蝿の悪魔
ギリギリ間に合った…
「これで...ラスト!」
投げられた魔力のナイフは外れることなく最後の1匹となった蝿へと命中する。
『熟練度が一定に達しました。スキル投擲lv.1を獲得しました。』
おっスキルゲット。ラッキー。名前的にも...うんうん投げたものが当たりやすくなるスキルか。あって困ることはないしうれしい収穫だね。
「やるにゃね!小夜。よくわからいけどすごいにゃ!」
「それほどでもないよ。それにしてもあの魔物何だったんだろう?初めて見たよ。」
「んーみゃーも初めて見たにゃ。新種の魔物かにゃ?」
新種ねぇ…それにしてはあの水晶攻撃随分とこのダンジョンらしいこうげきだな。このダンジョンの固有種と見た方がよさそうだよね…あの特徴的な大きい羽音が聞こえたら気をつけないと。そうそうちょうどいまなっているような大きい羽音…はおと…おろ?
「にゃにゃ!またあの魔物にゃ。小夜!任せたにゃ!」
「任された!投擲!」
さっきの戦いからさらに4回ほど蠅が襲ってきたが無事にすべて撃ち落とすことができた。パターンも同じで動きも単調。しょうじきやりやすかったね。投擲もLv.2になったしちょっと得した気分。...
しかし静かだ。さっきまであんなにしつこく襲ってきた蠅たちも来なければトカゲやモグラもどきとも接敵しない。30分もだ。何かおかしい...罠とかかな?
そう考えながら歩いていれば先ほどまでとは明らかに違う異常なものを発見した。それは道幅が狭くなっており、そのおくには何か空間のようなものが確認できた。
「何かある…行ってよう!。」
何があってもいいように細心の注意を払いながら空間を覗く。
先程までの通路とはちがい半径30mほどの円形の部屋だ。何か置いてあるとかはなくただひたすらに広い広間。体育館みたいだな。
「ほんとに来たのカ。よく来たな人間どモ」
そういって現れたのは人型の何かだった。ゴブリンなどとは違い人とは確実に違うおぞましい見た目。見ているだけで何か潜在的な恐怖…嫌悪感のほうが近いかな?
2mほどの体に筋肉質な肉体。顔は蠅のようになっていて四つの複眼がこちらを不気味にとらえている。
「蠅の...魔物?人の言葉をしゃべるなんて信じられないにゃ!」
「俺様を魔物なんかと一緒にするんじゃねぇ!俺様は悪魔だ!二度と間違えるな人間!」
悪魔…いるんだこの世界。魔族に悪魔に...そのうち天使とかでてきそうだな...
「しかしお前ラどうやってあの蠅どもを突破したんダ?人間が、しかもお前らレベルでは何とかならないやつだと思うんだけどナ。俺の知らない通路でもあったかナ?あり得るナ。あとで調査しなくてハ。」
蠅ども…ってことはこいつが親玉ってわけか。でも悪魔がなんでこんなところに?
「んで…その悪魔さんはここで何してるの?私たち次の階層に行きたいんだけど…通してくれるかな?」
「先へは行かせなイ。俺の役目ダ。」
「だよねー。じゃぁ押し通らせてもらう!」
初手投擲。魔力で作ったナイフを挨拶と同時に投擲する。
ただ、よまれていたのか攻撃は地面から発生した結晶の盾に防がれてしまった。
んー失敗失敗。もうちょっと前の段階で投げるべきだったかな?
「不意打ちとは人間はやることが汚いナ。だが…『万象:結晶世界』!」
万象?確かダンジョンの魔族が使ってたやつだな。...何も起こらないけど…
しばらくの静寂が巻き起こるがそんなものは一瞬でなくなる」。
「小夜‼足元見るにゃ!足元!」
足元?どうしたんだろ?ってやばいやばい!
ミーニャに言われ足元を確認すると、さっき襲ってきた蠅の攻撃のように足元から徐々に結晶が体を覆うように広がっていた。
食らってしまってはいるようだけど問題ない。先ほどと同じように『吸魔』を使い足の結晶をそぎ落とす。ミーニャについていた結晶もだ。
しかし今のなんだ?今のが敵の魔法の効果なんだろうけど…何を食らったのか全然わからなかった。見えない攻撃?それにしては
魔力も何も感じられなかったけど…まぁこのダンジョンのことだし魔力が察知できないこともあるだろう。それに幸い結晶化の攻撃は私の『吸魔』で無効化できる。
「なるほどその剣で無効化しているのカ。なかなかやるみたいだナ!」
「ッつ!?」
目の間にある結晶を刀で切り落とす。今の一瞬で結晶を投げられた。しかも視認がギリギリの速度で...こいつ強いな。 それなら
「こいつならどう?『水精の...』」
「馬鹿メここでは魔術は使えないと同義!」
『悪戯』!
「ナ!」
「よそ見は禁物にゃぁ!?」
引っかかったな!魔法が使えないなんて100も承知だ!これは単なるおとり。真の狙いは後ろから狙っていたミーニャの攻撃を当てさせること!まずは一撃!...ってあれ?
「嘘にゃ!防がれた!?」
今のは確実に入った!魔力が動いた感じもない。なのになんで防げた?魔法やスキルじゃない何か?それとも事前にシールドを張っていた?考えられるなら後者だけど…
「俺に常に防御魔術が張られていル。小細工は無駄ダ。」
答え合わせありがとう!つまるところあのシールドを突破しないとそもそもダメージが入らないってことだ!うん、厄介!
「にゃるほど防御魔術か…まずいにゃね。小夜?魔法以外で防御を破れるすべもってない?」
「一応あるけど効くかわかんない。」
「あるなら十分にゃ。隙を作るから検証よろしくにゃ」
『「万象:結晶世界』」
またそれか!...やっぱり何されたかよくわかんない!でも対処はできる。
作業のようにへばりついた結晶をはがし落とす。『吸魔』さまさまだなぁ…
「やはり防がれる厄介だナ。まずは獣のほうからやるのが正解カ…魔物ども!獣のほうを殺せ!」
1,2,3.…さっきの蠅の魔物がいっぱい…こいつの配下だったのか。。
「ミーニャ!魔物は私がやるからそっちは!」
「いや、小夜のその力がないとあれには勝てないにゃ。魔物は私が引き受ける!そっちは頼むにゃ!」
了解だ!
「こっちは終わったにゃ!そっちの状況は!」
「いいことと悪いことが一ずつ!良いことはあのシールド割と簡単に無効化できる!」
「悪いことはなんだにゃ?」
「武器の耐久値がそろそろやばい。」
先ほどからずっと使っていた紅月の残り耐久値は1500。まだまだあるように見えるけど全然足りない。
ここまで吸魔を使った経験がなかったからきづかなかったが『吸魔』にも代償がある。武器の耐久値が100減るのだ。つまり残り15回しか使えない。実際は戦闘でも減るから13回ぐらいしかないだろうけど。
なにはともあれこの剣を失ったらあのよくわからない魔法に対抗できる力がなくなる。早めにけりをつけないと、ってもう!またあの魔法…残り耐久値1300もう悠長にしてられないな。
「ミーニャ。私に合わせて!」
気合の制御で『暗黒幕』を発動する。半分暴走しているともいえるその魔法はあたり一面を濃い闇で覆いつくしすぐさま消滅する。
ただ一秒。やつの視界をふさげたならそれで充分!
「残りの耐久値全部もっていって!『吸魔』!!」
最後の耐久値を消費して『吸魔』を発動する。暗闇にまぎれ視界の弧を突くように肉壁し結界を無効化する。
耐久値が0になった紅月は刃が粉々に砕け散り敵を屠ることなく散っていく。
...ありがとう紅月。
「武器の耐久値がきれたようだナ!」
「私の武器はこれだけじゃないからね。さっきの攻撃をまた忘れたの?ミーニャ!」
「これで終わりにゃ!『焔獣の鉤爪!」
防御魔法のない悪魔の体に重い一撃が入る。すべてを燃やし尽くしチリへと変えるその一撃が入る。これは誰から見ても絶対だった。
『$%*&$▲$#”$』
衝撃。殴りかかっていたミーニャの体が瞬時に吹き飛び壁へと激突する。それだけでおわらず手足の先から覆うように増えていく結晶が瞬く間にミーニャの体を覆い柱となった。
「ハァ…ハァ…人間ごときに奥の手を使わされることになるとハ…忌々しイ」
「今のは...!?ミーニャ?」
「安心しろまだ死んではいないサ。まぁお前を殺した後あの獣も殺すけどナ。」
「それとも殺さずにあの結晶のままでとっておこうカ?一生の辱めをうけて生きながらえるんだゼ」
「ミーニャ!」
まだ死んでいないなら救える。けど剣が…『吸魔』が…
…なんで剣は刃だけ砕けた?なんでなんで柄だけのこっている?…精霊眼
?表示されてる項目が増えてる?それにスキルも?
『紅月
攻撃力0/100 耐久力500 魔力伝達度-
<スキル>
吸魔 (ストック:魔結晶1300/5000) 魔法伝達 自動回復EX 生成』
吸収した魔力生成…刃とは別にある耐久力…そういうことか…
馬鹿じゃん私。自分の武器の本当の使い方も知らないで...あほ過ぎる…
「はぁ...」
「死ぬ前にため息とハ。無様なものだナ」
「さぁこれで終わりダ。『万象」
「お前の攻撃を防いだ能力は『吸魔』という。相手の魔力を使用する攻撃を吸収し、無力化するそういうスキルだ。」
「…何を言っていル?」
「こいつで吸収した魔力は私に還元されることもなければ消えることもない。この刀の中に蓄積されるんだ。」
「ここで1つクイズだ蠅。この蓄積された魔力は何に使えるんだろうねぇ!?」
「『万象:結晶世界』!」
「遅い!お前の敗因はとっとと私を殺さなかったからだ!『刃生成:魔結晶』!」
大地を伝い世界を結晶へ塗り替えんとする事象が身を襲う。ただその事象は身体に届くことはなく一つの剣に、刃に収束する。
「生成完了。結晶刃!」
半透明な刀身はどの角度から見ても輝く宝石のように。そのサイズが人の腕ほどでなければアクセサリーといっても差支えがないほど美しく磨かれている。その刀身からはうっすらと霧のよう何かが立ち込めており、膨大な魔力が周囲へと漏れ続けていた。
毎秒1の耐久減少…なるほど長くはもたないのか。だけどいまはこれで十分!
新たに作り上げた刃で蠅野郎に肉壁する。こいつは戦い方といい、シールドといい被ダメを明らかに恐れてる。そういうやつは対外本体が脆いに決まってる!
「ッチィ人間ガァ」
蠅もどきは近づかれるのが嫌なのか距離を取ろうと後ろに下がっている。まぁそんなことさせないけどね。
「な!?これハ!」
刃を作り上げた瞬間から仕掛けていたものを発動させる。血魔法『血鎖』。蠅の足についた私の血を接続部に発動する。このダンジョン内では魔力が過剰になり制御しにくくなっているが物質をもとに発動する血魔法ではその影響をあまり受けないみたいだ。
距離を置こうにも動けない。お得意の魔法やシールドは吸魔で対処可能。こっちの耐久値は十分。チェックメイトだ、
「これで終わり!はぁぁぁ!」
結界も防御もない今度こそ無防備になった首に結晶の刃が迫りゆく。一度は防がれた刃は再度防がれることはなく獲物を切断した。




