チンピラのボス
「須郷…君?」
「あ?誰てめぇ。」
思わず口に出てしまった。あれは間違いなく私の知る須郷晟だ。私のほかにも日本から来た転生者がいた。この情報が知れたのは大きい。これだけで今日あった事件の不快感を帳消しにできる。
こうなるとあっちの状況が知りたいな。どこで目覚めてどうやってここまでやってきたのか。ほかにも転生者がいるのか。聞きたいことは山ほどある。ただ状況がなぁ…
現在あっちとこちらは敵対中。素直に話をしても聞いてくれるだろうか?どうだろう?無理な気がするけどなー…まぁ悩んでっても仕方がないな。いうだけ言ってみよう!
「私小夜だよ。柊小夜。日本で一緒のクラスだった!」
「…」
よかった覚えてみるみたい。これで話を…
「俺様の知ってる柊小夜はそんな白髪野郎じゃないんだがな?なぜその名前を知っている?お前何者だ?」
そうだった!!私こっちに来てから髪色と髪型が変わってるんだ!それに日本だと前髪が結構長めで目元が隠れてるから顔まで覚えられてないかも。声だってほとんど話してないから覚えてないだろうし。
となると今の私はどんな印象でしょうか?A.日本のことを知っていてクラスメイトを名乗る怪しい敵。うん私だったら斬るね。
「まぁどうでもいいか。とりあえずぶっ潰す!」
「小夜!」
私が考え事をしている瞬間に戦いは始まった。須郷君の大剣が私に向かって一直線に振り下ろされ、それをミーニャが拳で防ぐ。
ありがとう!助かった!とりあえず短剣を抜き戦闘態勢に入る。パーティー様様だね、ミーニャがいなかったら今頃私の首とんでるよ。
「いきなり攻撃とは…随分激しいね…」
「いきなり攻撃だぁ?何言ってんだお前。ここはもう戦場だ。いつ攻撃されたっておかしくないぜ?」
これは...その通りだな。同郷相手だからって油断していた私が悪い。この世界での油断は死を意味する。これは何度だって私の身で体験したはずだ。この危機意識の薄さを何とかしないとね。
「ごめんミーニャ。完全に油断してた。」
「謝らなくいていいにゃ!パーティーってのはこういうもんにゃ!」
「…ありがとう。」
さて、私の油断で先手は取られちゃったわけだけど…この後どうしようか?状況としては私たちは不利。敵が周囲を囲んでいるうえにここ敵の本拠地だからね。増援とか来てもおかしくない。
こなると逃げるのが一番いい手なんだろうけど…それはしない。
敵が私たちを探してる以上逃げても逃げても追ってくる可能性がある。そんなことになったらこれからの生活に多大な影響が出る。それはだめだ。それに…情報がほしい。だから真っ向から戦う。実力でねじ伏せる。
戦況が不利だ?戦力差がある?そんなの関係ない。私の冒険は格上との戦いの物語だ。ダンジョン、魔族、機械…ずっと格上と戦ってきた。それなのにこの状況い程度で逃げてどうする?
ただ相手の人数が多いだけだよ?こんなところで逃げてちゃこの先きっとやっていけない。
私の、柊小夜の物語はきっと挑み続ける物語だ。そんな気がする。
「ミーニャ、私は真っ向からこいつらに勝負を仕掛ける。戦力差は分かってる。でも、行かなきゃいけない気がする。だから…一緒に戦ってくれない?」
「もちろんにゃ!みゃーと小夜なら楽勝にゃ!」
さぁ勝負だ!逆転劇見せてやる!
火蓋を斬るにはちょうどいい魔法がある。暗黒魔法Lv5『暗黒幕』内容は周囲の光を遮断し夜を呼ぶ。周囲を暗くするだけの魔法だし自分目線も真っ暗だから普通に使ったら微妙な魔法だと思う。
ただ私は吸血鬼。ミーニャはねこ。お互いに夜目が効く!これなら一方的な目くらましといて使える!
「な、なんだ!周りが真っ暗に…ぐぁ!」
「お、おい!どうしたんだ!クッソ何も見えなぐほぉ!」
「あ、なんだこの鳥…おいなんか点滅してるぞこいつ!にげ…ぐぁぁ!!」
暗黒幕発動後一分くらいかな?闇は消え去り日が帰ってくる。その光に照らされて見える光景は2匹と一羽と一人。あれだけいた敵の軍勢はたった一分で地に伏せている。
...うーん…こんなにうまく行くとは思ってなかったなぁ。人数的に何か策がないと無理だって分かってたからこそのこれなんだけど案外あっさり行けたね。
探知系スキルとか魔力読まれたら位置バレバレ多くやれて半分だと思ってたけど…蓋を開けてみれば全滅。実力足りてないんじゃないの?このチンピラ集団。さっきあんなに覚悟決めたのが馬鹿みたいな結果だよ。
「…真っ向から勝負を仕掛けるんじゃなかったのか?」
「仕掛けたじゃん。別に搦手を使わないとは言ってないし。」
「っは!違いねぇな。」
意外と冷静だな。普通仲間が全員やられたら驚くなり、慌てるなりすると思うんだけどねぇ。余程の自信があるのか?それともただ単に冷酷なだけ?…わかんないな。
「さて、須郷君のお仲間はみーんないなくなっちゃった訳だけどまだやる?2対1でこっちが有利だけど。」
「カスみてぇな奴がくたばったところで俺様には関係ない。俺様だけで十分だ。お前らをやる分にはな。」
「さっきから思ってたんだけど須郷君って俺様キャラなの?恥ずかしくないそれ?」
「うるせぇよ!」
須郷君が大剣を振るう。それだけで地面に亀裂が入り、地が揺れる。剣を斬っているというよりたたきつけているといったほうがいいのだろうか?乱雑な攻撃をこちらに何度も繰り返している。
「ッチ、ちょこまかと...」
「渡しばっかり見てていいのかな?ミーニャ!今!」
こちらに剣を振り下ろしたタイミングでの背後からの攻撃。タイミング的にもよけられるはずもなく焔の拳は男の頬へと命中した。
「にゃぁ!?」
「効かねぇよ!」
確かに拳は届いたが焔の拳は届かなかった。何が起こった?何かのスキル?当たる直前に焔が霧散したきがするけど…
「ミーニャ?そっち目線どうだった?」
「うーん…わからにゃいにゃ…」
攻撃があまり入らず離脱してきたみーにゃが不思議そうに首を傾げる。本人目線でもよくわからないのか。それなら私が考えても仕方がないね。
「おらおら!どうした?攻撃してこねぇのか!?」
そう煽りながら火球を何発かこちらに放ってくる。厄介だね。こっちは魔法が使い物にならないのにあっちは平気で使ってくる。厄介で強い戦い方だ。
「赤は炎。燃え盛る炎は全てを焼き尽くす現象。赤を解明し、辺りを燃やし尽くす炎となれ!『エリアファイアー』!」
半径一メートルほどの巨大な楕円の炎がこちらに向かってくる。ギリギリよけられないこともないけどよけたら倒れてる人に当たっちゃう!
とりあえずなんか防ぐ盾…えーっとこれだ!『水霊の盾!』
炎が当たるすれすれで展開された水の盾がぶつかり合う。蒸発しつつも水の盾はしっかりと人々を守ることに成功した。...ギリギリでだしたから髪先がちょっぴり焦げちゃったけど。
「自分の仲間でしょ!それを巻き込む攻撃をするなんてどうかしてるよ!」
「倒れてるbotどもなんて知ったことか。俺のために死ねるんなら本望じゃないか?」
日本から来た転生者とは思えないぐらいクズな思考だな。人の命をなんだと思ってるんだ?ここは紛れもない現実なんだよ?それをゲームの中のnpcみたいに…
「にゃぁぁ!!」
「効かねぇよ!!おら!」
「グッハ!」
「ミーニャ!」
再度焔をまとって攻撃したミーニャ。やっぱり焔は須郷君に触れただけで消えちゃうみたい。
「そろそろうざいし仕留めるか...」
あ、まずミーニャが危ない!食らえ『暗黒槍』!
結構魔力を込めて撃った。そんな魔法も触れた瞬間に霧みたいに消えていく。なるほどこんな感じに消えていくのか。...まてよ?
このかんじ…前にも見たぞ。ダンジョンでロボたちが使ってた魔法の無力化。あれにもの凄く似ている。もしかして同じやつか?とりあえずミーニャに伝えなきゃ!
「ミーニャ!たぶんあいつには魔法が効かない。魔力が由来しているスキルや攻撃も全部!」
「にゃぁ!?そんなことがあり得るにゃ?モンスターでもあるまいし…」
「そうだ!俺様のスキル『現象還元』はあらゆる魔力の攻撃を無効化する!お前ら魔術師だな?俺様には届かないぜ?」
「そんにゃ…」
現象還元…あれこれもしかしてロボについてるスキルでは?ってことは精霊魔法なら通用するのでは?…魔法が効くのなら余裕では?よし効かないと油断しているところで初手ぶっぱしよう。
霊装状態じゃない今の私で使える一番強い精霊魔法は...これかな。
イメージするのはシャボン玉。大きな球体で触ったらはじけるような感じで...
全身の魔力を全部使う勢いで魔力を流し込んでいく。これだけ大量の魔力を流していれば感覚でわかるみたい。ミーニャも須郷君もこっちを驚いた様子で見ている。
「にゃぁ?魔法が効かないんじゃなかったにゃぁ?なんでそんな大きな魔法を..」
「おいおい?話を聞いてなかったのか?それともあれか?強い魔法だったら通用するかも?みたいな甘ったるい考えでも持ったか?まぁやるだけやってみればいいさ。無駄だがな。」
ご注意ありがとね!でもその舐めプが首を絞めるんだ!構築完了!わたしのありったけ!
「水霊ノ悪戯!!」
一見するとただの大きなシャボンだま。ふわふわ浮いているだけでなんの影響もない泡だ。でも泡ははじければ水しぶきが飛ぶ。圧縮された膨大な質量がもの凄い勢いで吹き飛んだらどうなるか?
答えは簡単。砲弾のようにもの凄い威力になる!
「糞…が…」
余裕を持っていた須郷君の顔が驚愕に染まった後苦痛に変わる。絶対的な自信を持ってたのにそれを破られたうえでの大ダメージだ。死にはしないだろうけどメンタル的にも体力的にももう動けないでしょ。
うん。案の定気を失ったね。舐めプするからそうなるんでしょ!っへ!




