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第二話 僕と師匠②

今日、アルジオンに異変が起きた。


来客の話を聞いていると、突然息を荒くして、苦しそうにしていた。


後で涙も流していたが、それは自身への不甲斐なさに耐えきれなくなったもので、あまり関係があるとは思えない。


『フォード家』……アルジオンはこの言葉に強く反応したようにも見えたが……

そもそもアルジオンは何故森で彷徨っていたのだろうか、アルジオンの身には何があったんだろうか……


はぁ……私はダメだな、肝心な時に人の気持ちを汲みとってやれない。


そもそもアルジオンは自己肯定感がかなり低い。

おそらくは黒魔術の才能が開花してしまったことで家族から何かしらの虐待を受け、その影響で自己肯定が出来ないのかもしれない。


そういえば……フォード家の三兄弟、末っ子の話を最近聞かないな……?


……もしかするかもしれんな。


とはいえ憶測である以上下手に動けない。

とりあえずはアルジオンから話を聞くのが一番ではあるんだが……それはあまりに酷だろう。


私はペンダントを開く。


「アルジオン……君を見ていると、昔の私を思い出すよ……何もないと思い込んでいた、あの時の私を……」



ーーそして翌日の朝ーー


「おはようございます……」


「おはよう、アルジオン。よく眠れたかな?」


「……まぁ」


あまり眠れなかったか……まぁ昨日の事があるんだ、本人も気にしてしまうのは仕方がない。

とはいえ、体調を崩してしまうのも問題だ。


「手伝いは出来そうな感じかな……?」


「は、はい……!僕はそのためにいますから……」


無理した表情でそんな事を言わないでくれ……でも、私が指摘するのも彼は気にしてしまうのだろう。


「そうか……でも、しんどくなったら言って。無理だけはしないでくれ」


「分かってます……」


そう…アルジオン、君は物分かりがいい。

だから、無理をしないでといえば、君は無理をしてるのを隠すのだろう…?

君は自分を追い込んでしまう。何もしていないのに、何もされてないのに。


いざとなれば私にはこれがある。だがこれは私のエゴだ、これを使ってしまっても、アルジオンは私を受け入れてくれるだろうか……



アルジオンはずっと作業をしている。かれこれ数時間動きっぱなしで、休んでいる様子は見られなかった。

何回も休むように言ったのだが……


「僕……迷惑かけてしまいましたか……?」


なんて言いながら悲しい顔されたら……言えない……


そしてアルジオンは今本棚にある本を整理している。


基本は私が読んだ後の本をアルジオンが片付けてくれる。今日はアルジオンに休ませようと思って自分で片付けたのだが……適当に片付けた影響で余計に仕事を増やしてしまった……


とりあえず少し休ませなければ……!


「アルジオン? 少し疲れてるのではないかな? 休んでも構わないよ……?」


「もしかして、本動かしたらまずかったですか……?」


「いや……! とてもありがたいよ……! でも、君が疲れて倒れるのも困るからね……!」


アルジオン、君はなかなか手強いな……これ以上、君に無理はさせたくないんだよ……!

申し訳ないが、これを使わせてもらうよ……!


私はお茶にカプセルを粉々にして入れる。


このカプセルは試作品ではあるが私が開発した洗脳薬で、カプセルを摂取した者は、一定時間他人の命令でしか動けなくなる。そして効果を受けている間の記憶も失う。といっても試作段階で、衝撃等を与えてしまうと効果は失われてしまう。


「アルジオン、君はいつも頑張っているだろう? 君のためにお茶を用意したんだ、飲んで欲しい」


「僕なんかがいいんですか……?」


「君のために用意したんだから飲んでくれないと困るよ」


本当に飲んでくれないと困るんだよ……!頼むから早く飲んでくれ……!


「じゃあ、いただきます……」


アルジオンがお茶を飲み干す姿を見て、私も少し安堵した。

そして、私は命令をする。


「アルジオン、私の前に来て」


アルジオンは私の言葉を聞くと私の目の前に来る。普段と違い、返事はなかった。


よかった、成功しているみたいだな……


「アルジオン……君のやりたい事をやっていいよ」


君がどうやって休息をとるのかは分からないが、これで手伝いをする事はないだろう。


私がそう思っていた時だった。アルジオンは、本棚へと向かうと、本棚の本を整理し始める。


間違いなく洗脳薬は飲ませたはず……!なのにどうして…!?


「今すぐやめろ!!」


私は咄嗟にアルジオンを止めようと、大声を出してしまった。


「……! あれ、僕今何をしてたんだっけ……」


「覚えてないのか……? 疲れてるんだろう、今日は休んだ方がいい」


「じゃあ、そうします……」


私はアルジオンの事を知れていなかった。

まさか……私の手伝いがやりたい事だなんて、思ってもいなかった。


私がアルジオンを無理に休ませても、彼はそれを望んでいないのかも知れない。

私は君の好きにさせてやりたいと思っていた。

でも、私は君に無理をさせたくはない…………

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