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工場で働いていた僕がアイドルを作ったらハーレムができた  作者: KAZU
第二章 大みそかライブへ向かって(夏~年末まで)
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第12話-2.最初の本番

 いよいよ本番が始まるので、アイドル達とはお別れだ。僕は会場にいるアイドルを呼びに行った。


「結香、もう本番だよ」

「もうそんな時間ね、ありがとう、直くん」


 結香は控室の方に行った。辺りを見回したけど、みんないないようだな。


 僕は舞台脇にスタンバイしていなければならない。暗い場所でアイドル達が見えずに残念だが、仕事があるためにここにいるしかない。


 さらに、ここからだと会場の様子も見えないが、さっきの様子だと、お客さんはかなり少ないようだった。辺りを見回しても誰か分かるぐらいだったし。


 本番が始まると、BGMが鳴って、アイドル達が元気よく会場に出て行った。彼女たちはちょうど僕の後ろを通るようになる。


 最初は挨拶があるので、杏子が舞台の先頭へ出た。お客さんの少ない会場の方を向いて話すようになる。本番前にあれだけお客さんの人数を気にしていた杏子が会場を見て落ち込まなければいいんだけど……。


「みなさん! こんばんは! カフェファクトのリーダー、二宮杏子です! 今日は私たちのライブに来て下さってありごとうございます! 今日が私たちの初の公式ライブになります! 皆さん、楽しんでください!」


 杏子はそう挨拶をした。本番前に短い挨拶を考えるのに精いっぱいだと語っていた杏子。それでも、この挨拶はいいと思う。盛りつけは後からすればいい。


 まず、最初に聞こえてきた曲は『アイの日常』だ。聞こえてきたと言っても曲を掛けたのは僕だけど。


『アイの日常』は日常を描いた歌である。これは最初の曲なだけにまだ盛り上がらないし、そう言う計算だ。でも、手掛けた時期が早く、みんな踊り慣れてる曲だ。



 アイドル達は、凄く安定して、落ち着いて踊っていた。


 この曲を聴いて思い出すのが、抜き打ちライブの事だけど、その時からあまり何もいじっていない。だから、結香の動きが前と違って洗練されたものになっていた事はよく分かった。またあれから一ヶ月くらいしか経っていないのに、だ。そして、海音のヴォーカルも安定していた。


 アイドル達は一生懸命踊っている。でも、この曲は実はもっと肩を抜いて歌ってもいい曲なはず。真剣にやるのはいいんだけど、アイドル達には後半失速しないことを願う。


 会場の様子はよく分からないが、何も聞こえていないという事は特に盛り上がっていない、聴いている状態だと思う。


 次は、『ソラへ』。この曲もゆったりしているため、盛り上がりには欠ける。そのため、会場はまだ静かな感じではある。僕も、普通に聴いていれば寝てしまう所だが、今日は舞台裏にいなければならないので眠気覚ましにもその踊りを注視する。


 海音がしっとりと歌い上げてくれるおかげで、会場がいい雰囲気になっているのが、ここまで伝わる。海音の今後の進化が楽しみだ。


 踊りだけではない。ダンスもゆったりしている。『ソラへ』とはこう言う曲。だから二番目に入れたんだ。


 『ソラへ』が終わって、ここで、杏子のトークを挟む。「みなさん、楽しんでいますか?」と、杏子は語りかける。会場のお客さんはどう思っているか分からないけど、この語りかけはいい感じだ。


 その後、『GARDEN CALL』の説明へと入る。


「次の曲は『GARDEN CALL』です。この曲は、夏の浜辺をイメージした曲で、振り付けも私たちで考えました。夏の浜辺の世界をごゆっくり堪能して下さい!」


 杏子はこれでサクッと説明を終わらせ、早めに『GARDEN CALL』へ向かう。ライブが盛り上がるように『GARDEN CALL』を最後に持って来たが、果たしてどうか?


 そして、『GARDEN CALL』が掛かると、少人数にもかかわらず手拍子や歓声が聞こえてきて盛り上がっていることが伝わって来た。この曲は終始アップテンポの曲で、今までの『アイの日常』や『ソラへ』とは全く雰囲気が違う。


 僕は隙間から会場は見えないが、舞台だけでも盛り上がっている様子を確認する。


 ちなみに、今回の並びは海音が真ん中で前列の両サイドに杏子と結香を配置している。あと、後列の一番目立たない部分に緑を置いている。あと、前のアイドルが見えなくなるから宇音も後列。啓子と哲子も後列。残りの真凛と若奈は前列に配置している。場所変更はないため、最初から最後までこの並びのままだ。


 曲の始めから海音が歌い、ダンスが始まっている。同じ曲調が続くので、全体が盛り上がったまま、曲は続く。


 曲はサビからメロの部分に入った。以前は結香が歌っていたが今回は歌わないようだ。代わりに杏子が歌っていた。杏子の歌声は久しぶりではないか。たぶん。いつも話している割に杏子が歌っている声はあまり聞いたことがなかったりする。でも、さすが彼女の歌声は力強くて芯がある、しっかりした声だ。さらに女性特有のやわらかさもある。聴いてて落ち着くなあ。


 この曲は同じようなメロディーが延々と繰り返されている。だから会場の盛り上がりも気になるのだが、残念ながらここからでは手拍子と歓声しか聞こえない。会場はどんな感じだったのか後でアイドルに聞こうか。


 もうすぐ最後だ。ここからじゃ会場しか見えないけど、盛り上がって見えるからよしとするか。かなり投げやりだけど。


 大盛況の中、ライブは終了した。最後、それはもう大歓声だった。あれだけの人数で、よくこれだけ盛り上がれるかと言うぐらいの。


 本当に今日はみんな良く頑張ったと思う。でもまだやることがある。実は、哲子に曲を歌ってもらいたい、その許可を取りたいと思っていた。早速、本人を探して直撃してみた。


「哲子、お疲れ様、良かったよ!」

「はい」

「ん、吉田さん。何か?」


 哲子に声をかけると啓子もれなく反応する。出来れば今回啓子には席をはずしてほしかったんだが。でも、さすがにちょっと二人で話をさせてとは言えないので。


「次の曲を哲子メインヴォーカルで歌って欲しいんだけど、いいかな」

「え? 私が? メインヴォーカルって……」

「うん、そう言う事だけど」

「そ、そうですよね。え?」


 哲子は驚きすぎて、あわわ、とばかり言って言葉が出ない。


「実は曲のレパートリーが少ないから新曲が作りたいんだ。それを哲子のイメージで作ろうと思って……」

「ちょっと待って。哲子、状況の整理がついてないから……」

「あ、すみません」


 僕が次々話していたら啓子に止められた。矢継ぎ早に話し過ぎてしまったようだ。


「そう言う事ね。吉田さんは新曲が作りたいんだ」

「はい、もう曲が今日やったくらいしかなくて……」

「哲子、新曲が作りたいから歌ってほしいって」

「はあ、すみません。いいですよ。よろしくお願いします」

「良かった。ありがとう」

「良かったね、哲子」


 啓子は哲子を褒めている。僕も哲子は褒めてあげたい。哲子にはぜひこれからはメインヴォーカルとして頑張って欲しい、心から思う。


********


 みんながいなくなった控室に僕は荷物を取りに行っていた。


「直之さん、今日はお疲れさまでした」

「こちらこそ」


 折角、ライブは成功したのに、杏子はなんとなく寂しそうな表情を浮かべていた。


「お客さん、少なかったね」

「杏子……」


 僕は居た堪れない感情に襲われる。


「あれだけ呼び込んだのに、あれだけ行動したのに、これだけ?そんなの……ありえないよ……」

「杏子、よくやったよ。僕は一人も来ないと思ってたから」

「ううっ、少ないよ……」

「杏子が呼び込んでくれなかったらもっと少なかったよ。それは感謝してる。次があるんだから、そこで頑張ろうよ」

「ううっ、直之さん……」


 僕は杏子を慰めるために距離を詰めていた。杏子は僕に身を預け、肩に顔をうずめて泣いていた。


「杏子……」


 僕は、とにかく慰めなくては、と思って頭を撫でていた。少し時間が経って、杏子は顔を上げた。


「あ、ごめんなさい、つい……」

「いいんだ。まだ泣いてるよ」

「うん、でも、スッキリした。次はお客さんを入れようと思う。そのためにはまずはPRかな?」

「うん、嬉しそうだね」


 やっと杏子に笑顔が戻った。杏子を外まで送ると、僕も帰った。帰りの車の中では僕を心配する声が……。


「吉田さん、遅い」

「心配しましたよ」

「どの女と一緒にいたの? ねえ直之さん」


 真凛以外は不貞腐れてるじゃないか。

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