私はきっと主人公
遅れました!ごめんなさい!
目を覚ますとローラさんと目が合った。...?私...寝てた?疲れてたしまぁしょうがないか。うん。
ところでこの画角とこの感覚もしかして膝枕とかいうものじゃないか?この体験は初めてだ。きっとこの光景が全国の男どもの夢なんだろうなー。
『あら?もう起きてしまいましたの?』
どうやら私が目を覚ましたことに気が付いたようだ。私は体をゆっくり起こし周囲を確認する。
私達が閉じ込められている空間のスタート地点だ。未だに抜け出せずに居るようだ。もしかして策とかなかったのかな?
そう考えているとローラさんが私に紅茶を出してくれた。いただきまーす。
…美味しい。寝起きに紅茶…なんて優雅なんだろうか。ここがダンジョン内のしかもよくない研究所なことを除けば。そうだここダンジョンだった。ゆっくりしてられないや
「あの‥ローラさん、私達こんなにゆっくりしていますが今、私たちは閉じ込められているでしょう?どうやって出るんですか?」
『あぁ、それならもう解決しているわ。いつでも出発できるわよ?』
そっかぁ解決したのか。だからゆっくりしてるのね。うん?なんか今さらっと解決したって言ってなかった?気のせいじゃないよね?え?
『私たちを閉じ込めてたのは一種の魔法のようなものよ。精神結界といって心を乱し、心が乱れているものを閉じ込める効果があるの。ただその効果は私には効かないから小夜さんが落ち着くことで、解決したのよ。』
そうだったのか。自分でもなんで慌てているのか疑問だったが魔法をかけられていたのか。それなら納得だけどいったい誰が魔法をかけたんだ?
「その魔法ってここじゃ当たり前なんですか?」
私がそう尋ねるとローラさんは静かに首を振った。
『私の知る限りここの兵に魔法を扱う機能なんてなかったはずだわ。…私たちの知らない第三者、魔物が潜んでいるのだと思うわ。』
第三者か…どう考えても冒険者じゃ無いよなぁ。私達を閉じ込める必要がないし、明らかに私達に悪意を持っている。警戒しないとな。
その後私達は警戒しつつ第2、第3のデカロボを倒していき、後は中心部へ行くのみとなった。
中心部にたどり着いた私達は目の前にある金属製の大きな扉に3つのくぼみがある事を発見した。これが鍵を入れる場所かな?そう考えていたところ、ローラさんが石を3つ取り出し、それぞれ窪みに嵌めていった。
最後の石が窪みにはまると同時に目の前の扉が開き、中から小さな扉が現れた。これがボス部屋前の扉か…
「いよいよ最後ですね。」
『えぇ』
これでやっと外だ。こっちに来てノリで来たダンジョンがここまで長引くとは思わなかった。本当だったらある程度進んで戻るつもりだったけれど、好奇心に駆られ最後まで来てしまった。その計画性のない行動のせいで片手を失った。ここは現実でゲームなどでは無いのだと、そう思い知った。
もう考えなしに行動なんてしない。この世界で全力で生きるんだ。そしていつか…家に帰ろう。
そんな想いを胸に抱えながら、私は慎重に扉を開けた。
部屋の中にはボスがいるわけでも、機械めいた管理室がある訳でも無くただだだっ広い空間が広がっていた。あれぇ部屋間違えたかな?
『嘘!?ここには確かにアクセスコアを持った警備兵が設置されてたはず!それなのに何で…』
どうやら場所は合っているらしい。いったいどういう事だろう。混乱しているのか震えてその場から動かないローラさんを置いて、私は部屋を探索する事にした。
学校の体育館2つほどのサイズの部屋で装飾等のない殺風景な空間だ。結構広いし端っこから探していこう。暗視発動!
真っ黒な空間に色が増えていき、あっという間に日中のような景色へと変化した。それにしても何にもないな。ここのボスが倒されたなら戦闘跡や、機械の残骸ぐらい残ると思うがそんなものは無い。本当にここのボスがいたんだろうか?
何か手がかりを見つけようと部屋中を探索していると何か物が落ちているのを発見した。
確認しに行くとそこのは赤み掛かった石が落ちていた。
「これって...」
それはくすんでいるがここへ入るときに使った3つの石と同じような石だった。なんでぽつんと落ちてるんだ…?ローラさんに確認してみよう。そう考え私は振り向くとローラさんが険しい表情でこちらへ走ってきている。一体どうしたんだろうか?なんか突撃する勢いでこっち来てない?
「どうし『危ない!!!』ぐぇ」
ローラさんに突き飛ばされ何事かと確認するとそこには地面から生えている宝石に体を貫かれている姿があった。それと同時に膨大な魔力の気配があたりを漂う。なんで、なんできゅうに...
「ふむ...防がれてしまったか。まぁいい一人仕留めた。」
声がしたほうに振り向けば全身真っ黒なローブをまとった男が宙に浮いていた。背中からは悪魔のような翼が生えており人間ではない事がうかがえる。こいつが私たちを閉じ込めた人物?いやそれよりローラさんが!
「プロード吹き飛ばして!全力で!」
「クェ!」
真っ黒男はプロードに任せて私は地面へ横たわるローラさんのもとへと走る。
「ローラさん!?大丈夫ですか!」
様態を見ると腹に大穴に空いていて何故か出血はないがひどいけがだ。ひとまずローラさんを抱きかかえこの場を離脱したがローラさんに止められてしまった。
『小夜さん。私は大丈夫ですからこの施設から脱出してください。その石があれば出られる筈です。』
「大丈夫なわけないじゃないですか!その怪我ですよ?だめですそんなこと!私は見捨てるなんてできません!」
『いいえだめですわ。あなたと私は他人。私のために、ましてや他人のために命を張るなんていけませんわ。さぁ早く外に』
うぐ、確かに言うとおりだ。私とローラさんはここで会っただけの他人。私が命を張るのは少しおかしいことだろう。でも、
「いいえ逃げません。私は戦います。」
『どうして?!きっとこの施設の管理者です。逃げようとした私を処分するためにきたのですからあなたが戦う必要なんてありません!どうしてわかってくださらないのですか?!あなたが戦う理由なんて....』
「いいえ私が戦う理由はあります。あなたは最初死にかけた私を助けてくれたじゃないですか。それのお返しです。」
そう話をしていると私の隣に鳥が吹き飛んできた。やはり自爆だけでは倒せないか。私は説得しようとしているローラさんをあとにナイフを抜く。
前の世界でただ何となく生きていた私だったらこんな馬鹿な真似はしない。とっとと逃げていただろう。でもこの世界に来て生きるか死ぬか、そういう戦いを経験して私は思った。こんなつらいことは他の人、ましてや私を助けてくれた優しい人に味合わせちゃいけないんだ。
少なくとも私が好きだったラノベの主人公たちならみんなそうしたはずだ。異世界転生なんて経験したんだから私も主人公だ!かっこいいハイライトぐらい作らなくっちゃね。
「プロード。ローラさんをお願い。」
さぁ私よ。ボス戦の時間だ。ソロ攻略ぐらいやってやるんだ。そう意気込んで私は一歩前へでる。




