表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

魔導機神ゴーレムファイト

作者: ぱいん

■ リリアンのゴーレム工房 夜


 工房内に眩い光が溢れ出している。

 光の中心部には焼き焦げた一人の男性、日野翔馬29歳の姿が。

 リリアンは驚愕しながら翔馬を凝視する。


リリアン「何かあたしのお家に香ばしい匂いのおっさんが現れた⁉」


〈時間は少し遡る〉


■ナレーション 【世界観】


〈魔法文明が発達した世界。イアン・カムス〉

〈現在、この世界では魔導ゴーレムの技術が発達し、様々な用途で魔導ゴーレムが用いられていた〉

〈かつて人型の魔導ゴーレムが主流であったが、今では四足歩行の獣型魔導ゴーレムが市場を独占しつつあった〉

〈しかし、魔導ゴーレムが研究されている錬金術師アカデミーにおいて、天才錬金術師と謳われながらも落ちこぼれゴーレムマスターと呼ばれた少女がいた〉

〈彼女の名をリリアン・バートン17歳〉

〈後に魔導ゴーレムの母と呼ばれることになる天才ゴーレムマスターである〉

〈しかし、未だに彼女の才能は開花することもなく、底辺を這いつくばっていた〉


■ 錬金術師アカデミー ゴーレム練兵所 昼


 人型のゴーレム・ファイターと四足歩行のゴーレム・ウルフが対峙している。

 ゴーレム・ファイターのマスターであるリリアンとゴーレム・ウルフのマスターであるブリックはお互いに制御盤を持ちながら試合開始の合図を待っている。

 審判である男性、ロイマン教授が現れる。


ロイマン教授「ゴーレムファイト!」


 その掛け声を合図に、リリアンとブリックは制御盤を操作し始める。


リリアン「行け! あたしのゴーレム・ファイターちゃん!」


 リリアンはそう叫ぶと、手に持っていた制御盤でゴーレムに攻撃の指示を出す。

 ゴーレム・ファイターは突進すると、大きな拳を振り上げる。


ブリック「回避しろ、ゴーレム・ウルフ!」


 ブリックの指示にゴーレム・ウルフは機敏に動き、ゴーレム・ファイターの攻撃を回避する。

 ゴーレム・ウルフは素早くゴーレムファイターの背後に回る。


リリアン「いけない! ファイターちゃん、逃げて!」


ブリック「ゴーレム・ウルフ、食い破れ!」


 ブリックの指令に従い、ゴーレム・ウルフはゴーレム・ファイターの後ろ首に食いつく。

 ゴーレム・ファイターはそのまま地面に押し倒されると、首を食いちぎられる。

 首を食いちぎられたゴーレム・ファイターは崩れ落ちると、そのまま土に還る。


ロイマン教授「勝負あり! 勝者、ブリック・レーン!」


リリアン「あ、あたしのファイターちゃんが……」


 がっくりと崩れ落ちるリリアン。

 そんなリリアンを蔑みの目で見るブリック。


ブリック「ふん、当然の結果だ。オレのゴーレム・ウルフが落ちこぼれの作った人型ゴーレムに負けるなど万が一にもあり得んよ」


リリアン「だ、誰が落ちこぼれですって⁉」


ブリック「リリアン・バートン、貴様以外に誰がいるというのだ? 全く、今時、人型ゴーレムを作るなど理解に苦しむ。人型が獣型に勝てる道理など無いというのに」


リリアン「そんなこと分からないじゃない! 次こそは勝って見せるから首を洗って待ってなさい!」


ブリック「次があればな」


リリアン「へ? それってどういう意味?」


 すると、リリアンの背後にロイマン教授が現れる。


ロイマン教授「リリアン・バートン、話がある。今から私の研究室に来なさい」


■ ロイマン教授の研究室


 驚きの顔で絶叫するリリアン。


リリアン「退学ですって⁉ それだけは許してください、ロイマン教授!」


ロイマン教授「残念だが、これは決定事項だよ、リリアン・バートン。君は実に優秀な生徒だが、それはあくまで一介の錬金術師として。ゴーレムマスターとしてはアカデミー以来の落ちこぼれであることは周知の事実だ。これまで機会は十分に与えてきたつもりだよ?」


リリアン「お願いします! もう一度チャンスをください! 次こそはあたしのファイターちゃんでブリックの奴をけちょんけちょんにしてやりますから!」


ロイマン「だから、何故、君は人型ゴーレムにこだわるのかね? 現在、魔導ゴーレムの主流は人型から獣型に完全に移行しつつある。私は再三、獣型ゴーレムを作るように忠告していたはずだよ?」


リリアン「だって、人型ゴーレムの方が格好いいじゃないですか⁉ 獣型なんて邪道ですよ⁉」


 リリアンは瞳を輝かせながらロイマン教授に詰め寄る。

 ロイマン教授は呆れたように深く嘆息する。


ロイマン教授「我がゴーレムアカデミーが研究しているのは戦闘用魔導ゴーレムだ。人型は建築用以外に需要は無い。あくまで人型ゴーレムにこだわるのなら民間の研究室に行くといい。君が選べる道は二つ。一般錬金術師コースに移籍するか退学のどちらかだ」


リリアン「それじゃダメなんです! あたしは戦闘用の人型ゴーレムが造りたいんです! お願いします。どうかもう一度だけチャンスをください! 次に結果を出せなかったら退学でも追放でもしてくれて構いませんから!」


ロイマン教授「なら、次の魔導ゴーレム品評会で優勝すれば退学は撤回する。それどころか人型ゴーレムの研究を正式に許可しようじゃないか」


リリアン「本当ですか、ロイマン教授⁉」


ロイマン教授「ああ、嘘はつかないよ。約束は守ろう」


リリアン「やったー! それでロイマン教授、品評会はいつでしたっけ?」


ロイマン教授「三日後だよ」


 そう言ってロイマン教授は不敵にほくそ笑んだ。


■ リリアンのゴーレム工房 夜


 工房内にある机でがっくりとうなだれているリリアン。


リリアン「ロイマン教授の陰険眼鏡野郎! 三日後の品評会なんてどう考えたって間に合う訳ないじゃない!」


 リリアンは怒声を張り上げた後、机を叩きつける。


リリアン「それでもやるしかないか……」


 リリアンは机の上に錬金粘土を置くと、素手でこね始める。

 そして粘土で人型ゴーレムの素体を作り上げる。

 しかし、出来上がった素体ゴーレムの出来は酷く、リリアンは思わずガックリとうなだれる。


リリアン「あたし、粘土細工以外の成績はオールAなのにな。粘土細工の才能が皆無なせいで完成した魔導ゴーレムの性能はいつもEランク。何処かにあたしの代わりにゴーレムの素体を造ってくれる人はいないかな……? 例えば造形師の神様とか」


 次の瞬間、工房の天井付近から眩い光が溢れ出す。

 突然の事態にリリアンは慌てふためく。


リリアン「突然何事⁉」


 すると、光の渦の中心部に焦げた服を纏った男性、日野翔馬が現れる。

 

リリアン「何かあたしのお家に香ばしい匂いのおっさんが現れた⁉」


 光が消え去ると、翔馬はそのまま床に落下して激しく衝突する。


翔馬「うぎゃあ⁉ な、なにが起きたんだ?」


 翔馬は周囲を見回し、不意にリリアンと目が合う。


翔馬「どうしてオレの家に女の子がいるんだ⁉」


 翔馬は大事そうにロボのプラモを抱きしめながら驚きの声を上げる。


リリアン「いやいや、ここはあたしの工房だから! 不法侵入者はおじさんの方でしょ⁉」


翔馬「なんだと⁉ って、本当だ。あれ? オレ、どうしてこんな所にいるんだ?」


 翔馬は動揺した様子で周囲を見回す。

 その時、リリアンの瞳に翔馬の持っているロボのプラモが飛び込んでくる。


リリアン「ああああ⁉ おじさん、それ!」


翔馬「うお⁉ なんだよ、いきなり⁉」


リリアン「それちょっと見せて! お願いだから、みーせーて!」


翔馬「ガンダリアンロボのプラモをか? いいけれども、壊すなよ?」


 翔馬はリリアンにプラモを渡す。

 リリアンは輝いた瞳でプラモを眺める。


リリアン「何て芸術的なフォルムかしら⁉ こんな凄いの初めて見たわ⁉ ねえねえ、これはおじさんが造ったの⁉」


翔馬「オレの名前は日野翔馬ってんだ。まだ29歳だからおじさんなんて呼ばれるような年齢じゃねえよ⁉」


リリアン〈いやいや、十分おじさんじゃん〉


 リリアンは苦笑を浮かべる。


翔馬「それより、ここは何処なんだ?」


リリアン「あたしの名前は青銅錬金術師のリリアン。そしてここはあたしの工房だよ?」


翔馬「工房?」


 翔馬は机の上に置いてあった残念な粘土ゴーレムを見る。


翔馬「ぶっさいくな粘土細工だな?」


 リリアンは翔馬の一言にカチンと来ると、怒りを露わにする。


リリアン「ぶっさいく言うな⁉ それはれっきとした魔導ゴーレムの素体なんですからね⁉」


翔馬「なんだ、それ?」


 翔馬は目を点にする。


リリアン「翔馬ってば魔導ゴーレムも知らないの? とんだ田舎者ね」


 リリアンは小馬鹿にしたかのような笑いを洩らす。

 翔馬は少しムッとしたような表情を浮かべる。


リリアン「知らないなら教えてあげるわ! 魔導ゴーレムってのはね、錬金粘土で作られた命ある自律型人形のことよ⁉」


 そう言ってリリアンは指を鳴らす。

 すると、工房の隅に置いてあった魔導ゴーレムが動き出し立ち上がった。


リリアン「これがあたしが造った魔導ゴーレム・ファイターちゃんよ⁉」


翔馬「か、か、格好いい!」


 翔馬は瞳を輝かせながら嬉しそうな声を上げる。


リリアン「そうでしょう、そうでしょう⁉ 翔馬ってば田舎者のくせに話が分かるじゃない。やっぱりゴーレムちゃんは人型に限るわ。獣型なんて邪道よ!」


翔馬「いやいや、獣型には獣型の良さがあるぜ?」


リリアン「なぬ⁉ お、おのれい。さては翔馬、あんたもあたしの敵ね⁉」


 リリアンはガルルルル! と翔馬を威嚇する。

 

翔馬「でも、やっぱり人型が一番良いよな⁉ それで、これ、どうやって作るんだ⁉」


リリアン「ふふん、なら特別に教えてあげる! まずは魔力のこもった錬金粘土で魔導ゴーレムの素体を造り、そこにこの魔導核を入れるのよ」


 リリアンはそう言いながら、机の上にあった粘土ゴーレムを持ち上げると、ビー玉のような形をした魔導核を中に入れる。

 

リリアン「そうしてこの魔力貯水槽の中にゴーレムの素体を入れた後、一晩寝かせると魔力水を吸い込んだ素体が大きくなって、それに魔力を注ぎ込めば魔導ゴーレムちゃんの出来上がりってわけ! どう? 簡単でしょう⁉」


翔馬「要は魔法で作ったロボってことだな⁉」


リリアン「ロボ? それって何なの?」


翔馬「リリアンが持っているプラモのことだよ。正式名称はガンダリアンロボ・パラディンってんだ」


 リリアンはハッと何かを思い出す。


リリアン「そうそう、翔馬! お願いがあるの! どうかそのプラモをあたしに譲ってください!」


翔馬「藪から棒になんだよ?」


リリアン「実は魔導ゴーレムの性能は最初に作る素体で決まってしまうの。残念なことにあたしにはほんの少しだけ粘土ゴーレムを造る才能が無くって。だからそのプラモをゴーレムちゃんの素体の代用品にしたいの! お礼は可能な限りするからどうかお願いよ!」


翔馬「何をそんなに必死になっているんだ? よければ理由を聞かせてくれ」


リリアン「実は……」


 リリアンは事情を翔馬に打ち明けた。

 翔馬は神妙な面持ちでリリアンの話を聞いている。


翔馬「次の品評会で優勝出来なければ退学か……その陰湿眼鏡、最低だな⁉」


 翔馬は憤慨した様子で言う。


リリアン「だから翔馬の協力が必要なの! お願い、力を貸して!」


 その時、工房のドアがノックされる。

 二人はドアに視線を向ける。リリアンの表情は焦燥に引きつる。


翔馬「お客さんか?」


リリアン「やばい! 翔馬、ちょっと隠れていて! 異性を、しかもおっさんを工房に入れたのがバレたら即退学になっちゃうの!」


 翔馬は慌てて近くの物陰に隠れる。

 それと同時に工房のドアが開かれ、ブリックが入って来る。


ブリック「失礼する」


リリアン「ブリック⁉ あんた、何をしに来たの⁉」


ブリック「退学が決まったと聞いてな。それならば借金を返してもらおうか」


リリアン「いやいや、まだ退学と決まったわけじゃないし! 借りていたお金はアカデミー卒業まで待ってくれるって約束だったじゃない」


ブリック「退学撤回の条件が三日後の品評会で優勝なのだろう? ふん、もはや確定事項ではないか」


リリアン「勝負はやってみないと分からないでしょう⁉」


ブリック「そこで相談だ。借金だが、チャラにしてやってもいいぞ?」


リリアン「へ⁉ ほ、本当⁉」


ブリック「ただしこの街から出ていくことが条件だ」


リリアン「何ですって⁉ そんなこと出来るわけないじゃない⁉」


ブリック「なら借金を返せば良いだけの話だ。正直、オレは貴様の様な落ちこぼれと同じ空気を吸うのも虫唾が走っているんだ。目障りな貴様が消えていなくなるなら安い買い物だ」


リリアン「ふふん、もう一つ良い方法があるわよ?」


ブリック「ほう、言ってみろ?」


リリアン「あたしが品評会で優勝して、その賞金であんたに借金を返すのよ⁉ どうだ、参ったかこの野郎!」


ブリック「不可能だ」


リリアン「だから、やってみないと分からないでしょう⁉」


ブリック「貴様が人型ゴーレムにこだわり続ける限り万が一にも勝ち目は無いと断言しよう。ただし、貴様が今からでも獣型ゴーレムを造ると言うのであれば話は別だ。1%くらいは可能性があるかもしれんぞ?」


 そう言ってブリックは鼻で笑って見せる。


ブリック「オレの提案を拒否するならそれでも構わん。ただし、品評会で優勝出来ず借金を返せなかった場合は分かっているんだろうな?」


リリアン「もちろん分かっているわよ! んで、具体的にはどうなるんだっけ?」


 ブリックは呆れた眼差しをリリアンに送る。


ブリック「契約通り、お前を奴隷商に売り渡す。端金にしかならんだろうが、貴様の面を見なくて済むなら金を回収出来なくても問題は無い」


 ブリックは「ではな」と言い残し去っていく。


リリアン「アカンベー、だ! おとといきやがれってのよさ!」


 すると、話を聞いていた翔馬が現れる。


翔馬「リリアン、今の話は本当なのか⁉」


リリアン「どうやら優勝出来なかったら、あたし、奴隷確定みたいっす。ど、どうしよう……」


 リリアンは今にも泣きそうに涙ぐむ。


翔馬「お前、知らずにあんな啖呵を切ったのかよ⁉」


リリアン「だ、だって……ブリックのうんこたれが人型ゴーレムをバカにするからつい……」


翔馬「ついで人生を破滅させるんじゃない!」


リリアン「うわあああん! 奴隷は嫌ですう! 翔馬、何とかしてよ!」


翔馬「会ったばかりの人間を頼るな。ま、仕方ない。このまま見捨てても寝覚めが悪いから協力してやるよ」


リリアン「え⁉ ということは……?」


翔馬「オレのガンダリアンロボを譲ってやるよ。でも、錬金粘土とやらを使わなくても魔導ゴーレムは造れるのか?」


リリアン「そこは大丈夫。要は魔力のこもった材質を使えばいいだけだから」


翔馬「それ、ただのポリスチレンだぞ?」


リリアン「いや、このプラモからは凄い魔力を感じるわ。まるで製作者の魂が乗り移っているような感じがする」


翔馬「じゃあ、そのプラモで魔導ゴーレムは問題なく造れるのか……ふむ」


 翔馬は何かを思いついたっかの様にほくそ笑む。


翔馬「リリアン、一つお願いがある」


リリアン「え? 何か嫌な予感がするけれども……」


翔馬「別に難しいことじゃない。ただ……」


 翔馬はリリアンにとある提案を持ち掛ける。

 それを聞いた次の瞬間、リリアンの驚きに満ちた声が響き渡る。


リリアン「翔馬、それ、本気なの⁉」


翔馬「本気も本気さ。可能か?」


リリアン「いや、出来るけれども……それ、何の意味があるのよ⁉」


翔馬「意味はある。それがロマンだからだ!」


 そう言って破顔する翔馬を見て、リリアンは呆れ返った表情を浮かべた。


■ 錬金術師アカデミー ゴーレム練兵所 昼


〈三日後、魔導ゴーレム品評会当日〉


 練兵所には大勢の観客と審査を務めるアカデミー教授達がいる。その中にはロイマン教授の姿もある。

 フィールド内には9体の魔導ゴーレムとその横にゴーレムマスターである生徒達の姿が。その中にはリリアンとブリックの姿もある。

 ブリックが用意した新型の魔導ゴーレム・タイガーに周囲から注目が集まっている。

 リリアンの魔導ゴーレムには白いシートがかけられている。

 それを見たブリックは嘲笑を浮かべながらリリアンに話しかける。


ブリック「落ちこぼれ。性懲りもなくまた人型ゴーレムを造って来たのか?」


 すると、リリアンは自信に満ち溢れた瞳でブリックを見る。

 

リリアン「ええ、そうよ。でも、いつものじゃないわ。世紀の大傑作を造って来たからお楽しみにね⁉」


ブリック「ほう、それは楽しみだ。オレもお前を徹底的に潰す為に新型を用意してきてやったぞ。その名も魔導ゴーレム・タイガーだ。以前のウルフタイプとは性能が雲泥の差だ。攻撃力、防御力、機動力、全てにおいて最強クラスの性能を実現出来たのだ。貴様のゴミの様な人型など足元にも及ぶまい」


 すると、リリアンはブリックの魔導ゴーレムを見てプッと噴き出す。

 ブリックは不快感をあらわに目をしかめる。


ブリック「何が可笑しい?」


リリアン「いやいや、弱い犬程よく吠えるものだなって思って!」


 ブリックの額に青筋が浮き立つ。


ブリック「品評会は各性能テストの後、トーナメント方式で試合が行われるのは知っているな? オレに当たるまでせいぜい足掻くことだ。まあ、オレと当たったが最期、貴様の人型など粉微塵にしてくれるがな」


 すると、ロイマン教授が前に出ると、品評会開始のアナウンスを始める。


ロイマン教授「これより第259回魔導ゴーレム品評会を行う!」


 それから、品評会が開始される。

 

【攻撃力試験】


 フィールド内に巨大な魔石が配置される。


ロイマン教授「まずは攻撃力試験だ。各自、魔石に全力で攻撃をしなさい。ダメージは色で判定され、白→青→黄→緑→赤→虹の順に攻撃力は高くなっていく。最低でも黄色程度は目指してもらいたいものだな」


 ロイマン教授はそう言ってリリアンを一瞥する。

 そうして試験が開始される。

 一番手は魔導ゴーレム・キャット。口から魔力砲が放たれる。魔石が表示したのは黄色。

 周囲から歓声が上がる。

 そうして次々と生徒達は魔石に攻撃を仕掛ける。しかし、どれも黄色どまり。

 次に出て来たのはブリックの魔導ゴーレム・タイガー。

 タイガーは直接鋭い爪で魔石を攻撃する。ダメージ判定は虹色。


観客達「おおおおお⁉ 凄い! 最高の虹色判定だ!」


ロイマン教授「フフ、流石はブリック・レーンだ。アカデミー以来の天才と称されるだけのことはある」


ブリック「ふん、当然だ」


 ブリックはリリアンを一瞥すると、ふん、と鼻で笑う。


ロイマン教授「さて、最後はリリアン・バートンだな。一つ言っておく。万が一にも白判定が出た場合、君は即失格となる。理由は分かるな? 君は優勝以外に道は無いのだ。一つでも最低点をとった場合、それで終わりだ」


リリアン「はい、それで構いません! だって、あたし、百%優勝するんで!」


 リリアンはそう言って魔導ゴーレムのシートを剥ぎ取った。

 

リリアン「ご覧ください。これがあたしの魔導ゴーレム・パラディンちゃんです!」


 そこに現れたのは白銀の鎧に身を包んだ騎士型の魔導ゴーレムだった。

 全身から神々しいオーラを放ち、そのフォルムの美しさに誰もが言葉を失い見惚れる。

 それを見たブリックとロイマン教授ですら一瞬、言葉を失い目を奪われていた。

 しかし、次の瞬間、パラディンの腹部にいる日野翔馬の姿を見て、誰もが絶句した。


ロイマン教授「リリアン・バートン⁉ あのゴーレムの腹部にいる男だ何者かね⁉」


 パラディンの腹部はコックピットになっていて、そこに翔馬が座っている状態。


リリアン「彼はパイロットです」


ロイマン教授「パイロット? それは何かね?」


リリアン「魔導ゴーレム・パラディンちゃんは腹部に人間が乗り込み、直接操縦するように造られているんです。彼は、日野翔馬は操縦者として協力してもらっています」


●リリアン回想 三日前


翔馬「リリアン、ゴーレムの腹部にコックピットを造ってくれ。それが協力する条件だ」


リリアン「コックピットって何?」


翔馬「操縦席のことだ! オレはロボのパイロット、操縦者になるのが子供の頃からの夢だったんだ!」


リリアン「ゴーレムちゃんに乗って直接操縦するですって⁉ それ、何の意味があるの⁉」


翔馬「一言でロマンだな」


 そう言って翔馬は破顔する。

──回想終了。


 ブリックは激高した様子でリリアンに怒鳴りつける。


ブリック「ふざけるな⁉ ゴーレムに直接乗り込んで操縦するなどと、そんな間違ったことを認めるわけにはいかないぞ⁉」


リリアン「あれあれ? 魔導ゴーレムに直接乗り込んで操縦したらいけないなんて規則、ありましたっけ?」


ブリック「規則は無い。だが、それが常識だ!」


リリアン「ふん、やっぱりだ。ブリック、君ってば、本当につまらない奴だね? がっかりだよ」


 リリアンは憐みの眼差しでブリックを見る。

 ブリックは額に青筋を浮き立たせると、殺気だった眼光を発する。


翔馬「おーい、リリアン、そろそろ始めてもいいか?」


リリアン「うん、翔馬、遠慮なくやっちゃって!」


 翔馬の乗る魔導ゴーレム・パラディンは剣を抜くと身構える。

 そして、一気に魔石を斬り付けた。

 次の瞬間、魔石は真っ二つに切り裂かれ、粉々に砕け散った。

 あまりの出来事に、周囲の者達は絶句した。


ブリック「なん、だと?」


リリアン「あれあれ? もしかしてあたし、何かやっちゃいましたぁ?」


 リリアンはニヤニヤしながらブリックを嘲る。

 そして、防御力と機動力の試験もリリアン達は圧倒的大差をつけて首位をキープした。


ロイマン教授「では、最後に試合を行う。だが、ブリック、リリアン以外の生徒が棄権した為、これを決勝戦とする!」


 リリアンとブリックはフィールド内で対峙している。


ブリック「落ちこぼれが。いい気になるなよ? 今までの性能試験はただのお遊び。戦闘能力こそがゴーレムの全てであることを思い知らせてくれる!」


リリアン「ブリック。御託はいい。あんたもゴーレムマスターならゴーレムファイトで力を示しなさい。少なくともあたしはそうするよ」


 睨み合う両者。


ロイマン教授「ゴーレムファイト!」


 試合開始の合図と同時に、両者の魔導ゴーレムは動き出した。


ブリック「ゴーレム・タイガー! デッドハウリングを放て!」


 タイガーはパラディンに対し、口から強烈な魔導砲を放つ。

 パラディンはそれを盾で防ぐ。ダメージはゼロ。


ブリック「ならダイレクトアタックだ! 人型の首を食い破れ!」


 タイガーは一瞬でパラディンの背後に回り込むと、鋭い牙で噛みつこうとする。

 しかし、パラディンは素早く反応し、剣でタイガーの牙を防いだ。


ブリック「バカな⁉ 人型が獣型に反応出来るわけがない!」


リリアン「ブリック、違うわ。パラディンちゃんは人型ゴーレムじゃないわ」


ブリック「何だと⁉」


リリアン「パラディンちゃんは人型の進化系、騎士型ゴーレムよ! しょせんは獣。武器や防具を身に纏った騎士には勝てるわけないでしょう⁉」


 リリアンの言葉と同時に、パラディンはそのままタイガーの口を切り裂き、そのまま首を斬り落とした。

 そうして、タイガーは全身が粉々に砕け散ると、そのまま土に還った。


ロイマン教授「勝負あり! 勝者、リリアン・バートン!」


リリアン「やったあ!」


 敗北したブリックは憔悴した様子でがっくりとうなだれた。

 戦いに勝利した翔馬はコックピットから出て来る。

 

●翔馬 回想

■現実世界 会社からの帰宅 夜

 翔馬はとぼとぼと疲弊しきった様子で歩いている。手には新品のプラモが入れられたビニール袋を持っている。


翔馬「明日は二か月ぶりの連休だ。久々に思いっきり新作のガンダリアンプラモを造ってやるぜ」


 しかし、家に帰ると自宅が火事になっていた。

 翔馬の脳裏に部屋に飾ってある何十体ものプラモの姿が過る。


翔馬「うわあああああああ⁉ オレのプラモが!」


 翔馬は燃え盛る自宅に突入すると、一番お気に入りだったガンダリアンロボ・パラディンを掴み上げる。

 その時、天井が崩れ落ち、翔馬は瓦礫の下敷きになって絶命してしまった。

 すると、翔馬は暗闇の世界に浮かんでいた。

 そこに女神が現れ翔馬に話しかけて来る。


女神「日野翔馬……貴方は来世では何を望みますか?」


翔馬「思いっきりプラモを造りたい。可能ならロボのパイロットにもなりたい……!」


女神「その願い、叶えて差し上げましょう」


 次の瞬間、翔馬はリリアンの工房に転移した。


──回想終了。


 コックピットから降りて来た翔馬に、リリアンが飛びついて来る。


リリアン「翔馬、ありがとう! おかげで奴隷にならずに済んだわ⁉」


翔馬「リリアン、一つ問題が起こった」


リリアン「どうしたの⁉」


翔馬「酔った。ごめん、朝ご飯、全部リバースします」


 蒼白した翔馬は口から朝食を全てリバースする。

 それをもろに顔面に直撃されるリリアン。

 リリアンの絶叫が木霊した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ