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工場で働いていた僕がアイドルを作ったらハーレムができた  作者: KAZU
第二章 大みそかライブへ向かって(夏~年末まで)
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第18話-3.クリスマス問題

 次の練習日の夕方に杏子とダンス対決をした。僕が先行で踊る。必死に練習をしたので大分体は動くようになっていた。


 僕の番が終わると杏子が感想を聞いてくる。


「大分上達したね。踊ってみてどう?」

「どうって……いや、この踊りの簡単な箇所は難しい箇所がよく分かって勉強になった」

「そうなの? それなら『PARTY NIGHT』もやってみる?」

「まだやるのか?」

「この曲も、簡単な場所や難しい場所が分かるなら」

「そうだな、やってみるか」


 と言うわけで『目を合わせて PARTY NIGHT』も踊ることになった。その前に杏子の踊る番だが、ダンスは完璧だった。僕は完全に負けた。


********


 今回の勝負でダンスは見てるほど簡単なものではないことが分かった。


「直くん、二宮さんとダンス対決したの?」

「したよ。見てただろ。僕が練習してたの」

「合宿の時? あの時はあまり部屋にいなかったから。何かやってるなーって言う感じで」

「そんな感じだったのか?」

「ちょっとね。他のみんなと遊んでた」

「そうだったのか」

「うん。それにあたしはいなかった方がいいでしょ? 直くんにも邪魔になるし」

「まあそう言われてみれば」


 結香は僕に気を使ったようだが……。


「で、少しは踊れるようになったの?」

「いや、難しいな」

「そうでしょ? 昔のあたしの気持ち、少しは分かったんじゃない?」

「少しはな。あそこまで酷くはないけど」

「もう! バカにしないで」


 確かにこれは難しい。結香も踊れなかったもんな。でもどうやったら今のようにすんなり踊れるんだ? 僕は大して踊れてないと思うぞ。


「ごめん、結香。難しいよな」

「だったら直くんも一緒に出る? 大みそかライブ」

「僕はプロデューサーだから出られないよ」

「織田さんがいるじゃない?」

「織田さんに全部やらせて僕が出るってか? 織田さん、あれが一人でできるかな?」


 僕が本番中にやってる事は織田さん一人では無理である。それだから二人で左右の舞台脇にいるんだけど。


「直之さん、『目を合わせて PARTY NIGHT』の振付練習もしようか?」


 この後、杏子がまたダンスレッスンをしてくれた。最近はこのほかにもいろいろすることがあり、帰るのが遅くなっていた。そして、その日を迎えた。


 その日とは、本番……ではなく、今日は十二月二十四日。そう、クリスマスイブだ。この日は本番のちょうど一週間前に当たる。そのためか、みんな遅くまで練習している。ただ、今までは比較的早く終わっていたはずだが。僕も最近はすることが多いために早く帰れない。


 この日も仕事を終えて帰ろうとしたが、練習場所の近くの会議室でブログを更新してたので、それが終わると練習場所へ挨拶に行った。すると、帰り支度をしている杏子を発見した。


「杏子、お疲れ様」

「直之さんこそ、いつもお疲れ様。そう言えば、みんなクリスマスだから直之さんと過ごしたいって」

「そうだったのか。パーティーでも開けばよかったな」

「そうだね。本番前だけど、息抜きしてもよかった」


 パーティー。忙しすぎてそれどころじゃないということもあったけど、来年はやりたいな。


「それじゃあ今日は帰るね」

「ああ、気を付けて」


 杏子は帰った。そして、辺りを見回すと若奈だけが残っていた。


「若奈」

「吉田さん、お疲れ様です。吉田さんも何か御用で残られているのですか?」

「そう、本番前だからいろいろ忙しくてさ」

「そうですか。お忙しいんですね」


 プロデューサーの仕事は多岐にわたってあるからな。それに加えて今は振り付けを覚えているためにその時間も加わってくる。


「でも、私もそろそろお暇させて頂きます」

「じゃあ、一緒に出ようか」


 僕も仕事が終わったので若奈と一緒に帰ることにする。


「駅まで送って行こうか?」

「はい、かしこまりました」


 僕は若奈を駅まで送って行くことにした。車内では若奈が脱退しそうだったころの話になった。


「吉田さん、最近ダンスを覚えているのですか?」

「そうだ。難しいけどな。結香が辞めたいって言ったのがよく分かったよ」


 結香が脱退しようとしたのはダンスが直接の理由ではなかったが。


「北原さんも辞めようとしていましたね。その時は私もそれどころではなくて、失礼しました」

「そうだったな。いや、でも、若奈のお母さんを説得するのは大変だったよ。いや、説得できなかったんだった」

「あの時はどうなるかと思いました。もう駄目だと、これ以上アイドル活動を出来ないと思いました」

「僕もだよ。でも、杏子が乱入してきてよかった」


 結局、杏子の行動に救われた。あれがなかったら、若奈は……。


「ありがとうございます。あのときの事は感謝しても感謝しきれません」


 それは、この件の後、アイドルの前で若奈に抱きしめられたときに感じた。若奈は普段、そう言うことはあまりしない。あの時、僕は強く抱きしめられていたから。


「あの時は必死だった。絶対若奈を辞めさせてはいけないと思って……」

「ありがとうございます」


 若奈は助手席で小さくお辞儀をしていた。それが何かかわいらしく見えた。そう話しているうちに駅に着いた。


「若奈、気を付けて帰ってよ」

「ありがとうございます。いろいろありましたが、これからもがんばりましょう」

「うん、がんばろう」


 車から降りると、若奈は駅の方向へ向かった。クリスマスのイルミネーションが明々としている。なんか、元気が出るな。あと一週間、がんばらないと。


********


 それから数日経ち、本番も間近。今日の練習では僕も一緒に踊る。僕はあまり得意ではないが。


 そして、休憩時間には先日のクリスマスについていろいろ聞かれる始末だ。


「直くん、クリスマスの日、楽しかった?」

「何で今こう言うことを聞くんだよ。それにその話は飽きたよ」


 特にこの幼馴染み、北原結香は休憩になる度に聞いてくる。


「吉田さん、ちょっと」


 声がする方向に振り向いたら、啓子が手招きしていた。


「ここの手の動きはこうでいいかしら」

「合ってるよ」

「足を付けると合わないのかしら」


 啓子からはダンスについての相談があった。彼女は動きながら踊るのが苦手だったので、手と足の動きが合っているかどうかを見て欲しいという事だった。


「少し動きながらやってみようか」


 僕は啓子の横に着き、手と足をどのタイミングで動かすかを一緒に考えた。手は伸ばして曲げて伸ばすから、ここは足の動きと一緒だ。その後が手をそのままの状態にして歩くので、油断してると手が曲がってしまう。僕も啓子の横について踊るが体勢がきつい。後は慣れるしかない。


「僕が教えられるのはここまでかな? 後は慣れるしかないか」

「うーん。ありがとう。今日は敬語で話さないのね」

「え、そうですか?」

「咄嗟に出ちゃうのね。吉田さん、まだ私の事が怖いの?」

「いえ、啓子さんは優しいですよ」

「そうかしら、でも今は吉田さんの事、認めてるけどね」

「ありがとうございます」


 何か知らないが成り行きで啓子に褒められる。でも、それをよしとしないものが……。


「直くん、あたしも教えて」

「どこが分からない?」

「うーん、どこか分からない」

「呼んだだけかよ」

「うん」


 結香は僕を呼んだだけだった。なら呼ぶな!


 そしてまたみんなで練習をして次の休み時間、


「直くん、クリスマスの日の事教えて」

「結香、休憩になる度に聞いてないか?」


 結香は休憩に入る度にクリスマスの事を聞いてくる。最近はいつもこうだ。もういい加減にしてくれ。


「教えてよ」

「何で? 話したくないって言ってるのに」

「吉田さんとはお互いに遅くなったから一緒に出ただけですよ」

「若奈!?」


 突然現れた若奈が結香に本当の事を伝えた。結香の機嫌が悪くなるので言って欲しくはなかったけど。


「若奈、それは言いたくないんだけど」

「申し訳ありません。しかし、北原さんには当日何も無かったことを伝えないといけないと私は考えています」

「それは、なぜ」

「北原さんはその事を聞きたいのではありませんか?」

「そうよ、大和さん。でも本当に何も無かったの?」

「はい、一緒に此処を出て、私は電車で来ていますので、駅まで送ってもらっただけです」

「本当に、それだけなの?」

「はい」


 神妙な面持ちで聞く結香に対して大和さんは自信のある表情で答えている。何も無いと聞かされた後の結香は少し笑ったように思えた。


「うん、それならいい。直くん、ごめんね。何回も聞いちゃって」


 結香はニコッと笑ってどこかへ行ってしまった。一体何なんだよ。


 そしてまた、練習があり、それが終わって今日のレッスンは終了した。


 その直後、啓子がやってきてお礼を言った。


「吉田さん、今日はいろいろ教えてくれてありがとう」

「いや、いいんだよ。これはプロデューサーとしてやらないと」

「大変だと思うけどがんばってね。吉田さんなら絶対やりきれる」

「……はあ」


 変なの。啓子ってこんな人だったっけ。もっとこう、今までは強く当たってきてなかったか?


「どうしたの?」

「いや、な、何でもないです」


 ダメだ。やっぱり敬語が出てしまうな。もう少し落ち着いて接することが出来ればいいんだけど。


 そう思っていたら、バシーン! と背中に衝撃が走った。


「直くん! 何啓子さんに好かれてんの!?」

「いや、分からないんだよ。いつもの啓子じゃない」

「ったく。いい加減気付いたらどうなの?」

「何を」

「さあ」

「さあって」


 凄い勢いで現れて話しかける結香だが、一体何を言いたいんだ? というかいきなり背中を叩くな。


 実はこの日で練習は終わり、残りの数日間、後は各自での練習になる。


********


 次の日、ここで今年の仕事は最後。まだ大みそかライブがあるけど、資料室に入るのは年内ラストだ。いや、大みそかに入るか。でもライブの準備に少し入るだけだ。


 と言うわけで、今日は資料室の大掃除をすることにした。


 ここはカフェファクトの全てが始まった所だから愛着がある。杏子と出会った場所でもあり、よくここで作曲をしていた。知らず知らずのうちに何かと入っていた場所。


 数ある資料はどうしていいか分からないので手を付けず、資料室を綺麗にしていく。


 資料室、今年もありがとう。


********


 そして、大みそかを迎えた。だが、こんな時に限って結香が遅刻したので、しょうがなく迎えに行く。


「結香あっ! 何でこんな日に遅刻するんだよ!」

「何か分かんないけど起きれなかった!」

「夜更かししたんじゃないか?」

「してないよ! 何か分かんないけど時計を見たら遅刻してたんだもん!」


 「遅刻してたんだもん」、じゃねーよ! まったくどうなってるんだ。こっちは資料室にいったん戻らなければいけないのに。


 僕は結香を送って行く。


「みんな、おはよう」


 僕は挨拶した。


「北原さん! 何でこんな大事な日に遅刻するの!?」

「ごめん! 朝起きたら目覚ましが」

「もういいから! 次から気を付けて!」

「はい」


 杏子が結香を叱った。結香は反省しているように見えたが……。でも、後ろからも声が聞こえる。


「もう、この子は大事な時に遅刻するんだから」


 これは啓子の声で、少し呆れているようだった。


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