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工場で働いていた僕がアイドルを作ったらハーレムができた  作者: KAZU
第二章 大みそかライブへ向かって(夏~年末まで)
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第11話-1.公式ライブ、決定!

「みなさん! ついに初の公式ライブの日程、決まりました!」


 今、僕達は大和旅館にいる。なぜなら、結香との旅行から帰って来た日に杏子からカフェファクトのLINEに『大和旅館に来るように』と、書いてあったからだ。


 そして今日、カフェファクトのメンバー全員が大和旅館に集結していると言うわけだが。


「その日は……八月二十五日です!」

「あと二週かしかないの!?」

「いくらなんでも無茶すぎますよ!」


 アイドル達は次のライブのまでの時間の無さに驚いているが、啓子と哲子の声が一番よく聞こえてきた。


「場所はBOOTHのステージで」

「あ、でもあのステージが使われるのね」

「村原先輩! 良かったですね!」


 場所の発表が行われると、啓子と哲子は自分の会社のステージが使われることを喜んでいたが、そう来たか!


 でも一人、凄く思い詰めた、怖い表情をしているアイドルがいた。


「えー? ライブ、もうすぐそこだよ」


 そのアイドルは北原結香。僕の幼馴染みだ。彼女は以前、自信をなくして辞めかけたけど、僕が説得してもう一回アイドルをすることになった。すると、腕前が急成長して今に至る。問題なさそうなのに、何をそんなに思い詰めているのだろうか?


「あたしは、途中で抜けちゃったから、ちょっと、時間が足りないかな? 学校もあるし」


 結香は腕前がライブに間に合わないと思っていたのだが、そうなのか? そう言う結香に杏子は声をかける。


「北原さん、悪いけどもう決まったから今から予定を変えることはできないかな? でも、最近の北原さんは少しづつ良くなっているから、上手にできると思うから、そこは気にしないで」

「うーん、空いた時間に練習しなきゃ間に合わないね」


 結香は返事したが、前の結香と比べてすごくまともに返していて異常だ。


「大和さんは?」

「私ですか? 私は大丈夫です。練習はしっかりしました」


 若奈は杏子の質問に対して若奈はアピールをするが、後ろで怖い顔をしている女子が……。


「少し踊ってみます」


 立ち上がり踊る若奈。GARDEN CALLのゆったりした振付を、着物を着たまま。それは美しい、まるで舞のようだ。


「ありがとうございます。今週はまだ旅館の仕事があるのですが、来週からは練習に参加できますので、よろしくお願い致します」


 若奈は深々と頭を下げた。相変わらずお辞儀の角度は綺麗だった。


「悔しいっ! 絶対上手に踊ってやる!」


 結香は小さな声でそう言った。僕にはばっちり聞こえていたけど。


「あっ!話を続けます。その次のライブは十月十六日、場所は同じくBOOTHのホールです」


 次のライブまで決まっていた。アイドルの反応は様々だが、啓子と哲子は喜んでいた。


「またホールを使ってくれるのね。ありがとう」

「いえ……」


 杏子は少し困惑気味に頭を下げた。


「これでミーティングは終わりです! 今日は気分転換なのでこの後は各自自由にしてください」


 杏子がそう言った途端、結香は飛び出して行った。何をするつもりだろうか? 僕は結香の後をつけてみた。いや、僕はストーカーじゃないぞ。


「直之さん!」

「何?」


 杏子に呼び止められた。怒られるのかな?


「ごめんなさい。私、ちょっと部屋に戻るの遅くなりそうだから、先に戻っててもいいよ」

「いや、それがさあ、結香がものすごい勢いで飛び出したから……。あれ? いない」


 気付いたら結香をいなかった。あちゃ~。どこに行ったのだろうか?


「あ、ごめん杏子、結香を探さないと」

「すごい勢いだったけど、旅館から飛び出してはないと思う。ちょっと用事があるから、ごめんなさい」


 杏子は足早に立ち去った。つまり、この広い旅館を一人で探さないといけないのか。


「さあ、どうやって探すか」


 でも、どうやって探していいか分からない。今いるのはエントランスの近くだから、行けるところとしては外か中庭か、部屋か、この先のエントランスかだ。結香の場合、ショックで帰ろうとする可能性もあるから厄介だ。ただ、この旅館は結構山奥にあるため、帰ることはできないだろう。外へ出ることはあっても。


 なので、まずは外を探した。かなり回ってみたが、結香はいなかった。


「ったく……どこに行ったんだ?」


 僕は、腹が立ってきたが、元はと言えば自分が結香を見失ったからこうなっている。



 結香の車はあるので、帰ってはいないようだ。


 次に僕はエントランスを探すことにした。探していると何回か旅館の職員から「何かお探しですか?」と聞かれたけど、「いえ、何も……」とごまかした。


 となると、次は中庭か。ここから一番近いし。


 中庭へ向かって移動しているときに海音に会った。


「あ、海音」

「吉田さん、何しているんですか?」

「結香を探してるんだよ」

「結香ちゃん、ですか?」

「うん。海音は結香を見なかったか?」

「はい。見てないです」

「見てないか……」


 だったら中庭も探さないとな。最後に中庭を探して万策尽きた。僕は捜索を諦めて部屋に戻った。


 部屋に戻ると結香が振付の練習をしていた。結香も僕と同じ部屋なのだが、僕はがっくりした。今までの時間はなんだったんだ。


「結香、ここにいたのか? 探しまわったんだぞ」

「え?部屋でずっと練習してたよ。ちょうど良かった。直くん、ちょっとあたしに付き合ってよ」

「付き合ってって、何?」

「何って、これから踊るから、見てて」


 結香は踊り始めた。ゆったりと落ち着いて踊れていていい感じだと思うが、何が納得いかないんだろう。


「うーん、イマイチ」


 結香は踊り終わったが、そう呟いていて、表情が暗い。


「直くん、どうだった?」

「上手く踊れてたよ」

「本当に? 手、めちゃくちゃだったでしょ?」

「そこまで見てないよ」

「もう一回見てて!」


 やれやれ。結香はもう一度踊って見せた。今回はじっくり観察したが、まあまあいいんじゃないか? さっきのように質問されれば答えるけど……。


「あのね、直くん、まず最初のね……」


 そこから始まった結香の心配が止まらなかった。


「手、ちゃんと動いてた?」

「別に違和感はなかった」

「じゃあ、後ろに下がるステップはどう?」

「今のところはいいよ。あとはみんなで踊った時、もつれないかどうかだろうな」

「あと、サビで最初に手を上げるタイミング、遅れたけど」

「そんな気はしたけど、曲をかけてみないと分からないな」

「そう。結局、全体練習で身につけないといけないことなのね?」

「そうだなあ」

「いや、でも、踊らないと! 練習しないとダメ!」


 結香はまた踊り始めた。つまり結香が本気を出したということだ。


「ただいま」


 杏子が帰ってきたが、結香はまだ踊っていた。今までよりも真剣に。


「北原さん、踊ってるね」

「いや、凄く真剣だな」

「どんな感じなの?」

「いや、凄く質問されたんだけど、答えられなかった」

「まあ、直之さん、いいんじゃないの? 北原さん、踊っているわけだし」

「そうだな。全体練習で身につけないとって言ってたから、これからだな」

「そうね。そう言われたら私もしっかりスケジュールを考えないと」

「そこは僕も頼ってよ」

「うん、いつも通りでいいよ」


 いつもイマイチ頼られてないような気がする。彼女はスマホを取りだし、どこかに電話をかけ始めた。話を聞いた感じでは、今後の練習の事のようだ。杏子は電話が終わったら僕に話しかけてきた。


「直之さん、決まったよ」

「何が?」

「練習場所を毎日解放できるようになったよ」

「そうなの?」

「今までは休みの日もあったけど、やっと解放できたよ。他のアイドルには夕食の時に話すよ」

「分かった。それにしても、結香の奴。本気になりすぎて怖い……」


 それを聞いて杏子はくすっと笑った。


 その日の夕食は人数にしては大きな部屋だった。


「みなさん、来週からエブリディフィットネスの練習場所が毎日解放できることになりました。これからもがんばりましょう!」


 杏子はそう言ったが、マイクを使っていたため、声は大きかった。まあ、杏子は元々体力があるから結構声は張れる方だ。


「じゃあ、あ、直之さん。隣へ来て下さい」


 あら? 杏子からお呼びがかかってしまった。


「さあ、直之さん乾杯の掛け声をよろしくお願いします」

「え? ああ、みなさん。今日はお暑い中、御苦労さまです」


 僕がそう言うと、会場が急に笑いに包まれた。何故だ?


「さあ、皆さん。これからもがんばりましょう! カンパーイ!」


 みんな乾杯して、僕は席に戻った。


「吉田さん、なんか違くない?」

「直くん、あなたの挨拶おもしろすぎたけど、自覚ない?」


 席で啓子や結香にそう言われる。いや、思い当たる所はないが……。


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