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E2:敵討ち

いろいろごたついていて投稿が遅れてしまいました。

「はぁ…死ぬとこだったにゃ…」


 水中からなんとか這い上がり陸地へとたどり着く。どうやら地底湖のような場所だったようだ。


「にゃー…全身びしょびしょで寒いにゃね…生活魔術くらいならいけるかにゃ?」


 濡れて肌に引っ付いている衣服を念の為脱ぎ、床に並べる。

「赤は炎。暖かく包む陽の光は全てを包む光となる。陽光(フラッシュフレア)


 水分を吹き飛ばす魔術『陽光』。生活魔術と呼ばれる戦闘に不向きな魔術は効果を発揮する。


「このぐらいの魔術なら私でも発動できるにゃね。」


 あとは私が乾けばいいにゃね。

『魔装』


 体中を覆うように魔装を発動させる。いつもは力の大半を足と腕に使っているが今回は全身にいきわたらせる。暖かい焔に肌が照らされあっという間にカラカラだ。


 「しかし何層なんだにゃ?ここ。相当落ちたはずだからにゃぁ…」


 このダンジョンの構造がわからないから何とも言えないが少なくとも二層ではないだろう。3~5ってとこかな?大幅な短縮に喜ぶべきなのかはぐれたことに嘆くべきなのか…まぁ後者だろうけど。


 まぁただこんなに落ちたおかげで迷わなくて済むね。ソロでダンジョンの階層を一人で登っていく。それも合流する場所も決まっていない状態で。そんなのは無理だ。だからこの場にとどまるか先へ進むかしか私に選択肢はない。ただとどまっているだけでは私は死ぬ。水はあるが食料がないこの中じゃせいぜい生きれて二日?三日?それまで待つ?無しだろう。はぐれて合流が絶望的な以上は先へ進むしかない。…小夜ならきっと大丈夫だにゃ。私より強いし、水も食料もある。私という足枷がなければきっと攻略できる。私がたとえかなえられなくてもきっと。…


 こういうことを考えるのはやめたほうがいいね。


「とにかく先へ進まなきゃ。ここにいても仕方がないね。」


 しかし暗いなここ。一層や二層も暗かったがここに比べたらまだ明るいほうだね。暗視込みでもそこそこ暗い。ここまで暗いとちょっと見ずらいかな。


 ただ幸いにも一本道。暗さで迷う事はない。なんて思ってたけど…


「分岐路か…どうするかにゃぁ…」


 2分の一…まぁ当たったらラッキー程度にしておこう。とりあえず右の道から行こう。…?

 何か左の方から音が聞こえるにゃね。何かを引きずるような音。この感じは…


 落ち着いて体制を取り左の道へと視線を集中する。何か引きずった音を立てながらこちらへ来ていたものは細長い生物だった。


「蛇の魔物か…厄介にゃね。」


 ひとまず様子を見て…!?はやっ!


 3mはあっただろう距離は一瞬でかき消された。瞬きをする間もなく接近してきた蛇は私へと一直線にとびかかってきた。首元へ飛んでくる牙に反射的に腕を割り込ませ、なんとか致命傷をさける。


「いたいにゃね…でもお返しにゃ!」


 腕にかみついている状態の蛇にこぶしをふるう。その瞬間まるでひものように体をひねくり回し私の攻撃を回避してみせた。

 

「やっぱりよけられる!」


 蛇特有の細長い体。素早い動き。私の攻撃では捉えるのは困難だろう。だから二匹で攻める。


「『魔装:解除』召喚(サモン)『焔獅子』!」


 真っ暗な洞窟に光源が現れる。全身がくすんだオレンジ色で鬣は燃え盛り、体中に焔をまとっている。


「ふーた!地面を燃やして!」


「ガゥ…」


 ふーたと呼ばれた獅子は鬣を広げ前足を地面に突き立てる。


 足元から湧き出た炎がまるで波のように地面を覆っていく。数秒もたたないうちにあたりは火の海へと姿を変えた。


「キシャァ!」


 足場がなくなり焦っているのか蛇が私からふーたへと狙いを移す。私に噛み付いたようにまっすぐ直線に飛ぶそのさまはまるで弾丸のようだ。だけどその動きはもう見てる。


「攻撃をよけられるなら攻撃に当たりに行かせればいい。」


 首筋に飛びついた蛇に触れたのは獅子の毛皮でなく焔の刃だった。顔からものすごい勢いで飛び込んだ蛇は串刺しにされ牙だけが残り灰へと消えていった。


 いくら素早いといっても何もない空中では動けない。はじめからこいつは首だけを狙ってきていた。そういう魔物なのだろう。なら道に剣を置いておけばその軌道を制限することができるだろうと踏んでいたのだが…まさかそのまま突っ込んで死ぬとは恩てなかったにゃ…

 まぁラッキーでも勝ちは勝ち。先へ進むとしよう。


 代り映えのない洞窟を進んでいく。いや代り映えという表現は正しくない。一層と比べてしっかり景色が変わるし、水晶の配置などが様々で変わってはいる。ただ何かこの景色に違和感がある。何が適切なんだろう?


 …見飽きたというのが正しいかな?どこかこの景色を知っている気がする。同じようなものを見た感じがする。ここもそうだ。記憶には無いが体がこの場所を知っている。具体的な事は思い出せないが体はここを覚えている。


 動く体を頼りに道を進んでいく。先に進めば進むほど体だけでなく記憶のほうでも覚えがある。そんな通路もやがて一つの終わりへとたどり着いた。

 開けた空間。壁一面はほんのり光る水晶に覆われていて幻想的な光景だ。


 だけど私はそう思わない。ここをみて思うのは恐怖と焦燥と後悔だけだ。


 まっすぐ見つめるのは空間の奥。体長3mほどの体。小夜と初めて出会ったミスとウルフのような狼がたたずんでいる。最も似ているのはシルエットのみであり、姿は全く似ていない、

 全身が白みがかった水晶になっておりゴーレムと言われても疑わないほど非自然的な見た目だ。…忘れもしない特徴的な見た目だ。

 

「お前が…お前を倒すために私は!!」


 私がママ達と最後に見た景色は水晶の爪が迫ってくる景色だった。何度夢に出て、怖くて、憎たらしくて、届かなくて。そんな思いは終わらせられる。今この場で終わらす!


「『魔装』『戦闘気(バトルオーラ)』『焔気(フレイムオーラ)』『焔追突(フレイムドライブ)!!!」


 赤い焔が直進する。一瞬で距離を詰め放ったその攻撃は確かに狼の足に命中した。だが手ごたえはまるでない。


 「見た目通り硬いにゃね。」


 割と本気では放った一撃だが大したダメージはないかのように奴はぴんぴんしている。

 攻撃されたというのに動かずこちらを見下ろす様はまるで、『お前の攻撃は効かない。』とでも言っているように見えて非常に腹が立つ。


 ただそんな余裕を持っていられるんも今のうちだ。感触的に装甲のみが硬いと見た。それだけなら簡単に終わる!


 こちらを見下ろすだけで何もしてこない巨狼の顎下あたりに跳躍する。油断している今がチャンスだ。まずはこのくそったれな顔を潰す。


「『重撃』!」


 格闘技『重撃』効果は極めて単純な防御の絶対貫通。格闘のみに許された最強の技は今。無敵の結晶に泥をつける。


「グルァァ!」


 完全になめている相手に放ったそのこぶしは一見何もできていないように見える。だがそれはその後に響いた遠吠えにより否定された。

ダメージを食らったことに驚愕したのか一瞬で距離を取り離脱し始める。殴られた個所を何度も確かめ確かに自分の走行が破られたことを認めたらしい。先ほどまでの態度とは打って変わってこちらをにらみ始めていた。


「たかが一発程度で情けないにゃね!かかってこいにゃぁ!」


 挑発に乗ったのかは知らないが、動き始めたのは狼だった。得意なのは防御だけでないらしい。その巨体に見合わない速度で急接近してくるとともに爪を私へと振るう。

 最も対処はたやすいが。


「『墳槌』」


 格闘スキル『墳槌』効果は攻撃の相殺。どの方向のどんな攻撃でも力が拮抗して入れば相殺する防御スキル。巨体のふるう攻撃が小さい獣の一振りで止まる。そうなったら隙だらけだ。


『重撃』


 空中で不自然に止まった狼の爪へ受けた逆の手で攻撃する。防御を貫通するその一撃は確実に足の一つを破壊した。


「グゥゥ…」


 足をやられて焦っているのか取り乱すように距離を取る。ただその動きに先ほどまでのような速度感はなくフラフしている。


 足を潰した顎もつぶしたはず。さぁ次は何をする?次の行動を注意深く観察し相対する。


 沈黙。お互いに見つめあう意味のない時間。ただ憎悪が蓄積されているだけの時間。そんな時間を破った行動は後ろに振り向け走り出したことだった。


「なっ、逃げたにゃ?お前が?」

「逃がすかぁ!赤は焔『赤鎖』!」


体の内から出てきた怒りが魔術の制御を上げる。感情のままに放った魔術は後ろに退避しようとしたヤツの足を捕縛する。


「これで!ん゛にゃっふ゛」


 腹部にものすごい痛み。慌ててみてみれば地中から生えてきた水晶に吹き飛ばされたらしい。無防備な体制で空中へとなげだされてしまった。

 これを狙っていたのだろう。とらえていたはずの鎖を簡単に破りこちらへと飛んでくる。完全な空中で回避することもできない私は迫ってくる爪に突き刺される自分を見守ることしかできなかった。



 まぁ大方狙い通りだけどね。

体に刺さるはずの爪が体をすり抜ける。魔拳士のスキル『闘心の構え』の本質は攻撃の置換だ。本来肉体が受けるはずのダメージを発動中すべて魔力に肩代わりさせる。肩代わりできるダメージというのは肉体の損傷も含まれる。要するに


「攻撃はすり抜ける!」

 

 私を攻撃したときに伸ばした腕。それさえあれば勝利への道は決まっている。狙うは一直線。敵の胸部!


 「そんな分かりやすい弱点見逃すはずないにゃよ!『焔炎破貫(ボルカニックショック)』」

 

 胸の奥に見える赤い光に向けて一撃を放つ。出せる中で最も強いその一撃は、仇を取るために磨かれてきた技術はその胸に届き衝撃を与える。


 結晶の巨狼は灰となって消えていった。


「倒した…のかにゃ?」


 魔物の匂いも気配も感じられない。魔物が死ぬと起こる灰化現象…間違いない…


「倒せたんだ…仇を取れたんだ!」


 これで終われる…私の目標がついに…


「ミーニャ!!」


 ん?今誰か私を読んだかにゃ?…嬉しくて幻聴でも聞いたかにゃ?


「ミーニャ!!」


 気のせいじゃない…この声は!


「小夜!」

 声がする方へ振り向けば小夜がこちらに向けて走ってきている。何やら焦っているようでその表示は何かに必死だ。特に追われている様子は無いしどうしたんだろう?


 あぁもしかして一人で戦ってた私を心配してくれてたのかな?やっぱり小夜は優しいにゃね。


「大丈夫にゃよ!仇は取れたんだにゃ!全部終わったんだにゃ!」


「ミーニャ!。〜〜」


 最後の方が何言ってるか聞き取れなかったにゃ…なんて


「ミーニャ!後ろ!!」


 後ろ?何が…


 ・・・・・・


 

 …?地面がこんなに近いんだにゃ?何が……寒い…‥終わったんじゃないんだにゃ?


「ミーニャ!しっかり!…そんな、今回復薬を!プロード!」


 回復薬?そんなのいらないにゃ。だって私はピンピンして…


 ?なにか暖かいものが手についたにゃ?


 手を持ち上げ視界へと運ぶ。そこに見えたのは血まみれた手だった。

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