精霊契約
さて意気込んだものの…どう攻略しようか。まずは情報収集だな。精霊眼発動!
私の相棒精霊眼で、弱点と戦法を丸裸にする予定だったのだが、表示された結果は考えてもいない物だった。
「ステータスの閲覧を拒否されました?なにそれ?!」
そう。拒否されたのである。失敗等ではなく相手がこちらの精霊眼に対処したのだ。こんな事は初めてだ。もしかしてあいつ...ヤバイやつ?
「…鑑定眼‥か。なかなか高レベルだな。」
真っ黒男がなんか言ってる。鑑定眼なるスキルと勘違いしているらしい。あんなに自信満々にかっこうつけてるのに間違ってるの滑稽だな。取り敢えず油断してそうだし先制攻撃だ!
構築するは『闇弓』威力も弾速もちょうどいい魔法だ。しっかり狙って発射した魔法は男の腹部当たりに命中した。てっきりよけられると思っていたから拍子抜けだな。
「下級魔法か。グライドの奴を倒した様だし中級くらいは使うと思っていたが…拍子抜けだな。」
なるほど避けられなかったのではなく避けなかったのか。どうやら相当実力差があるらしい。まぁ勝てなくてもローラさんが逃げる時間くらいは稼げるかな。
「かかってこないのか?ならこちらから行かせて貰おう。『万象:炎狐』」
体が咄嗟に動いた。このままでは死んでしまうと。私がさっきまでいた場所を見れば床の金属が融解しドロドロに溶けている。
うーん。前言撤回逃げる時間稼げないかも。
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走れ走れ走れ!なんだよあいつデタラメ過ぎるでしょ!現在私はあいつから出ている無数の鮫に襲われている。襲われているといってもミサイルみたいに突っ込んで来るだけで生物らしい動きはない。あれも魔法の一種なのだろう。
『熟練度が一定に達しました。スキル疾走Lv7を獲得しました。』
体が少し楽になる。それと同時に走る速度も上がった気がする。
疾走のレベルは7。戦う前が4だったことを考えるとどれだけ私がこいつから逃げ回っているか分かるだろう。
命の危険が肌を掠る。死の危険が無数に突っ込んで来る。1歩間違えれば死にかねないがなんとかなっている。ローラさんが逃げる時間くらいは稼げただろうか。
そう少し安心してしまった途端、鮫が私の足を掠った。あまりの痛さに足を止めてしまうが不思議と攻撃はふってこない。
「私を殺す気がないの?」
そう尋ねると男は愉快そうに笑った。
「あぁ気が変わったんだ。今は殺す気は無いぞ。」
どういうつもりだまぁ良いか。助かったならそれはそれで‥
「痛⁉」
突如足に痛みが起こった。見てみれば何かナイフで切られた様な鋭い傷口がそこにはあった。
「あぁ言い忘れていたが私の趣味は苦しんでいる者を見ることでねぇ。貴様の必死な顔を見ているとこうクル物が合ったんだ。本当だったら殺すつもりだったが生かす気になったんだよ。」
こいつ、私を生かす気無いじゃん!そう思った途端左腕に激痛が走る。何だ?何をされている?
「いいねぇその顔もっと見せてくれよ!その苦悶の表情をなぁ!『万象:鎌鼬』」
うぐ、今度は右腕か。私で弄びやがって、舐めるなよ!『血槍』!
「な、何だそれはうがぁ」
よし舐めプしてるからだ!ざまぁみろ。今のうちに離脱を!そう思い急いで走り出すと今度は背中に激痛が奔った。いたいいたい痛い!
「貴様舐めるなよ。お前が生きているのは俺が生かしてやっているからだぞ。それなのに俺に刃を向けるとは…もういい死ね。『万象:炎狐』」
ものすごい熱量を持った狐がこちらへ向かってくる。
まぁこの世界に来たばっかりだけど友人もできたし 人の役にたてた。後悔なんて…後悔なんて‥無いわけ無い!嫌だまだ死にたくない嫌だ。誰か..誰か…
『アクアシールド!』
火の玉は私に当たる直前に水の塊にぶつかり相殺された。この声この魔法は、
振り返ればそこには元気いっぱいのローラさんがいた。なんで?助けに来てくれたの?
『小夜さん!何も聞かずに今から私の言う言葉を復唱してください!』
「ローラさん?なんで逃げて無いんですか!」
『私は仲間をおいて逃げられるほど薄情じゃないのですわ。それより私の言葉を復唱してください!』
なんだかよくわからないけど戦闘中にいうのだからきっと意味があるのだろう。魔力も血も殆ど無い今、それに掛けてみるしかない!
『「我神秘なる魔精の器にて、かの幻想叶えし者。事象と現象が混ざりし時に奇跡は起こる。」』
「何かはわからんが敵の前ですきを晒すとは愚かな。くたばれ!『万象:鎌鼬』」
あの不可視の攻撃だ!立ち止まってる今じゃ避けられない。何か壁を…そうだ魔力を壁に!
体に残っているほぼ全ての魔力を使い周囲に魔力のドームを形成する。だが、残った魔力では物質化するには不十分だった。
クッソ、魔力が足らない!攻撃が当たる!
『アクアシールド』
既のところで水の盾が私を守った。ローラさんだ。
「ローラさん!ありがとう!」
『えぇ守りは任せて。さぁ詠唱を。』
『「我が結びし魔精は水に生き全てを飲み込む海の事象。代価は既に支払われた。今は遠きかのものとの条約を!魔性刻印!」』
言葉を復唱した途端、大量の魔力が私を覆った。少しの間まるで水中に居るような感覚になりそれが解けると同時に私から湧き上がる大量の魔力を感じた。
いったい何が起こってるんだ?
「ローラさんこれはいったい…?あれ?」
振り向くとさっきまでローラさんがいた場所に彼女の姿が無かった。敵にやられた?それとも距離を取った..?まさかこの力ローラさんが犠牲になって出来たんじゃ…
『大丈夫。私は無事ですわ。』
「ローラさん?一体何処に…?」
『貴方の腕ですわ。』
はえ? 腕?腕って…!!左腕が…有る!
え、どういう事?ローラさんが腕になっちゃった。どういう状況?
『1から説明する暇は無いですが簡単に話すとワタクシと小夜さんは精霊契約を行ったのです。』
『私の体を貴方の左腕に変換し私はそこに宿っています。』
体を変換って…それじゃぁローラさんが生きていけないんじゃ‥
『大丈夫よ。私の体はもう人のものじゃない。繰り返された実験で殆どスライムのようになってしまったの。だから元にきちんと戻せるわ。』
そうか。戻せるなら心配は要らないな。
それよりこの状態は?力が凄く湧いてくるんだけど?
『これは霊装と言って精霊の力を契約者に貸す技よ。今の小夜ちゃんなら精霊魔法を行使できるはずだわ。』
精霊魔法?私何があるかも分からないんだけど?
『大丈夫。使い方は体が教えてくれるわ。時間がない。さぁ急ぎましょう?』
そうだな。こんな強化イベント貰ったんだ。圧倒するぐらいじゃないと申し訳無いよね!『水精鎖』!
普段の私なら出せない大量の魔力があふれ出る。大量な魔力で作られた鎖は、真っ黒男の体を縛る。
「舐めるなよ。こんなもの簡単に...!?」
よし動きは止めた。次は攻撃魔法だ!
次に構築した魔法は『水精槍』大量の魔力を含んだ水が渦を作り螺旋状の槍へと姿を変えた。
放たれた槍は今まで傷1つ付けられなかったやつの障壁を砕きダメージを与えた。
「ぐぁぁ…馬鹿な.我が障壁は魔族でも随一の鉄壁。それを貫通する魔法など!」
「一撃でそんなに食らうのか…意外と大したことないね。」
「なんだと?貴様調子に乗るなよ!『万象:雷蛇』」
ビリビリと帯電した魔力が形を作り蛇へと姿を変える。初めて見る技だな。それにしても雷、風、炎、水、土…あいつの使える属性多くない?
魔族って大体あぁなのかな。
ひとまず水精魔法で結界を‥
『いけませんわ!雷の魔法は水の魔法に絶対的な優位を持ちます。水精魔法では防げません!』
危なかった。たしかに水は電気を通すが、魔法でも同じなのか。弱ったな水精魔法以外に防御魔法は無いぞ…
『魔力を物質化し、壁にするのですわ!それならきっと』
そうだ、それがあった!私の手札は水精魔法だけでは無いのだ。さっきは魔力が足りず出来なかったが今の魔力なら問題無い。
周囲に六角形を作るイメージで魔力を流し込んでいく。豊潤な魔力をふんだんに使って出来た壁は見るだけで安心感を与えるような感じだ。
雷の蛇が獲物に襲いかかる様に突っ込んで来るが私の作った壁に弾かれ霧散した。見た目通り硬い壁だね。
「何だぞの結界術は…何なんだその硬さは!」
急激に上がったから私の力に怯えているのか、真っ黒男が震えるような声で尋ねてきた。
「教える訳ないじゃない。悔しかったら自分で調べな!」
あぁさっきは散々やられたからね。これはスッキリするな。さて、そろそろ終わりにしますか。
構築する魔法は水精魔法の中で最も最上位の魔法。水とは災害。災害とは津波。精霊とは自然現象が具現化した存在であるなら水の奥義は一つしかない。
「くらい尽くせ!『海神の天罰』
「こんな所でぇ!『万象:護封壁』」
荒波のような水が真っ黒男を襲う。何か壁のような物を出していたが一瞬で波に飲まれ消えていく。さらにこの水はただの水でなく魔力をしっかり含んだ特殊な物だ。触れていれば命を蝕んでいく。大量の水はやがて消え、ボロボロになった男が出てくるだけであった。
我ながら恐ろしい魔法だ。どんな兵器より自然災害のほうが恐ろしいと言うしね。それにしてもレベルアップしないな。あれだけの強敵だったら一つや二つ上がるはずだ。ということは…
「ハァハァ…私はまだ死ぬ訳には…行かないのだ…」
まだ生きてる、しぶといな。止めを刺してあげなきゃね。
『ごめん小夜ちゃんもう霊装の維持が難しいの。少し休ませてもらうわ。』
え?今?まぁ相手はもう虫の息だし大丈夫だろうけどさ。さぁ止めを..あれいない?逃げられた!?
「死ぬ訳には行かないのだァァァ!『万象:鉄槍』」
後ろ!ぐぅぅ‥刺された!いたいいたいいたい…
「油断したなぁ!そのまま死ね!」
体から大量の血が流れ落ちる。私の生命が薄くなって行くのを感じる。でもそれは同時に私の力が増すことにもなる。
「いや!死ぬのはお前だ『血斬』!」
残った魔力流れた血液全部持ってけ!大量の血液が一つの刃となり男を襲う。私を貫いていた男は避けられるはずも無く肩から腹にかけて深く切り裂かれた。
もう魔力も空っぽ。体内の血も減り、貧血で倒れそうだ。それでもレベルアップのアナウンスは響かない。
「私は死なない。魔王様を、今代に支えるまでは死ねぬのだぁ」
「私だって死ねない。まだこの世界に来て、何もできてない。」
「だが貴様はもう動けないではないか。戦いとは最後に立っていた方が勝者なのだ。さらばだ。名も知らぬ少女よ。」
戦いは最後まで立っていた方が勝者…か。
「いや?さよならするのは貴方だよ。行け!プロード!」
私は一人じゃ無いからね。私が倒れても仲間が生きていたら私の勝ちだ!やっちゃえプロード!吹きとばせ!
「何だこいつ。クソっ離れろ!クソォォ」
轟音。私も吹き飛ばす勢いでの爆発が起こる。まぁ私は爆発に耐性があるから問題無いけどね。
『熟練度が一定に達しました。スキル自動回復Lv4を獲得しました。』
『熟練度が一定に達しました。スキル暗黒魔法Lv5を獲得しました。』
『熟練度が一定に達しました。スキル大剣士Lv1を獲得しました。
『熟練度が一定に達しました。スキル大魔法使いLv2を獲得しました。』
『熟練度が一定に達しました。スキル演算補助Lv5を獲得しました。』
『経験値が一定に達しました。個体名小夜のレベルが10から15になりました。』
『各種ステータスが上昇しました。』
レベルアップした。と言う事はやっと倒せたということだ。しぶとかったなぁ。クソ野郎だったし気持ち悪かったけど信念というか野心というか、とにかく気迫は凄かった。あぁいう人に比べたら私なんてただぼーっと生きているだけなんだなぁ。
あぁ視界が滲んできた…流石に血が流れすぎたかな。
『小夜ちゃん?大丈夫?しっかりして!』
あぁローラさん。心配しなくても大丈夫だよ。そのうち勝手に再生するさ。だって私吸血鬼だし...




