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工場で働いていた僕がアイドルを作ったらハーレムができた  作者: KAZU
第二章 大みそかライブへ向かって(夏~年末まで)
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第19話-3.大みそかライブ


 『GARDEN CALL』のインスト版楽曲が流れ、アイドル達は舞台に向かって走り出した。それと同時に幕が開く。


 幕の方から光が漏れてくる。それは今までにないほどににぎやかで……。


「皆さんこんばんはー! カフェファクトの杏子です!」


 この会場の光景を杏子はどのように見てるのだろうか?


「早速ですが、ここでお知らせがあります」


「お知らせがあります」。杏子がこう言う時は何らかの重大発表がある。いよいよ僕が作った新曲が発表される時が来た。振付を作るところから踊れるようになるまで、この一曲は様々な思い出が詰まっている。それを見てもらえるのは楽しみだ。


「今日は……、新曲発表します!」


 会場から僕のいる所まで距離はあるものの、会場から歓声がわずかに聞こえてきた。


「早速最初の曲は『アイの日常』、いきます!」


 最初のMCを終えて杏子は走って自分のポジションに戻って行った。


 僕は『アイの日常』を掛ける。この曲は多分、僕がこのアイドルをプロデュースしてから一番聞いた曲だと思う。パァッと手を上げて、そこから曲がスタートする。


 この曲のセンターは海音だ。前回のライブから海音の歌い方は変わった。メンテナンスによるもので歌唱力が格段に上がった。最初の部分は力強く、メロの部分は優しく、僕の心まで包みこまれてゆく。足の動きもかなりスムーズになっている。


 海音の隣には杏子がいる。僕は彼女が今年一番頑張ったと思っている。僕の傍らで一からアイドルを立ち上げてきた杏子。場所探しからアイドルの指導、なかなかお客さんが集まらなかったり、会場の事で啓子と衝突したこともあったが、その度に杏子は成長した。今日は彼女の成果の発表の場なのかもしれない。


 他のアイドル達も曲を踊りきった。だが、みんな緊張しているようだった。曲の最中、恐る恐る動いていたアイドルもいてそういう諸々の様子は僕の方まで伝わって来た。


 次は新曲、『目を合わせてPARTY NIGHT』だ。ここで海音には少し引いてもらおう。この曲は哲子の見せどころだ。


「次は新曲です! 『目を合わせてPARTY NIGHT』と言う曲です。ここからはその曲でセンターを務める華南哲子さんにマイクを渡します!」


 ここで、トークは杏子から哲子の番になり、スポットライトは一際大きく光り輝いて哲子の白い肌を照らす。


「こんばんは。華南哲子です。今日は私の歌う曲が初披露と言う事でとても緊張しています。皆さんが満足して帰ってもらえるように一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」


 哲子は、言葉で表現できないくらいとても緊張しているように見えた。自分の曲。そのプレッシャーは僕には分からないが、そんなになるのか。それは今の哲子の様子で分かった。


「この曲は曲名の通り、パーティーをイメージした曲で、フォークダンスを基にしたダンスが特徴的です。この衣装の赤色に負けず、情熱を燃やしたいと思いますので、皆さん最後まで聞いてください」


 哲子がスタンバイを終えて、『目を合わせてPARTY NIGHT』が始まった。ジャズっぽい曲にして、しっとりと流れるようにした。赤がイメージカラーであり、アクティブな曲調に仕上げた。そこに情熱を感じて欲しいと思う。


 この曲の主役、哲子は赤いドレスを着ている。今日は今までと違う衣装で臨んだが、その哲子の姿は、他のアイドルと比較にならないほど一際目立って見える。


 哲子はトークから引き続き前に出て歌っている。歌詞もまた魅力的で、それに見合った歌い方になっていた。海音にこってり仕込まれたんだろう。でも、こうしてみると哲子をセンターにして本当に良かったと思う。


 そして隣にはお決まりの啓子を持って来ている。演技中なので彼女からの助言は出来ないが、心の支えになればと思ってこの位置に配置した。


 サビに入り、メンバーの動きが活発になって来た。もともとアクティブな曲調なので、最初は終始このような感じで行く予定だったが、クールな真凛の助言でサビだけが活発な振付となった。でもそれが僕はメリハリがついていいと思う。その真凛は哲子と対照的な青いドレスを着ていて綺麗だった。


 そして、またメロに入りアイドル達は落ち着きを取り戻す。そしてまたサビに入り活発に動く。ここから最後までは終始活発な振付のまま曲が終わる。


 完璧な演技だった。すべて終わったら哲子を褒めてやりたい。突然のセンター抜擢、ライブ会場の場所選びで揉め、歌い方を海音から厳しく指導されるも、彼女はそれに耐え抜きやりきったのだ。


「みんな、ありがとう!」


 普段はおとなしめの哲子だが、大きな声で観客に感謝の言葉を伝える。それで会場からは一際大きな拍手と歓声が送られた。


「引き続き、私から次の曲紹介をさせていただきます! 続いてはおなじみ! 『GARDEN CALL』です! では、最後までよろしくお願いします!」


 哲子は続いてMCをする。今回も最後は『GARDEN CALL』だ。


 早速波の音が流れ始め、センターには海音と杏子が現れた。哲子は後方へ移動して、最後の宴が始まった。哲子は後方へ移動する。


 僕はそれを見ながら今年一年の事を振り返っていた。


 思えば、長い一年だった。いや、半年だったけど長かった。それもこの曲を踊れば終わりだ。海音が歌っているこの歌詞も当然その期間の中で考えられた。彼女に見惚れながら。


 この歌の一節にある『夏のひととき、恋の予感がする』と言う歌詞もこの時考えたもので、その頃はまだこのプロジェクトが出来たばっかりで、僕も希望に満ち溢れていた。アイドルを作っていくのが楽しかった。


 希望を阻むようなこともいくつかあった。例えば後ろの列で踊っている啓子と哲子はカフェファクトに入れるのに苦労した。彼女らに頼みこんで、アイドル達は一週間一生懸命練習して、やっと彼女たちを納得させることが出来た。


 前列で踊っているアイドルにも厳しい出来事はあった。その後起きたのが結香と若奈の脱退騒動だ。結香は練習についていけず、若奈は家の都合で脱退しそうになったが、結香には説得しても無理だったので、旅行に行く約束をして繋ぎとめた。若奈には母親を説得しようとしたがそれも失敗。若奈を手放して帰ろうとしたが、杏子がアイドル達と一緒に駆けつけてきたおかげで若奈も辞めずに済んだ。


 その杏子はと言うと、最初のライブで思うように人が入らなかったり、会場の事で啓子や哲子と衝突したり、悔しい思いをいくつかしてきた。杏子はそれで溜めた涙を昇華しようとしているような精いっぱいの歌いっぷりだった。


 曲は再びメロに入り、海音から引き継ぐようにして歌う杏子。


 彼女は観客が入らない事を悔しがっていた。その状況で別のホールを予約したせいで啓子と哲子から反発されてしまった。僕も事態を収拾しようとしたが、最後はこのホールを満員にできたら別の会場でしてもいいと啓子が言った。


 そして、今日は今までと比べても観客が多かった。でも、満員までには程遠く、これでもまだまだなんだな、と思った。


 杏子は歌い終えて、ヴォーカルは海音にバトンタッチされる。


 しかし、最近は杏子を泣かせてばかりだ。今回のライブは笑顔で終わって欲しい。


 振付上、チラチラと顔が見えるが表情までは読み取れなかった。


 まあそれは、ライブが終わるまで待つことにして。


 まあ、これだけの大歓声に迎え入れられたら杏子も満足なんじゃないか? そんな中、ライブは終了した。


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