第7話-2.始動ミーティング 開始!
よし、今日も作曲が終わった。作曲を終えて海音の元を立ち去ろうとしていたら杏子がいた。って何でここに杏子がいるんだよ? 僕の居る場所が分かったのか? 怖い。
「直之さん、報告があります」
「報告?」
杏子は自分のスマホを突き付けてくる。
「見てって言うことか?」
LINEの画面を見るとすでに全員から返信が来ていた。僕も確認したからそれくらいは分かる。みんなの返信は、
『私は日曜までかな? それより先はテストで忙しくなりそう』
『私も日曜が一番宜しいです』
『私は基本的にいつでも空いてるわ』
そう言った内容だ。まあまあ忙しそうじゃないか。
「直之さん、次の日曜日でいいかな?」
「うん」
こうして、ミーティングの日程は決まった。
「ミーティングは十時から十二時です。練習は十三時から十五時ね」
「みんな言うと思うけど、もう練習するの?」
「折角ミーティングするんだから、流れで体も動かしたいじゃない」
「僕はそう思わないけど」
「直之さんはプロデューサーだから動かなくていいのね。あ、ジャージは買った?」
「いや、僕は運動にはいかないから!」
杏子は僕に運動させる気なのか? でも僕は運動が苦手なんだ。悪いけど。
「じゃあ、今言ったことをLINEに書くね」
「うん。練習の事については他のアイドルからも突っ込まれるかも知れないよ」
「さっき言った通り、ミーティングのついでに体を動かそうと思って」
「ついでって……」
ついでか。するんだったらもうちょっとしっかりしないと無駄な時間で終わってしまうよな。それならやらなくていい。僕もその間、フィットネスに行かされるくらいならやりたくはない。
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金曜日の夕方についに曲が完成した。
「やった! 海音!」
「お疲れ様!」
僕と海音は大きくハイタッチした。
「よし、じゃあこれは杏子に聴いてもらうよ」
「はい」
僕は自分の作った曲を持って海音の元を後にした。
杏子に会えるかどうか、LINEしてみたら、明日会うことが決まった。突然の事だから断られるかと思ったが、あっさりとOKしてくれた。
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次の日、僕は杏子に会ってセンマイコーヒーに向かった。
「これが新しい曲のCDだよ」
「分かった。聴いておくね」
広い空間に杏子の元気な声が聞こえてくる。店内だと小さな声では聞きづらいのでこのくらいの方がいい。
「あの、前の曲を聴いてみたけど」
「どうだった?」
「直之さん! これすごくいい! これをよく一週間で作れたね!」
「実質はもう少し短いんだけど」
「え!? そうなの!? すごいよ! 直之さん!」
「ちょっと、杏子! 褒めすぎだって!」
「ごめんなさい! でも直之さんはそれだけすごいことをしたの!」
杏子は両手を合わせて握りしめながら嬉しそうに僕にこう話す。でも、そうかなあ。そんなにいいか?そんなことを思うが杏子はすぐに話を変えていた。
「あっ、そういえばね、直之さん。レコーディングの日程を決めたいんだけど、どうしようかな?」
「レコーディングは全員集まってほしいから全員が集まれる日がいい。あと、もう少しトレーニングをした方がいいから、もう少し後がいいと思うよ」
「やっぱり、そんなに早く出来るもんじゃない、よね」
「うん、結香とか派遣の啓子や哲子はまだ全然歌の練習してないから」
そういう話をすると杏子は暗い表情を見せた。レコーディングがしたかったようだ。まあ、練習場所も見つかったので今はアイドル達を鍛えるのが先だと思うが。
「ああそうだ! 直之さん、これからエブリディフィットネスに行くけど、運動する?」
「う~ん、見学には行きたいけど、運動はいいや」
「え~! 運動、楽しいよ!」
「う~ん!?」
運動、楽しいのかな? 僕にとっては苦行なんだけど。
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続いて、僕達はエブリディフィットネスの下見にやってきた。
「さあさあ、こっちこっち」
杏子に案内されて明日のミーティングで使う会議室を確認したが、遠いぞ。二階だし。いや、泣き言は言ってはいけないな。
「じゃあ、私は運動してくる。直之さんは運動着持ってないもんね」
「持ってないよ。すまないけど」
「次までに用意しててね。楽しいんだから。今日は解散ね」
あー。用意しないといけないのか。解散を告げた杏子はすたすたと行ってしまった。駅まで送って行こうかと言う間もなく。
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日曜日、僕は海音、宇音、真凛を迎えに会社の隣の公園まで向かった。休みの日に会社に向かうのは気が進まないのだが。
「「おはようございます」」
「おはよう」
挨拶してすぐ、僕は三人を車に乗り込ませ、エブリデイフィットネスへ向かった。
車の中ではみんな緊張してるのか会話がない。なので、僕は今日の移動について考えていることを振ってみた。
「宇音」
「え、あ、はい」
宇音は不思議そうに首を傾げた。
「悪いんだけど、歩く時、腰をかがめて歩いて欲しい。ちょっとその背の高さを隠したいから」
「え? 分かりました」
宇音はまた首を傾げるも、僕のこの案に賛成した。
「真凛は……とりあえず真ん中を歩いて」
「分かりました」
真凛もそれに承諾した。ってことはこの中で一番まともに歩けるのって海音なのか。
「あの吉田さん。それだったら隠せるものがいりますでしょうか?」
「ああ、また長いスカートでも買おうかと思っているよ」
「ああ、それはありがとうございます」
「ええ!? 私も何か買って!」
「ごめん。また考えとく」
真凛は鰭を隠すためにロングスカートを買おうと思ったんだが、宇音には何を買えばいいのだろうか?
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車はエブリデイフィットネスの地下にある駐車場についた。今時、地下に駐車場がある施設は珍しいかもしれない。僕は地上に出る道を急いで探した。
「みんな! 行くよ」
「「はい!」」
宇音と真凛の返事がするものの、みんな遅い。
「直之さん、ごめんなさい! 出られない!」
「え?」
後ろを見ると、宇音が車から出るのに一苦労している。僕は宇音を引っ張って出してあげる。
「直之さん、ありがとうございます。私、直之さんのこと……」
「じゃあ、行くか」
「ええ!? ひどい!」
「吉田さん。動きづらい」
「ああ、支えようか?」
「ありがとうございます」
僕の補助で、やっと宇音と真凛が出て来れた。僕は真凛に肩を貸して、宇音は後ろをついてきている。
「直之さん。ちょっといいですか? 私、歩き慣れてないので」
真凛は鰭をくねくねさせながら歩く。ある程度調子に乗ってきたら離すつもりだ。
「なんで私は無視なの? 直之さん!」
「まあ、そう怒らなくても」
「怒るよ。こっちだってこの体勢痛いんだもん!」
宇音が本気で怒っている。なぜ怒っているのかは分からない。
「宇音ちゃんごめん。吉田さん。もういいですよ、ありがとうございます。後は自分で歩きますから」
僕は真凛から手を離した。そしてエレベーターで二階へ向かう。会議室前が待ち合わせ場所だが、外には杏子がいた。今日は白いカッターシャツと黒いスカートを身につけている。これが彼女の仕事着だ。
「おはようございます、直之さん」
「おはよう。遅くなってごめん」
「まだ間に合ってるからいいよ」
とはいえ、僕たち以外はみんな来ているようだ。
「さあ、中に入りましょう」
僕達は早速会議室の中に入って会議の準備を始めた。結香と海音は飲み物とお菓子の準備をしている。啓子と哲子は机や椅子を移動している。それにしても四人とも明らかに慣れている。まさか、これをずっと練習したわけじゃないだろうな?
「吉田さん、あんた前で二宮さんの隣よ」
「吉田さんと二宮さんが進行役ですから」
どうやら僕は進行役らしい。なので、僕は前に進むと、杏子は資料を準備していた。
「直之さん、今日の資料だから、みんな座ったら渡してね」
「ああ」
僕は、資料を渡す前に目を通した。が、聞きたいことが山ほどあるんだが……杏子さんよ……。
「みなさん、これから始動ミーティングをはじめます。今日は、二宮杏子とこちらの吉田直之さんが進行をしますので、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
杏子の号令により会議が始まった。最近、僕は完全に杏子のペースにのせられているような気がする。なぜかアイドルの事をほとんど彼女が決めている。僕はこのミーティングを無事乗り越えることはできるのか? そして、僕はどう切り出せばいいのか?




