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第1話-2.召喚される女性達

 アイドルを作ることになった僕は、これからどうしようか考えていた。すると突然、部屋の奥が強い光に包まれた。さらに少し時間が経つと、光が徐々に弱まり、そこにいたのは一人の女性だった。これが松田さんの言っていたやつか? 事前の説明があったからいいが、予告なしに突然人が現れたらたまったもんじゃない。


 その現れた女性は、年齢は若く、髪型はやや長めのショートカットで身長は僕と同じぐらいだ。すごくスポーツが得意そうに見える。服装は灰色のチェックのスーツだ。と言うことは、社会人? そして、まゆ毛が細くキリッとしててとても美人だった。


 その女性は驚いた顔でこちらを見つめていて、手で口を覆っていた。僕も、驚いていて、体が動かない。


……。

……!?


 しばらく、何十秒か、いや、もっと経っているかもしれない、驚きで硬直した時間は、目の前の彼女が打ち破ってくれた。


「あ、こんにちは、私、二宮杏子にのみや きょうこといいます! 十九歳で社会人二年目です」


 彼女は緊張した感じで簡単な自己紹介をしたので、僕も簡単な自己紹介をしてみる。


「あ、僕は吉田直之といいます。二十四歳で、ここで働いています」


 ……。


「で、何を話せばいいでしょうか?」

「えっ!?」


 女性はそう切り出したが、僕も何から話していいのかわからないので、驚いて聞き返してしまった。そう、僕は女性と話し慣れてない。


「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「……」

「……」


 ああ、何を話していいかわからないや。


「あの、どうかしましたか?」

「え!? 何も!」

「まあ、おかしいですよね? 状況の整理ができないですよ」

「えーと、二宮さん、今までどこにいました?」

「今まで、ですか? 会社で普通に仕事してました」

「どうしたんですか? 難しそうな顔してますよ。考え事?」

「いや、ひょっとして、転移したのかなと思って」

「え?」


 二宮さんが驚きと疑問の声を上げ、口元に手をあてたところで、彼女の体が光に包まれていった。


「あっ!」


 僕も声を上げたが、光はだんだんと収束していき、僕の目の前には壁があるだけだった。間違いない。これは松田さんの言っていた異空間から生物が召喚されてくる現象だと思った。それにしても、昨日からアイドルの監督に急に抜擢されたり、その仕事部屋の壁が異空間につながっていたり、本当に驚かされてばかりだ。時間にしておよそ十分、あっという間に消えてしまった。彼女がどこの誰なのか聞く暇もなかった。松田さんは壁から人員が召喚されると言っていたが、先が思いやられる。


 そうしているうちにお昼が来てしまった。計画を考える間もなく、僕は資料室を後にしようとした。


 すると、また壁が光り始めた。ていうか、これからお昼にしようと思ったのに……。


その光が収まって、僕の目の前に現れたのは肌がとても白く、顔のパーツが小さくとても整った顔立ちであどけない女性、というか、女の子だった。彼女は赤と緑の髪の色が特徴的で目を引く。僕は大きな驚きの中、彼女を見つめ続けていた。


「あ、あの!?  こ、ここは?」


 彼女はあどけない話し方をした。小さい口を必死に開けているところがまたかわいい。


「え!? 君は!?」

「わ、私は……!? ……名前は、ありません!!」

「……!? なんで?」

「ないから……」


 名前がないのか。困った。どう呼べばいい……。あ、そうだ。


「そうだ、名前を考えよう。いい?」

「は、はい」


 彼女は即答したが、それはまるで、条件反射のようだった。


「どんな名前がいい?」

「え? なんでも」

「なんでもいいか……」


 実はその回答が一番困るんだ。その時、恥ずかしそうに髪をいじる彼女が腕を捲りあげたところで目を疑った。彼女の腕に紫色の毛がびっしり生えていたからだ。


「この毛は?」

「ああっ!」


 彼女は腕を慌てて隠す。


「見た?」

「ごめん」

「いい」

「うん」

「私、異星人」

「え?」


 僕は耳を疑った。まさか、本当に宇宙人が来るとは……。ただ、かわいい宇宙人だったので怖くはなかった。じゃあ、彼女はさんは毛深い宇宙人なのか……って何だそれ?


「う~ん、じゃあ紅藤緑こうどう みどり、でいい? その髪の色、あとここの毛も」

「は、はい!」

「ああっ」


 紅藤さんは顔を真っ赤にして下を向いてしまった。


「紅藤さん」

「はい」

「なんでこの星の言葉がわかるの?」

「それは……」


 紅藤さんがまた可愛く、気恥ずかしそうに、服の上の翻訳器を指さした。ああ、これか。いろいろな言語の混ざる星なのか。まあ、今資料室でありえないことが起きているので、いろいろと理解に苦しむ僕なのであった。


 紅藤緑(僕命名)が来てから一時間が経った。だが、彼女はさっきの二宮さんとは違い、一向に転移しない。そして、彼女は人見知りなのか、自分から話しかけてくることはなかった。そして、僕も女性が苦手なため話しかけられない。


 資料室は今、永遠の静寂に包まれている。


「……」

「……」


 その後も紅藤さんは転移せずにお昼が来たため、僕は緑と一緒にご飯を食べていた。


「おいしい?」

「はい」


 僕はお弁当のおかずを緑に食べさせてあげる。本当にこんなことをしたのは初めてでものすごく緊張した。


********


 今日1日の仕事が終わってから、僕は今日の出来事を報告するために、現場事務所に来ていた。当分の間はこのようにどんなことがあったか松田さんに報告をしなければならない。別に嫌なわけではなくて……。と、いうわけで、松田さんに、女性が突然現れたことを告げた。


「吉田君、今日は何かあったか?」

「今日は午後、資料室に女性が現れたんですよ」

「うん、それでは転移が起きたのか?」

「はい?」


 松田さんの言葉に、僕は質問した。


「そうか、わっかりました」


 ……いやいや、質問したんだけど。転移の意味が分からなくて聞いたんだけど。それに確か昨日は『召喚』と言っていたはずだ。『転移』と『召喚』はどう違うんだよ?


「あと、召喚の時間は世界の秩序とかの都合もあってそのくらいの時間なんだろう」


 と、それだけ説明して松田さんは足早に去っていった。今回は『召喚』と言っていた。でも、松田さんから召喚や転移についての説明はない。


「あ、あともう一つ」

「何だよ?」


 松田さんを止めてしまったのは悪かったが。松田さんには見てもらいたいものがあるので、資料室へ向かった。


「あ、もう一人転移していたのか?」

「はい、ただ、彼女は戻らなくて」

「こりゃあ、戻らないと思うな」

「彼女は今日、どうしましょうか」

「うーん。じゃあ、今日は俺が面倒見ようか」

「は、はい」


 どうやって面倒をみるのかは分からない。とにかく、引き取り手がいてよかった。


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