていく意味はあるのかしら?また役に立てない気がするのだけど…。」

「あー…できるだけ大人数で行け、と。そういう情報があったんだよ。」

「ほれはらばいははいりふうはないな!」(それならば行かない理由はないな!)

「そうそう。サンゲンもこう言ってるしな。とにかく向かうぞ!」


一行はいつの間にか山奥へ飛んで行っている鴉を追う。


「…こんなの、通ったことない道ね…。」

「本当にこの先、業星がいるのであるか?」

「あぁ。そのはずだ。」

「でも、こんな悪路だと…。それにこれ、迷ってしまうのでは…?」

「大丈夫なはずだ。この先を進んでいけば…。」


「!」

洞窟を抜けた先にあったのは、古びた研究室のような建造物だった。

「これは…。」


「やぁ。ちゃんと来てくれたね?」


黒い炎が、眼前で揺らめいていた。

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