第7話-3.アイドルについて決めましょう(活動内容・ステージ編)
ついに始動ミーティングが始まった。杏子は真剣な顔で早速アイドル達に話しかけた。
「皆さんにアイドルになった自覚を持ってもらいたい。そこで今日はこのアイドルの基本的な事を決めるために皆さんに集まってもらいました。まずは、直之さんからこのアイドルの目的について話してもらいます。まだ彼女たちには話してないよね?」
杏子は目的について話すよう僕に振る。予め僕が説明することは決まっていたが、いざ振られると緊張が増してきた。今の杏子は笑顔だが、言葉に少し棘があるような感じがして、何だか不安になる。
「う、うん。はい。このアイドルは私共の会社『ヒロイック』の専属アイドルとして活動します。まだ活動内容は決まっていないのですが……」
僕は大分言葉に詰まってきた。ああ、なんか思ったように説明ができない。
「みんなには言ってなかった。ごめん。言ってた人もいるけど」
「私は聞いたわ」
「契約書にも書いてあった!」
「私は聞いてないけど」
僕が断りと謝罪をすると、啓子、哲子、結香から返事が返ってきたが結香だけはこの話を聞いていなかったようだ。
「結香がまだ聞いていないようだから説明するよ。アイドルも僕の提案じゃなくて上司からの指示で始めた。あと、会社専属っていっても会社の製品を説明してくれとかそういうことは言わないよ。結香、分かってくれた?」
結香はこんな説明で本当に納得したのだろうか?
「分かった。私の直くんから聞くヒロイックの機械には興味あるし」
「分かってくれたようだね。説明に自信がなったんだけど」
「それは大丈夫よ。直くん、昔っからこんな話し方だったじゃない」
「どういう事だ?」
「あの、突然申し訳ありませんが、御家の関係で女将の仕事を続けさせて頂きますが、御了承頂けますか?」
僕と結香のやりあいを押し切って若奈が僕に了承を求めてきた。今回は止められたがこういう結香とのやりあいは結構好きだ。
「いいよ。そんな決まりはないよ。お母さんによろしく伝えて」
「かしこまりました」
若奈は頭を深々と下げる。長い黒髪が地面へ届きそうだ。
「分かってくれてよかった。杏子からは何かない?」
「活動内容が決まってないようだから活動内容を決めましょう」
そうだった。活動内容を決めないといけないんだった。本当は僕が決めなきゃいけないんだけど。
「みなさんは何がやりたいですか?」
「アイドルって言ったら歌って踊るイメージがあるわ」
「私もそう思います」
「あたしはグラビアもやりたいなー。自分でかわいいと思っているから」
「グラビアはなしで、歌と踊りがやりたい!」
「何でグラビアはなしなの?」
「あんたが目立っちゃうよ!」
「え? そのつもりだけど」
「分かった! 分かったから!」
僕は、結香と宇音が言い争いになりそうだったので止めに入ることにした。
「後で決めるから言い争いはしないで」
「はい!」
「でも……」
僕が止めに入るとすぐに分かってくれた宇音にまだ何か言いたそうな結香。確かに結香はかわいいけど、ちょっと子供っぽい。
「他に何かない?」
「ありません」
「私も」
「歌とダンスでいいと思いますよ。私もやってみたい!」
若奈と海音からは何もないようで、真凛からは特に前向きな内容の返事が返ってきた。
「だったら、歌とダンスとグラビアでいいかな?」
「え~!? グラビアは北原さん一人でやればいいんじゃ!?」
「私は歌とダンスだけでいいです」
「私は家柄の関係もありますのでグラビアをするのは若干宜しくないと存じます」
宇音や哲子、若奈はあまりやりたくないような感じだ。他の人は?
「これだけ反対者が出てて賛成の声が聞こえないんだったらやらない方がいいんじゃない?」
啓子のド正論のような意見に結香はがっくり肩を落とす。僕は他の人の意見も聞いてみるが、何も無かったようなので歌とダンスに決めた方がよさそうだ。
「分かったよ、一人でするよ」
「じゃあ、歌とダンスで活動しよう」
これで活動内容は決まった。後はこれをどこでPRするかだ。
「じゃあ、ライブの場所はどうしようか? 練習場所はここのスタジオでするとして」
「……」
みんな、無いのか? ライブ場所は杏子が悩んでいる分野なのだが……。
「誰か、意見がある人」
「あら、私が前決めた会場だけでは足りないようね」
「もっと欲しかったです」
「あの、大きなスーパーでたまにアイドルがライブしているのを見ますけど、あれってどうやって交渉してるんですかね?」
この啓子と哲子の意見には賛同だ。避けては通れないけど、大きいスーパーに行くとしてもまず交渉前にPRしないといけないのだろう。それでも何も無い今の状態で舞台に立たせてもらえるのだろうか?
「直くんにはライブのスタジオをしてる知り合いはいないよね?」
「そんな人いないって」
「だよね~」
結香は知り合いに頼むという案を提案してきたが、『僕にそう言う人はいるわけないだろうが!』って突っ込むところだった。どうせ僕には知り合いはいないですよ! じゃあ、どうするか?
「私も探してるんだけどね、なかなか許可がもらえなくてね」
「啓子の提供してくれたスタジオは使うとして、会社側がよければ」
「あとは、カフェでライブしたいな~」
「杏子、あの、ライブ会場でカフェばっかり当たっているとかないよね?」
「え? ないよ。センマイコーヒーとか、他の競合とか……あっ!」
「あの、ホールは当たってないのか?」
「競合他社でするとか、社員的にアウトじゃないんですか?」
僕が詰め寄るが、哲子は割とまともな事を言ってたので参ってしまった。
「そうですよね。他の会場も探しているんですけど。やっぱり有名にならないと無理なんですか?」
「活動をして結果を出す必要はありますけど」
「それまでは、うちの会社のホールを使えばいいんじゃない?」
啓子がそうアドバイスをすると、杏子はついに黙ってしまった。困り顔。何かを考えているようだ。
「うーん。他のみんなの意見も聞こうよ」
「そうね」
「他のみんなはどう思う?」
困った結果、杏子は他の人にも意見を聞いた。
「また、あそこで、歌いたい」
「私もあそこは気に入ってます☆」
宇音と海音はそれで賛成らしい。
「あたしはいろいろな所でやりたいな」
結香は反対だった。
「う~ん。これは挙手で決めた方がいいのか?」
「これは当分の場合で、少し人気が出てきたら他の会場も取りやすくなるんですよね」
「宇音ちゃんや海音ちゃんの願いも叶えられるし、結香ちゃんの言う色々な所でやることもできる」
「いつかできるなら、それまでがんばろうか」
多数決かと思いきや、哲子が説明してくれて、真凛が説得してくれたため、結香が折れた。
「直之さんはどうなの?」
杏子が僕に聞いた。またいきなり振られたので、どう答えようか?
「ええと、あの、みんながよければいいと思うよ。杏子の意見も聞いていなかったな」
僕は上手く答えられなかった。
「私も反対だったけど、やっぱり今は動いてもダメか。これから練習が入るからしっかり練習しなくちゃね」
「ホールを使うことに関しては?」
「折角、村原さんが提供してくれたホールだから、これからも使っていこう。今後のことは、練習しながら考えようか」
というところで、杏子も納得して場所は決まった。以外に揉めたけど。




