第20話.センマイコーヒー物語【杏子視点】
今年が始まってから一週間ぐらいたった。今日は直之さんがセンマイコーヒーにやってくる。
本当なら直之さんが入ることはできない。ただ今回は、カフェファクトの作曲に協力してくれる人が直之さんに会いたいと言ったので、私は直之さんを呼ぶことにした。
今回作曲をするのは二階堂遼雅さん。センマイコーヒーで、とても若くして県内リーダーを任されている人。
私は会社の玄関で直之さんを待っていると、彼はいつも通りの雰囲気でやって来た。
「杏子、おはよう」
「おはよう直之さん。早速だけど作曲に協力してくれる人を教えるよ」
私は会社の中に入り、その作曲してくれる彼の元へと向かう。その間でも直之さんは「どんな人なのかな」と聞いてくる。
「ここなの」
早速彼がいる場所へ着いた。ここはセンマイコーヒー営業部の企画室だけど、県内リーダーである彼はここにいる。
「二階堂さん、見学者が来られましたのでお通ししますね」
私は二階堂さんに声を掛けて許可が出たので企画室へ入った。
「おはよう二宮。応接室が空いてるから案内する」
「はい」
私は二階堂さんに応接室へ案内された。そこで私と直之さんは並んで座ったんだけど……。
やっぱり二階堂さんは格好いい。実は私、二階堂さんの事が好き。直之さんも好きだけど、今は私のいい相棒って感じかな?
「二階堂さん、今日はわざわざありがとうございます」
「いや、いいんだ」
「仕事は忙しくないんですか?」
「空いた時間にする。前も言ったが俺も曲が作れるのは嬉しい。何かあったら言ってくれ」
そう言われると私も嬉しくなる。さすがは二階堂さん。思わず見直してしまう。
「お前が吉田直之か?」
「はい」
「思った感じと違うな」
「はい?」
二階堂さんは思っていた感じと違うと言っている? 直之さんの事を一体どう思っていたのだろうか?
「お前も作曲をしてたようだが、今回から俺がその職務を遂行することになる。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
「これからは二階堂さんも曲を作ってくださるので安心してね」
私も二階堂さんに付け加えるように直之さんに言っておいた。ただ、全ての曲を二階堂さんが作るわけではない。
「そうだ。もう心配するな。お前を激務から解放するために二宮が俺に仕事を投げてきた。俺も忙しいが暇はある。お前はお前の事に集中しろ」
「わ、分かりました」
「そういえば二宮、ちょっと話したいことがある」
「はい、あ! ちょっと!」
何を私に話したいのだろうか? 私は二階堂さんに連れられて部屋を出た。
「何か頼りない男だな。あんなんでお前のアイドルユニットは大丈夫なのか?」
「そう見えると思いますけど、真面目でしっかりやってますよ。ただ、行動力がないのでそこは私が動いています」
「それはダメだな。まあ、二宮が動けばどうにかなるんじゃないのか?」
「そうですね。ありがとうございます!」
カフェファクトも今はなんとかなっている。そう言えば、直之さんはどのくらい動いているのだろうか?
「そういえば他になんかなかったか?」
「吉田さんの方がアイドルに接している時間が長いから作曲が出来やすいとおもうのですが?」
「プロデューサーはちょっとアイドルに接しすぎだ。俺は一回ライブを見たがもう曲の方針はまとまっている。お前に出来るのかって言う意味だろうが、出来るんだな、これが」
「実際のアイドルを見るために見学に行きましょうよ」
「どうせ狭い部屋の中でやってんだろ? 嫌だね」
「そんなこと言わないでくださいよ。練習は別の場所でやってますから」
「練習は狭い所じゃ出来ないだろうが。まあ、そこへ行くからよろしく頼む」
なんと! 後日、二階堂さんが来ることになった。私にとってはとんでもないサプライズだった。
「ありがとうございます!」
「戻るぞ」
「はい!」
私たちは直之さんの元へ戻った。たぶん今の私はすごくにやけている。
「待たせたな」
「直之さん、ごめんなさい」
「いや、いいんだ」
「今度、またお前の元に見学に行くことになった。その時はよろしく頼む」
「来るんですか?」
「ああ、どんな感じで練習してるのか気になったからな」
「ありがとうございます」
「礼は二宮に言ってくれ。あいつが見学に来ないかと誘ったからな」
その時、直之さんがちらっと私の方を見た。私が見学に行きましょうとは言ったけど、あまり意味がない。思わず出てしまった言葉。それでも来てくれるのだからうれしい。
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会社から出て、私は直之さんと今日の話をしていた。
「今度作曲してくれる二階堂さん、どうだった?」
「ちょっと、僕の苦手なタイプだな」
「そうかも」
意外と、直之さんの感想はシンプルだった。私も最初は苦手だったけど、ちょっと強引な所があって、そこがまた良かったりする。二階堂さんだって悪気はないのだから出来れば直之さんとは仲良くしてほしい。私の願望でしかないけど。
「でも、折角作曲をして下さるのだからね」
「そうだな。どんな曲が出来るのかは楽しみだな」
それは私も楽しみだ。
私はそのまま家に帰ったが、二階堂さんが来ることが嬉しくて家に帰ってからもずっとニヤニヤしていた。
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一週間ほど経ってから二階堂さんは突然練習場所へやって来た。
元々二階堂さんもが練習場所を見学するとは言っていたけど、連絡も何も無かった。これは一体どうなってるの?
「曲を持って来た」
「……」
「どうした?」
「どうして、ここに来たんですか?」
「前から行くと言っていただろう」
「何で何も連絡してくれないんですか?」
「いや、いきなり行った方がみんな自然にするだろう」
「そんな理由なんですか?」
「だってお前ら、俺が来るって言ったらそれに向けていろいろ作るだろう」
「そうですよね……。でも、連絡ぐらいは欲しかったです」
私は頭を抱えた。二階堂さんの言う通りだ。二階堂さんがいつ来るか知っていたらみんなでいい所を見せようとする。その辺り、彼の頭がいい所だ。
「ほら、後で聞けよ」
私は二階堂さんからMDを渡された。後で聞いてみるかな。
「センターは華南哲子だ。前回もセンターだったらしいからな」
「はい」
華南さんは前回、センターで頑張ってくれた。それを二階堂さんは考慮して作曲したのだろう。
「だからしっかりやってくれるだろう。お前からも言っておいてくれ」
彼はそう言うだけだった。華南さんは言わなくてもできる人なんだけどな。
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「今日はこの二階堂さんが来てくれました」
「この曲を作った二階堂遼雅だ。今日はお前たちの練習風景を見に来た。よろしく頼む」
そう言って二階堂さんはアイドルの様子を観察する。当然、私も観察されていた。
そして、私が休みに行こうとすると、
「二宮」
捕まっちゃった。
「何かお前がいつもと違うように見えたぞ」
「ありがとうございます」
「いつもは人に引っ張られてるばっかなのに」
「そんなことないですよ。いつも率先して動いてます!」
「そうだったらいいけどな」
もう。なんでこの人はこうおちょくってくるのだろう。
「おお、そうだ。あいつ、よさそうじゃん」
え?
「大きいけど、可愛いなあ。あとで話してこようか」
あれは有浦さん、だよね? あれ? 二階堂さん、有浦さんの事、気に入ってる?
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練習が終わった後、二階堂さんが直之さんに詰め寄ってる。
「二階堂さん! どうしたんですか?」
「ちょっと、話しかけようと思ったらあいつが邪魔してきたんだよ」
「邪魔はしているわけではないんです」
そう言っても二階堂さんは納得してくれない。有浦さんは直之さんの事が好きだから離れないだろう。二階堂さんも有浦さんに話しかけられない。
私も二階堂さんに有浦さんの事が好きになってもらっては困るから、私は有浦さんの意思を尊重する。
「有浦宇音って言うんだな。絶対話かけてやる」
二階堂さんは決意を述べたら仕方なく帰って行った。
というわけで、今回は杏子視点でした。いかがでしたでしょうか?




