水晶迷宮1
今回もお話メインになってしまった上、投稿が大幅に遅れてしまいました。。。。ごめんよ。
次回からは冒険します。
ひしゃげて動かない左足を動か無しながら叫ぶ。
どうして…と。
そんな叫びなど意味がないと言わんばかりに襲い掛かってくる魔物を血塗られたナイフで突き刺す。魔物から逃げ、逃げれず戦い、一歩また一歩進むたびにほころんでいく。酷使された左足はもう原型がないほどの肉塊となっているがそんなことは気にしない。気にできない。
止まったら死ぬ。その言葉だけを胸に暗い洞窟を一心不乱に進む。
一歩足を動かす度気絶してしまうほどの激痛が体中を駆け回る。痛みで落ちる涙なんてとうに枯れ果てた。痛みで叫ぶ喉なんてもう無い。あるのはボロボロの体と一本のナイフ。それでもまだあきらめない。前に進み続けなければならない。明るい朝日を、光を求めて。
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「まってにゃー」
黒いしっぽをぴょこぴょこしながら黒猫の少女はこっちへやってくる。それを聞いていても動かす足は止めない。むしろ早くなる。
「まてないよ。だって終わらせるんでしょ?『泥猫』を。」
時は三日前、私がミーニャを連れもどしたところから始まる。
「ミーニャはどうしてダンジョンの場所を隠してるの?」
これは聞かなきゃいけない事だ。私は何と言われようとミーニャの味方になるつもりだしこのままでも構わない。でも、それでもミーニャの悪名を無くせるならそっちのほうがいい。私にとってもミーニャにとっても。だかダンジョンをどうにかできれば良いのだけど…
「…私の手でダンジョンを攻略したい。ただそれだけにゃ。」
ダンジョンを攻略したいかぁ…
「だから十分な実力がつくまで訓練「じゃぁ一緒に攻略しない?」…話聞いてたにゃ?」
何言ってんだこいつ…みたいな冷めた目でこちらを見てくる。やめてよ別にちゃんと話は聞いてたんだからね!
「うん。聞いてたよ。訓練するんでしょ。だから一緒にダンジョンに潜ろうよ!」
「話がかみ合って無いにゃ…ダンジョンに入ったら生きて帰ってこれる保証はないにゃ。だからどんな危険があっても大丈夫なくらいにまで強くなる。潜るのはそれからだにゃ!」
んー言葉足らずだったか。
「いや、その強くなる訓練をダンジョンでしない?」
「どういうことにゃ?」
「別にそんな変な話じゃないと思うんだけどさ、ダンジョンに入ってしばらく魔物を倒す。そうする間にちょっとずつマッピングしていって危なくなったり物資が尽きたら転移結晶で帰る。そうやって訓練すればダンジョンの攻略だって進められるし強くなれる。一石二鳥じゃない?」
「それダンジョンの攻略と何が違うんだにゃ?ダンジョンっていうのは小夜が思ってるより危ないんだにゃ!甘く見ちゃいけないんだにゃ!」
確かに…ダンジョンって本来は一回とかで踏破するもんじゃないしな。私の時が例外中の例外だったのかもしれない…
「でも危ないのは地上だって一緒でしょ?それとも危なくないの?危険じゃない場所で戦って訓練になるの?」
「それは...」
私がダンジョン探索を勧める理由はこれが一番を占めているかもしれない。別にこの世界地上だって危険がないわけじゃないのだ。ダンジョンとは長い時間をかけて魔力が空間を歪ませて現れる構造物のことを指す。その中は多くの魔力で満たされており、外に比べて同系統の強い魔物がわくことが多いそうだ。
だけど地上だって強い魔物が湧かないわけじゃない。別にどこだって危ないのだ。
それなのに外が危険ではないうのなら外の魔物じゃ相手にならないって事だ。そんな奴と戦って訓練なんて意味は無い。だからこそ危険なダンジョンが最も早く強くなれる方法だ。少なくとも私はそう確信してる。
「でも…それでもダンジョンは危険なんだにゃ!小夜には分からにゃいにゃ!」
「分かるよ。ダンジョンが危険なのは私だってよく知ってる。痛い目にあったからね。ほらこれ」
そういって私は左手の義手を外してみせる。この義手仕組みはよくわからないが簡単に外れるのだ。私が取ろうと思ったら簡単に外れる。それでいて普段は外れる気配すら見えない。どんな不思議テクニックでそうなってるかはわからないがとりあえず取り外しは可能である。
「嘘…その手義手だったのにゃ…全然気が付かなかったにゃ…」
ミーニャの目が広がり驚愕に染まった後、一瞬で気まずそうな顔へと変わる。ちょっぴり失礼な事をいい過ぎたと気づいたらしい。
「その…悪かったにゃ。けどそれなら小夜だってわかってるはずにゃ!ダンジョンが危ないところだって!それにゃのになんで...」
「進まないと意味がないからね。立ちどまったって何も変わらないよ。少なくとも私が痛い目にあった時はそうだった。」
「そうかにゃ…小夜は強いにゃね。でも強くても人は死ぬにゃ。」
「私の両親はダンジョンで死んだにゃ。どっちも強い冒険者でいつもみゃーのあこがれで...自慢の両親だったにゃ。でも、そんな人もあっけなく死んだにゃ。私が勝手について行ってダンジョンに入って...私が転移結晶を使ってる間私を守ってくれたにゃ...」
「パパもママとも手をつないでたにゃ。なのに街に戻ったのは私一人だけ。...転移結晶は装備物以外の物を転送できない。私に笑顔で声をかけてた両親はもう死んでたんだにゃ…」
「だからもうダンジョンで誰かが死ぬには御免にゃ!小夜だってそうにゃ!危ない目に合わせるわけにはいかないにゃ。」
「私だってミーニャが死んだら悲しいよ?」
「それは…」
「私はミーニャが死ぬのは嫌だしミーニャは誰かが死ぬのは嫌。だから二人でダンジョンを攻略しようよ。私とミーニャで。」
「…でもダンジョンは…危ないんだにゃ…」
弱々しく掠れた声で彼女はそう訴える。彼女にとってダンジョンは絶対的に触れてはいけない危険な物なんだろう。
それでも優しいから…逃げずに誰かが死なないように一人で全部背負い込んで…一人で悪役になろうとしてる。そんなのだめだ。ミーニャを変えないと…前に進ませなきゃ…
「ねぇミーニャ?冒険者にとって一番大切な物はなんだと思う?」
ミーニャはなぜそんな質問をするのか?とでも言いたさげにこちらを向いてきょとんと首をかしげている。...可愛いな。
「強さ…かにゃ?」
強さ。確かに戦う職業である冒険者には欠かせないものだ。でもそれは振れ幅が大きいし最悪上限がある。一番大切なものは他のものだ。振れ幅があるけどそれは絶対値の振れ幅じゃない。突きつけて覚悟を決めれば決めるほど上がる要素。
「大事なのは想いだと思うんだ。前に進む想いが。」
「想い?そんなのじゃ何も解決しないにゃ。精神論だけじゃどうにもならないそれが現実にゃ。」
「うーんそうかな?私はそうは思わないよ。」
「人の行動は本能と想いで決まってるってどっかの教授がいってたんだけどさ、実際そうだと思うの。もし私が逃げよう、痛いことはやめよう。帰りたい。そんなことを思っていたらきっとダンジョンは攻略できなかった。ダメージを負ったあの時、これが現実なんだって感じた時私はそれでも前に進もうと想った。だから私はここにいる。」
「それに比べてミーニャはどう?確かにダンジョンを攻略したい気持ちはあるだろうけどそれよりもっと強い感情があるんじゃない?例えば…恐怖とか」
「…そうにゃ確かに私はダンジョンが怖いにゃ。危険だから入らないのもそうだけど一番の理由は怖いからにゃ。」
「どうしようもなく怖いんだにゃ....お母さん達の命が消えたあの感じが…死ぬのが怖いんだにゃ…」
震えてすすり泣く姿がまるで母と離れた子猫に見えた。いや実際そうなんだろう。最初にあったときや一緒に戦ってる中で大人に見えていたけどもしかしたら 私より幼いんじゃないか?
そんな子を放っておくのか?問題を後回しにして生きる方法を選ばせるのか?嫌そんなんじゃだめだ。私の異世界生活にそんな事はあっちゃいけない。私がそんな事実を許せない。
なら私には何ができる?怖くて殻に閉じこもっている猫を救って一緒に歩むにはどうすればいい?…そんなの一つしかないはずだ。
「私が寄り添うよ。ミーニャが怖いんなら私がそれよりもっと大きな想いでミーニャを引っ張るよ。英雄幻想だろうが理想の追求だろうが誰かを助けたい気持ちだろうが復讐心だろうが、それらを全部私が受け止めて前に進むよ。」
手を差し伸ばし手を引き上げる。
「この手は離さない。だから私の手を取って。ミーニャ!」
「…信じていいにゃ?私を引っ張ってくれるにゃ?」
「約束するよ。」
と、言うことがあって今私たちはダンジョンに向かうべく山道を歩いていたってわけ。何があっても大丈夫なように色々な準備をしていたら三日もかかってしまったけどまぁ問題があるとすれば…
やっぱり…気のせいかな?けどなぁなんかなぁ…
「どうしたにゃ。さっきからきょろきょろ周りを見て?」
「いや…なにか…見られてる気がして…」
そう私が答えるとミーニャは少し目をつぶりちょっとした後、大きく目を見開き明るい声で答えた。
「大丈夫だにゃ!辺りに変な魔力反応はないし音も匂いもない。誰かがついてきてるなんてありえにゃいにゃ。視線は鳥かなんかじゃないかにゃ?」
「そう…そうかもね。」
少し納得がいかないが反論しても意味がないのでそう返事をする。
...そうなのだ。さっきから何か見られてる視線を感じる。それなのに周囲には人らしき魔力は一切感じられないし、何かが隠れているようにも見えない。ミーニャもそういってるし間違いはないんだと思うが…やはり何か視線を感じてしまう。これがただの勘違いで見ているのは野性の生物だったらいいのだけど…
そんな疑問を心に止めつつ山道森をひたすら進む。その後1時間ほどのハイキングをし、私の疑問など無かったかのように目的の場所へとたどり着いた。
「ついたにゃ!ここがダンジョン『水晶宮』の入り口にゃ!」
そういってミーニャが立ち止まった場所は断崖絶壁の壁だった。ほかに何かないのかと辺りを見渡すがあるのはただの木々だけ。何かの門や入り口、洞窟でもないただの場所がダンジョン…?
「ねぇミーニャ?ほんとにここなの?ダンジョンがあるようには見えないんだけど…」
「だよね。普通はそう見えるにゃ。ただここらへんに魔力を流すと…こうなるにゃ!」
そう言ってニーニャが身体を壁に擦り付けると幽霊船のように中へすり抜けていった。どうやら本当にダンジョンがあるようだ。どうやって見つけたんだこれ…
その疑問は置いておいてひとまず私も某魔法使いの駅のように壁をすり抜けてみる。なんか大丈夫ってわかっても顔を壁にこすりつけるのはちょっと怖いな。
お、ほんとにすり抜ける…不思議だなぁ…
岩の中をくぐるという体験をほんの少しした後に空間は現れた。エレベーターぐらいの空間だ。それに目の前に何か亀裂のようなものがある。それも空中に。
「もしかしてこれが…」
私のぼそっと吐いた疑問にミーニャが答える。
「そうにゃ。これがダンジョンの入り口である空間の割れ目にゃ。」
これが…前と見た扉とは違う自然のダンジョン…
私がぼーっとダンジョンの入り口を眺めているとふと気づいた。偶然だった。岩がやけに明るく光っていることを。後ろが何故か暖かいと…そう気づいたときにはもう手遅れだった。
「⁉危ない!ミーニャ!」
とっさの反応だった。後ろに熱い熱量ともの凄い魔力。振り向けば感じる「死」の気配。きっと最適解は魔力で壁を作るか魔法の壁を出すことだったんだろうけど焦っていた私にはそれができなかった。できたのはミーニャにとびかかり後ろに下がっただけ。...ミーニャと一緒にダンジョンに逃げ込むだけだった。
ダンジョンに駆け込むと同時に視界が暗転する。この感じは2回目だ。黒い景色は段々と姿を変えて行きダンジョンが姿を表す。
「これが水晶迷宮....きれい?…」
水晶迷宮と名のつくだけあってあたり一面は水晶で覆われていた。壁、天井、床すべてが青味ががった美しい水晶でできておりここがダンジョンなのだと忘れてしまうほど幻想的な光景だ。それに全ての水晶に強い魔力を感じる…この感じ魔石とか転移結晶とかに近い感じだ…
本当にダンジョンか?ここ。
ひとまず周囲に危険は無さそうだね。ダンジョンに入って速攻罠から魔物!ってならなくて良かったよ…
「小夜!大丈夫にゃ!?」
私と同等周囲を確認していたミーニャが声をかけてくる。
「うん。大丈夫だよミーニャ怪我はない?」
「小夜が庇ってくれたお陰で無傷にゃ。ありがとにゃ!」
「…ここがダンジョンで間違い無いんだよね?」
私がそう尋ねるとミーニャは黙って頷いた。一応考えられる最悪のパターン、ダンジョンではないどこかに居るってのは無いみたい。まぁ無事にダンジョンには入れたな…
「ミーニャ?背後から急に魔法を撃ってくるようなやつに心辺りはない?」
「そんな奴に心辺りは無いにゃ。小夜は?」
「私もー」
まぁそうだよね‥一体何だったんだ?ていうかアレ人の仕業か?魔力反応も無かったしそれはミーニャのお墨付き。
だとすると罠だって考えたほうがいいか?でもなぁ…何かつけられてた感じはしてたしなぁ…
「小夜?とりあえずどうするにゃ?このまま探索を続行するか一旦戻るか?」
そうだね…探索は流石に危ないかな?魔法を撃ってきたやつが人なら追ってこないとは言えないしねぇ…安全策で戻るべきだね。
「危ないし1度撤退しようか。転移結晶はちょっともったいないけどねぇ…命のほうが大事だし。」
「そうにゃね。じゃぁ手をかしてにゃ....」
「ミーニャどうしたの?」
腰に手を伸ばしたミーニャが急に固まる。固まりつつその顔は段々と暗くなり青ざめていく。
「ミーニャ!?大じょ「無い…無いにゃ!転移結晶が、アイテムが入ったポーチが!」へ?」
「無いってどういう?」
「そのままの意味にゃ!下げてたポーチの紐だけが残って…先が焦げてる?まさかさっきのでそんにゃ!?」
肩を震わせ顔を青ざめミーニャがその場にへたり込む。転移結晶が無いって…私達戻れないってこと?
転移結晶
ダンジョンから最も近い魔力周波の着地地点に転移できる魔石型のアイテム。冒険者ギルドが販売していて詳しい仕組み等は分かっていない。
分かっていることとして、パーティー内で一つまでしか持てない、空間魔法等で作られた空間に入れられない、触れている生物とその装備物以外を一度に転移できる。




