第22話.もっと私を見て
いつもありがとうございますm(__)m 今回は途中から結香視点に変わります。ということで、今回もよろしくお願い致します。
今日は練習場所から少し離れた部屋にいる。昨日、杏子に退場させられたのでなんとなく練習場所には近寄りにくかったからだ。
そこへ結香が入って来た。
「あ、直くん。今休憩だから」
「そうなんだ」
「うん、今日は来ないね」
「いや、昨日練習中に宇音に抱きつかれて、そうしたら杏子に帰らされた」
「それは帰った方がいいわ」
「はあ」
結香、そんなにはっきり言わなくていい。杏子に何を言われるか分からないから練習場所に行けないんだから。
「それにしても、練習中の杏子は怖い」
「あたしも二宮さんには散々に言われたことがある」
「結香のキレ方も凄かったけどな」
「それは見なかったことにして!」
そう言えばそんな事もあったな。結香も二宮さんの被害者だったんだな。
「直くん、そんなに暇だったらさあ、あたしにも曲、書いてよ」
「暇だったらって言うなよ」
結香は曲を書いてくれと言っているが、暇という言葉を使わないでほしい。今この何も無い状況になったのは僕の昨日の行動にも一端がある。
「まあ、結香にはまだ曲を作ってあげれてないからな。でも、作っても正式に使えるかどうか」
「何で?」
「二階堂さんは許してくれるんだろうか?」
「いいじゃんそんなの。あたしにも曲を書いてよ」
「それは書くけどさ」
二階堂さんに「作曲は俺の仕事だ!」なんて言われないといいけど……。
「何よ?」
「何でもない。書くよ」
「何よ。もう」
そう言って結香は部屋から出た。
僕は練習場所を覗くと、結香は一生懸命踊っていた。最初のころ態度が嘘のようだ。
ただこれ以上覗いているとまた杏子に見つかって怒られるからさっさと元の部屋へ戻ることにした。
そして僕は結香のために曲を作ることを決意した。
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それから僕は自分が持っている結香のイメージを探りながら曲を作っていった。
「できた!」
数日後にそれは完成した。いい感じにできたので結香に聴かせるも、
「どこがいいの?」
「えー?」
結香からは気に入られなかった。
「じゃあ、これから海音ちゃんと新曲の練習するから、また後で!」
そう言って、結香は練習へ戻ってしまった。
結香に気に入られなかったのはただショックでしかない。一体どこが悪かったのか? 後で聞いてみよう。
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そのまま部屋で待っていたら、練習が終わったのか結香がやって来た。
「直くん、さっきの曲、もう一回聴かせて」
「何度聴いても同じだよ」
「何それ?」
「何もアイデアが浮かばなくて、さっきから全然変わってないよ」
「それでもいいから、聴かせて」
何だよそれ。この曲のどこがいいのか分からなかったんじゃないのか?
「結香ちゃん、気に入ってる、みたい」
海音はそう言うが僕は意味が分からなかった。曲のいい所が分からないのに気に入ってるって……。
「気に入らないんじゃなかったのか」
「気に入らないんだったら、もう一回聴かせてとは、言わないでしょ?」
「それはそうだけどさ」
それはそうだ。だとしたら、結香は自分には合わないと思っただけなのか。
「結香、どう言う曲が合うと思うの?」
「あたしを、みんなが注目する、女神のような曲」
「もうええわ!」
そんな曲書けんわ! 二階堂さんに書いてもらえよ!
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とは言ったものの、僕はもう一回、結香の魅力を引き出せるよう、力の限りを尽くして作曲した。
そのために、結香の練習している様子を陰から見たり、海音と結香の話で盛り上がったり。その時だった。
「じゃあ、結香ちゃんは、泣いてばっかり、いたの?」
「昔は泣き虫だったなー」
「何話してるの?」
低い結香の声が聞こえる。どうやら見つかったようだ。
「ご、ごめん、結香の事、もっと知りたくて」
「もうなんなのよー!」
その結果、僕と海音は正座させられた。
「しばらくそれで反省しなさいよ」
「悪かったと思ってるから、許してよ」
「軽いわね。あたしそれ、意外と気にしてるんだからね!」
結香から泣き虫の話はあまり聞かなかったから気にしてないのかと思ったんだけど。
「で、曲はできたの?」
「まだ。だから結香を追っ……、いや、結香の事を考えてたんだよ」
「あたしの事を?」
「うん」
「気持ち悪。直接聞いてくれた方がまだよかったわ」
「それは悪かった。だけど気持ち悪いはやめてくれ」
「あ、ごめん直くん、つい……」
つい、じゃねーと思うけどな。どれだけ僕を気持ち悪いと思ってるんだ?
「いやでもね、あたしを追い回してたんでしょ?」
「何で分かったんだ! と言うか表現がおかしい!」
「いや、『追っ』って言ってたじゃん」
「ばれたか……」
「ばれたかじゃない! あんたはもっと反省しなさいよ!」
と言う事で、僕達は延々と正座させられることになった。そして結香はひとしきり僕に説教した後のことだった。
「足、崩していいよ」
突然、結香は僕に正座をやめさせた。
「それで実際、曲が出来たあと、どうやって練習するの?」
結香はいきなり現実的な話をはじめたが、どうやって練習するかは僕も気にしていた内容だ。
「二階堂さんに内緒で作ってるからな。みんなで練習する訳にもいかないからな」
「でもあたしも自分の歌をみんなの前で披露したい!」
「そうだよな」
でも、二階堂さんに隠していては発表が出来ない。どうしようか?
「練習場所は、私の部屋で、いいじゃない?」
「それなら多分見つからないな。じゃあ、この曲、どうやって発表する?」
「それも、私の部屋で」
「海音ちゃん、何かごめん」
「最終的にはライブで披露したいな」
とは言うものの、二階堂さんに見つからないようにするなら杏子にも言えなくなるので、
発表はできない。
僕らは部屋を出て駐車場まで一緒に向かった。
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【結香視点】
直くんと別れたあたしと海音ちゃんはあたしの車に乗り込んで、海音ちゃんを工場の部屋まで送り届けた。
「でも、直くんって作曲出来るから本当にすごいね」
「私も、最初、びっくりした」
「あたしに合うかは別として、あんないい曲だったら二階堂さんも絶対認めてくれると思うんだけどなー」
「結香ちゃんには、合ってると、思うよ」
「ありがとう、だったら二宮さんにこの曲発表したいってお願いしようかな?」
「お願い、するの?」
「するよ。二階堂さんにもあたしの事をもっと知って欲しいから」
「なんで?」
「あたしはかわいいと思うから」
「でたよ……」
あー、もう、海音ちゃんまで呆れないでよ。でもあたしはかわいいって言うとみんな呆れてしまうこれは何?
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「それにしても直くん、有浦さんとあんなに仲良くして、好きだと言いだせないわー」
「あの雰囲気じゃ、難しいよね」
「まさか直くん、もう有浦さんと付き合ってるんじゃ」
「一緒に、住んでるから、難しいよね」
「うう……」
一緒に住んでる時点であたしは勝てないじゃん! どうしよう!
「真凛さんの、意見も、聞いたよ」
「言ったの?」
「うん、恥ずかしがらないで」
「恥ずかしいよ」
「吉田さんが、好きな人は、他にもいるから」
「そうね、あたしには全員ライバルのようにも見えるわ」
「そう」
あ、海音ちゃんに話切られた!




