第41話ー1.ホール以外でのライブ
ついにやってきたライブの日。ライブは僕も行ったことがあるセンマイコーヒー立志産業学園前店でやる。センマイコーヒーは杏子が所属している会社で、立志産業学園は結香が通っていた大学だ。だからか、その二人は浮かれていた。
「やっと着いたー」
「結香さん、これからよ」
「分かってるって」
「ここは今迄ほど緊張しないな。たぶんここで働いたことがあるからかな」
「たまにシフトが入ってるもんね」
「そうよ、忙しいよ。結香さんも楽しそう」
「だって、今日は大学の時の友達が来るんだもん」
二人は他のアイドルより先に奥に入っていった。
「結香さん、早速準備を手伝うから、着替えるよ」
「うん」
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他のアイドル達がやってきた。結香と杏子は店員さんたちとセットの手伝いをしている。やってる作業は違うけど。僕は他のアイドル達を控室に案内した。さっき杏子と結香が入っていった部屋だ。
僕は舞台裏に戻り、音源の音響テストを行うことにした。アイドルの事は黄桜さんと織田さんに任せている。大丈夫かなあ。
これからライブが始まる。今回は衣装を制服っぽくしたんだが大丈夫だろうか。早速ライブが始まったようなのでその辺も見ていこう。
早速杏子が現れたが、今回はまず一人のようだ。
「みなさん! 初めまして! カフェファクトです! 今日はよろしくお願いしまーす!」
会場からは歓声が聞こえる。ひとまず、よかった。
「私は、カフェファクトのリーダーで、センマイコーヒーの社員をしています、二宮杏子です!」
杏子が自己紹介すると、客席からセンマイコーヒーの制服を着た女性が「杏子~!」という声援を上げた。
「ありがとー! 私もここでできてうれしいよー!」
杏子がそう言うと一際大きな歓声に包まれた。これはここでやった甲斐があったな。
「今日は初めてここ、センマイコーヒー立志学園大学前店でライブをします。よろしくねー!」
予定だと、この後に曲が入るんだが。
「最初の曲に入る前に、あの人を呼ぼうか?」
あの人? まだだれか出てくるのか?
「私たち『カフェファクト』を作ってくださった吉田直之さんです!」
おい、お断りしたはずだぞ。どうなってるんだよ。
「直之さん、早く出てよ」
杏子がこっちを睨んでくるので仕方がない。舞台に立とうか。
「リーダーの二宮の方から紹介を受けました吉田直之です。よろしくお願いします」
僕はそれで戻ろうとしたら、
「ちょっと待って!」
と言われて、杏子に袖を掴まれた。
「まだ何も話してないじゃないですか! 何で帰ろうとするんですか!」
杏子は今までこうだったっけ? なんか違うような。台本なのかな?
「直之さんはここへは来たことあるんですよね?」
「はい。よく来てますよ」
なぜか会場が盛り上がる。なぜか分からないけど。
「誰と一緒に来たんでしょうか?」
杏子は睨みながらこちらに顔を近づけてくる。これは言わないといけないのかな?
「誰と一緒に、来たんでしょうか?」
杏子はさらに鋭く睨みつけて僕に圧を掛けてくる。これは言わないといけないな。
「北原結香さんと一緒に」
そう言うと会場が騒ぎ出した。
「えー? どんな話をしてるんですか?」
「大した話はしてないですよ」
「またまたー」
「ちょっと、恥ずかしいからやめてよ!」
あっと。ここで結香が乱入してきた。
「二宮さん、そろそろ次に行こうよ」
「うーん、そ、そうね」
杏子は少し考えてから返事した。
「はい、最初の曲はアイの日常です。これは皆さんもおわかりになるとは思いますがオリジナル曲じゃないです」
お客さんも納得したような反応。この歌を知ってる人が多いようだ。
「その頃は人数も少なくて、認めてもらいたくて、踊った曲です。ね、村原啓子さん」
「え? 私?」
「はい、あの時は一生懸命頑張りましたよ。この曲をこれからやるんだけど、どうですか?」
「ええ、頑張ったわね。もう何回もやってるんだけど、最初はそんなことになるとは思わなかったわ。見ててすごいと思ったから、あのことががなければ私は今ここにはいないはずよ」
「私も、認められてよかったです」
「私もちょっとびっくりした。ここまでやるとは思わなかったわ。そろそろ、行きましょう」
「はい、それでは見てください! 『アイの日常』!」
いい入り方だ。『アイの日常』もかかってきた。彼女たちは踊りだした。昔はよくやっていた、懐かしい踊りを。
杏子も前列の右側へ戻り、前列四人、後列五人のフォーメーションで進んでいく。
サビに入って「杏ちゃん、杏ちゃん!」という掛け声が聞こえてくる。あれは、服装で分かる、このお店の店員さんだった。杏子とは同じ会社の従業員同士だからな。
盛り上がってるなー。
次は『Look At to me』。では早速、この曲のヴォーカル、北原結香さんをお呼びします。結香ちゃーん!」
「こんばんはー! 北原結香です。さっき登場した吉田直之さんの幼馴染です」
ああ……。それを本番でも言ってしまうのか……。
「この曲は、日本語でもっとあたしを見て、っていう意味です。会場のみなさん! もっとあたしを見てください!」
結香はバンザイをしながら戻っていく。これで僕はこの後お客さんにどう思われてるか分からないから出づらくなってしまった。
『Look At to me』が始まった。これは僕が結香のために作った曲で僕の部屋で作られたものだ。
結香はすでにこの店でも人気があるようだった。凄い歓声である。
僕も最初に見たときそう思ったがこの振付は可愛い。
アイドル達がのびのびと踊っている。これはそういう歌だ。そして最後には結香の決めポーズが決まって会場が大盛り上がりになった。
それでも曲が終わるとともに静かになったので、寂しい。
「続いては、私の可愛い後輩を紹介します!」
ここで、真春と由利乃が登場する。二人は銀色の衣装を着ていた。それにしても、この二人が銀を着ると意外と似合う。会場も再び盛り上がっていた。
「こんばんは! 大沢由利乃です!」
「こんばんは!! 桃瀬真春です!」
「早速登場していただきました! 二人は別のユニットで活動しているんですね」
「はい」
「特別に今回はゲストとして来てもらいました」
「「よろしくお願いします!」」
二人は元気よくあいさつした。
「では早速聞いてください!『Let’s Play Game』」
これは黄桜さんの作った曲だ。本人は見に来ているのだろうか?
ちなみにこの曲の振り付けは自分たちで作っている。どういう振り付けかと言うと、まず、テニスの動きをしている。ちょっと分かりにくいかもしれない。
その後はゲームをする振り付け。コントローラーを握ってボタンを押すような振り付けだが、会場も静かにそれを見ていた。
その後はサビなんだが、ここで二人は抱き合った。そして歌い始めた。……何なんだ。この振付は……。
でも、これに会場は大盛り上がりと悲鳴のようなものが聞こえる。そして、
「桃瀬さん! 大沢さん! いいっすよー!」
黄桜さんはこう呼びかけている。隣では二階堂さんが静かにしろのジェスチャーをしている。
こういう二人の曲が終わった後は……。
「由利乃ちゃん、真春ちゃん、ありがとうございました! みなさん残念ながら次の曲で最後です。最後は『GARDEN CALL』です!」
『GARDEN CALL』が始まり、海音が歌い出す。今回は二番に入って海音が後ろに下がり、杏子が前に出てきて歌い出す。
歓声もすごいが、これは杏子センター版の『GARDEN CALL』。海音センター版の『GARDEN CALL』もライブで披露できたらいいな。
「みなさんありがとうございましたー! また会える日を楽しみにしててください!」
と杏子が挨拶してライブは終わった。




