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第三話 僕と師匠③

僕が今、師匠の部屋を掃除している時だった。


「アルジオン、今日は随分と嬉しそうじゃないか、何かあったのかい?」


師匠は僕に問いかけてくる。その答えは、僕にも分かっていなかった。


「どうしてなんですかね! 今日は師匠のお手伝いができるのが、いつもより楽しいんです! もしかしたら休んだおかげかもしれません!」


「そうか……! それは良かった」


師匠は僕の言葉を聞くと、少し嬉しそうな表情をする。

その顔を見て、僕も嬉しくなる。


そして、部屋の掃除が終わった。


「他にもお手伝いすることあったら言ってください!」


僕は、他にも何か手伝う事がないか、師匠に問いかける。


「アルジオンが優秀だから、もう頼みたい事は無くなってしまったな。アルジオンの好きにして構わないよ」


師匠の言葉を聞いて、僕は少し不安になった。

師匠に必要とされる事がないのが僕は嫌で、寂しくなってしまう。

好きにしてていいという言葉が僕の頭の中を巡り、気づいた時には師匠の隣に立っていた。


「アルジオン? どうしたんだい?」


「好きにしてていいって言ったから……」


「そうか……」


師匠はこれ以上何も言わずに、書類を見つめている。

僕は師匠の仕事が終わるまで、ずっと隣にいた。


師匠は仕事が終わったのか、僕に話しかけてくる。


「アルジオン、一緒に出かけてみないか?」


「えっ……!」


突然の誘いに、僕は戸惑う。

師匠が出かける事はあっても、今まで僕を誘う事なんてなく、それはきっと僕の事を気にかけていたのだろう。


「嫌なら、大丈夫だ、一人で……」


「行きます……!」


僕は師匠の言葉を遮り、そう言った。

師匠が僕を必要としてくれている、そう思うと僕は断る事なんて出来るはずがなかった。




師匠の隣を歩きながら街に着く。久しぶりに見る街の景色は懐かしかったが、あまり気にしてはいない。


「アルジオン、体調は大丈夫?」


「は、はい…! 大丈夫です!」


「ならよかった」


街の景色よりも、師匠の事の方が気になっていた。


何故なら、帽子を被りレンズが黒い眼鏡を付けて、髪の色は魔術で銀色から金色へと変わっていた。


正直常に一緒にいなければ誰か分からないし、今でも慣れない。


「それで……何をするんですか?」


「アルジオンの服を買うんだ、ずっと同じのじゃ味気ないだろう?」


「でも、お金が……」


「お金ならいくらでもあるし、気にしなくていい。それに、私のそばにいるんだからカッコよくあるべきだ」


「どう……」


どうせ似合う服がないと言おうとしたら、師匠は僕の方を見てきた。


「……してもって言うなら、お願いします……」


「なら行こう」


目はレンズが黒くて見えないけど、間違いなく睨んできていた。


服屋に到着したのはいいが、どれも貴族が着るような服で、とても似合うとは思えなかった。


しかし師匠は僕に色々着せようと服を持ってくる。


「アルジオン、これを着てみてくれ」


「分かりました……」


僕は試着室に入り、渡された服を着る。


僕は服に対してあまり興味がない。才能が開花する前はただの着せ替え人形のように指定された服を着るだけで、自分が着たいと思う服なんてなかったし、才能が開花した後は殆ど同じ服しか着れなかったから。


師匠が言うから着るだけで、出来る事ならあまり着たくはなかった。


「着れたかい?」


「は、はい……」


試着室のカーテンを開ける。どんな反応が来るのかは分からないけど、師匠に見せるのはどこか恥ずかしかった。


「ど…どうですか……?」


「似合ってるじゃないか……!」


「似合ってる……」


師匠に似合ってると言われて照れてしまう。それは、両親からは言われなかった言葉だったから。


「じゃあ今度はこれを着てくれ……!」


「え、これもですか……!?」


師匠にまた服を渡されてしまった。


そして服を着て再びカーテンを開ける。


「着ましたけど……」


「似合うじゃないか! じゃあ今度は……」


師匠は僕に次々と服を渡し、僕がそれを着て師匠に見せる度に似合うと褒められて、照れるのを繰り返し、最終的に師匠は僕に着させた服を全て買い、家に帰った。


「今日はいい買い物ができたよ、アルジオンが来てくれなかったら、私の想像で買わないといけなかったからね」


「けど、そんなに買って本当に大丈夫なんですか……?」


「お金なら心配はいらない。こんな買い物、無限に出来るくらいには持ってるからね」


「そうですか……」


「じゃあ早速この服を着てくれ……! 明日は……」


最初は緊張したけど、師匠が楽しそうにする姿は珍しくて、そんな姿を見れて僕は嬉しかった。

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