E1:白髪の少女
「太一!そこ変われ!」
俺の合図とともにデカ蜘蛛の攻撃を受け止めていた太一が後ろへと下がる。
狙うは足の関節!剣技発動『シードスラッシュ』!
騎士たちとの訓練で身につけた渾身の剣技を放つが硬い装甲に弾かれる。剣がぶれて関節に当たらなかったからだ。
「すみません。うまく当たらなかったみたいです。」
「大丈夫だ。落ち着いて動けよ?焦ったら焦るだけ剣筋がブレる。落ち着いて振るんだ。」
「ガイアさん!こいつ硬すぎないっすか?!」
前線で構えている太一が愚痴を零す。
「こいつはモンスターの等級的にはBランクだ。今のお前達じゃぁ苦戦するのは当たり前だ。変わってやるからひとまず嬢ちゃんから回復魔術を受けな!」
そうして後ろに下がってきた太一に委員長が治癒魔術をかける。
「緑は生命。祈りを射止めて癒やすは自然の現象。緑を解明しかのものの傷を癒やせ。ハイヒール」
「ありがとよ。香澄。」
「いいのよ。私は何もできてないし。せめて魔術で援護できれば良いのだけど。」
ガイアさんいわくこの蜘蛛は高い魔術耐性を持っていて至近距離で撃たない限りだいたい弾かれてしまうらしい。委員長が魔物に接近するのは危険なのでこうして回復に専念してもらっているのだ。
「そんなことないよ委員長。回復してくれるだけでも充分ありがたいよ。」
「そう?ならいいけど。」
「お前ら等!ぼさっとしてないでとっとと攻撃に移れ!あ、ヤベ『ジャストパリィ』!俺だってずっと持ちこたえれる訳じゃないからな!」
「「はい!」」
にしてもこいつ厄介だな。近距離はその巨体と牙を使った攻撃中遠距離は魔術や矢を無効にする装甲に糸。付け入る隙がない。おまけにこの巨体であの素早さ、せめて動きを止められればいいんだけど…
「おい竜ボッサとしてるとガイアさんがやばいぜ?おい!早くしないと穴に落とすぞ!」
穴に落とす…? そ れ だ!
「ガイアさん策があります。その蜘蛛を誘導することは出来ますか?」
「あぁ?別に出来るが一体何をする気だ?」
「穴に落とすんですよ。」
「!なるほど。確かに良い案だな。その作戦乗ったぜ!」
「それでは俺のいる方向に誘導してください!」
「おうよ!」
俺は委員長や太一を連れ来た道を引き返す。罠はこっちにあったはずだ。
「委員長。今からガイアさんが魔物を連れてこっちへ来ます。あそこにある罠の上に乗ったタイミングであの床に全力で魔術を放ってください。」
「なるほど。そういうことね分かったわ。」
罠の位置に到着し暫くすると大きな地響きとともに2つの影が現れた。
「お前ら!連れてきたぞ!」
肩や足に多少の傷があるもののピンピンしているガイアさんと、ガイアさんに言い様にやられているのが気に食わないのか、激昂した様子で追いかけている巨大蜘蛛だ。
「委員長今!ガイアさん退避を!」
「よし。」
「赤は炎。燃え盛る炎は全てを焼き尽くす現象。赤を解明し、かのもののを吹き飛ばす剛破となれ!『エクスファイアー』!」
爆炎。ダンジョンの通路が一瞬赤に染まった後に見えた景色は大きめの穴にすっぽりハマって身動きが取れない巨大蜘蛛魔物の姿だった。
「良くやった嬢ちゃん!成功だな。ナイス作戦だ竜!」
作戦はうまくいったみたいだ。この位置なら委員長の魔法も俺達の剣も届く。
「さて、あとはこいつを倒すだけだな。一応最後まで油断はするなよ!」
「つ、疲れた…」
「まさかこんなに強い魔物と戦うなんて思ってもなかったっすよー」
「魔術が効かないのは厄介だったわ。」
「まぁお前らは今後魔族と戦うんだろ?それに比べちゃこんなんまだましだぜ?」
「ガイアさんは魔族と戦った事あるんですか?」
「あるぞ。移動しながらでいいなら語るぜ?」
ガイアさんが言うに魔族とは魔物と人を足して割忘れた強さらしい。高い身体能力と高い魔力。おまけに人にはない種族進化という力で研鑽を積めば積むほど強くなれるそうだ。
ただ自分達が強いと言う事を盲信しているせいで搦手や不意打ちで案外楽に倒せるそうだ。どれだけ強くても油断しかしていないから倒せない事は無いそうだ。なんだか残念な種族だな。
ガイアさんの魔族についての説明を受けている間に俺達は開けた空間へと辿り着いた。
そこは他とは壁の造りが違うドーム状の部屋だった。
「ここは...おそらくボス部屋だな。」
ボス部屋か。確かにそれっぽい部屋だし床にある焦げた跡や穴…後血痕。おそらく誰かが戦ったであろう場所だ。
「ココがボス部屋だとしたらたぶんあの見えている扉が宝の間の入り口だな。」
ガイアさんが言う通り奥のほうにはフレームのない真っ黒なドアがおいてあり、先は見えない。ダンジョンの入り口のような感じだ。
この先が宝部屋か…ダンジョンの遺物といえば持ち主に膨大な力を与えるという話だがそれを俺が手に入れられればきっと…
「竜?何ぼさっとしてんだ?いくぞ。」
「ワリィ太一。ぼーっとしてた。」
「お前大丈夫か?最近そういう事多くないか?なんか悩みでもあるのか?」
「心配してくれてありがと。問題ないから安心してくれて。」
「そうか?ならいいんだけどよ......」
大丈夫だ。僕は普通だ。僕は僕だ。俺が俺なのは当たり前か。何考えてるんだろ。俺
真っ暗な扉をくぐるとそこには見たことがあるような景色が広がっていた。
「これってダンジョンに入ったときの…。」
見渡す限り端の見えない広大な花畑。宝部屋らしい宝箱もなければ財宝の類もない。ただの花畑だ。
「ガイアさんここって本当に宝部屋なんですか?どう見ても最初に戻ってきたとしか見えないのですが…」
「んー。一応最初に入ってきた所とは違う場所なんだが、宝の間にしてはちと広すぎるな。他にも扉がないか探してみるか。お前!ついてこい。」
「広いですし手分けして探したほうが良いんじゃ無いですか?」
「いや、ここが安全だとは限らないからな。できるだけ固まったほうがいい。」
確かにガイアさんの言う通りだな。いくら宝部屋とはいえここはダンジョンだ。罠や敵が配置されていてもおかしくない。時間はまだあるんだ。遅くとも確実な方法が最適解だろう。
「しかし広いなー。奥の方に何かは見えるんだが…それ以外はただの花畑だ。」
「そっすよねー。金銀財宝がザクザクって感じを期待してたんっすけど。がっかりですよー。」
「お前は現金なやつだな。」
「なんすか?別に良いじゃないっすか!」
「別に悪いとは言ってねぇよ。」
ふと思ったが太一...なんでガイアさんの舎弟的なムーブしてるんだこいつ。別に目上の人に対してこういうふうな接し方をするやつじゃ無かったよな?なんかあったのか?
「ねぇ竜くん。あそこなんか無い?」
委員長が指す方向には確かに建物のような物が建っている。
「別にあの建物最初から見えてたよ?」
「違うよ!その手前!」
手前…?ぱっと見ても紫やピンクのそこら辺と一緒の花畑だけど…いや一部だけ真っ白だな。それになんか花には見えない。まるで人の髪のような…!?
「委員長あれ人だよ!」
「ガイアさんあそこに人が倒れてます!建物の手前です。」
「人?......確かにありゃ人だな。まだ息がある。急ぐぞ。」
最大限周りを警戒しながら急いで現場に向かうとそこには確かに人が倒れていた。
絹のように真っ白な髪で、背丈を見るに俺ら対して変わらないくらいの少女だ。来ている衣服はところどころ破けており腹の方にいたっては、丸い穴が空いていてお腹が露出している。少し目のやり場に困る格好だ。
「おい。大丈夫か?」
体を揺らして起こそうとしてみるが眠ったままだ。気絶でもしてるのか?それにここに居るってことはこの子がダンジョンの攻略者?
「この子見た事あるな。」
「名の通った冒険者とかですか?」
「いや?この前ナンパした子。あっさり振られちゃったけどな。」
「…そういう話は後にしてくださいよ。」
「それよりガイアさんこの子起きませんよ?どうします?」
「んー。どうするって言ってもそりゃおぶって帰るしか無いだろ。」
確かに無理やり起こすのもアレだしおぶるしか無いかぁ。ん?なにか向こうの花が揺れてないか?それもだんだんとこっちに近づいているような…
「クェェェ!」
そう思った束の間花畑から1羽の鳥のようなものがこちらへ飛び掛ってきた。
「ガイアさん!太一!委員長!魔物が!」
俺立ちは即座に剣を抜き戦闘態勢に入ったのだがガイアさんの手で止められてしまった。
「落ち着けお前ら。こいつは魔物だが野良の魔物じゃねぇ。契約獣だ。」
「「契約獣?」」
「契約獣ってのは魔法やスキルで呼び出している魔物の事だ。まぁペットみたいなもんだよ。」
「多分このお嬢ちゃんの契約獣かな?」
「クェ!」
「よし!とりあえずこの子を連れて地上へ戻るぞ。一応警戒は怠るなよ!」
「「はい!」」「クエ!」
この鳥言葉を理解しているのかな?そのうち喋ったりしないだろうか‥ いや、一旦余計な事は考えず、戻ることだけを考えよう。
「これがおそらくダンジョンの出口だ。多分」
「言い切ってくれても良いんですよ?」
「いやここ未踏破ダンジョンだからさ。出口がどれなんてわかるわけ無いだろ?だから多分。」
「...心配だなぁ。」「クェェ…」
「…」
そんな心配は杞憂だったかのように俺達はすんなりとダンジョンの外へ出る事に成功した。昼ぐらいにダンジョンに潜ったのにまだ昼だな。体感じゃ5時間くらい、居た気がするけど実際はそんなにたっていないのか。
「よしよし無事に外へ出れたな。俺はこの子を宿に置くのとクエスト達成の報告をしてくるからお前たちは先に宿で待ってな。」
「おーい!勇者様がたー!」
遠くから甲冑を纏った青年が声をかけてくる。
あれは確か‥お城にいた騎士の一人かな?
「お城の騎士さんですよね?俺達に何か用ですか?」
「はい。えっと王から伝令を預かっていまして、今読み上げますね。」
「勇者よ、ダンジョン探索の途中で申し訳ないが勇者たちの今後が決まったので至急王城に戻ってきくれ。だそうです。」
王城に戻れって?なんで今このタイミングで!せっかくダンジョンの攻略者と出会えたというのに、仲間が力が手に入るかもしれないのに早急に帰還しろだって?勘弁してくれよ。
「あと勇者様のみに大臣からの伝言です。こちらの手紙をと。」
大臣から俺向けに手紙?なんの内容だろうか?。とにかく中身を確認してみよう。
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「わかった内容は把握した。今から王城に帰ることにするよ。」
「太一も委員長もいいね?ガイアさん俺たちはこの街を離れるのでその子にダンジョンの話や勧誘の件を伝えておいて下さい。」
「おいおい随分急な話だな。まぁいいけどよ。」
「それとガイアさん。もし俺たちがまた旅に出るときがあれば俺たちと一緒に来てくれませんか?無理は承知です。それでもあなたのような人がいれば心強いのです。お願いします!」
「兄貴、俺からも頼むっす。」 「じゃぁ私も...」
「…仲間か。約束はできねぇがお前らが何か困っていいるときは力になるぜ?絶対じゃないけどな。」
正直断られると思っていた。ガイアさんは自分のパーティーがあるし何よりそこまで戦いというものに執着していないように見えた。何が起きるかわからない旅になんて絶対に来ないと思っていたんだけど…少しほっとしたな。
「勇者の一味…悪かねぇ肩書じゃねぇか。これでさらにお持ち帰りできるってもんよ。」
「……ガイアさんそれは余計だったんじゃ…」
「兄貴やそりゃないぜぇ?」
「ガイアさん…ちょっぴり失望しちゃいました。」
「あれ?お前らやっぱり酷くない⁉」
そんな感動(?)的な別れをした俺たちは馬車で王城につきすぐさま王様と謁見をすることになった。
この光景を見るのは二度目だな。やっぱり重厚感のある巨大な扉というのは変に緊張するな。
「入るがよい。」
王様の声が聞こえた俺たちは部屋の中へと入る。意外なことに謁見の間の中には俺たち以外にクラスメイト全員が集まっていた。
「ひとまずはご苦労だったな。竜よ。疲れているかもしれんがおぬしら全員の今後が決まったのでな、休むのはそのあとにして貰おう。」
「お前たちは明日からこの国の由緒ある学校、王立ミレア学園へ通ってもらうことになった。おぬしらは異界から来たものゆえこの世界の知識や常識に疎いだろう。」
「そこで学園に通いしっかり学ぶことでより効率よく強くなってもらいたい。制服や移動の馬車はすでに用意してある。詳細は大臣から伝えるが今日中にはこの城から離れるということを伝えておこう。以上
だ皆下がるがよい。」
学園ねぇ。確かに俺達はこの世界で生きていくにはこの世界を知らなすぎる。今度も生活していくならいい機会かもしれないな。
俺は新しい生活に心を踊らせつつも、ひとまずは先に荷造りをする準備を始める事にした。
一旦勇者くん視点はこれで暫くお休みです。もしかしたら筆が乗って書くかもしれませんが暫くは小夜ちゃんのお話になると思います!
勇者くん達のお話をもっと見たい方はぜひ良いねをお願いします!(貰ったら書きます)




