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第九章 推しよりも推しらしい二推し

 絵本を持ってきてから、リチャードはもっとフォンディーヌ公爵邸を訪ねてくるようになった。

 この前私が言ったことを真に受けて、王宮のマカロンを必ず手土産に持ってくる。適当に言ったこととはいえ、マカロンは好きだ。なので、ついついマカロンを心待ちにしてしまう日もあったりして……リチャードではなく。


「今日はリチャード王子いらっしゃらないみたいね?残念だわ」

「お母様、そんな、私は別にっ」

「あら?私はエリザベスのことを言ったつもりはないわよ〜」


 ゲームの中でピックアップされることはなかったけど、母は意外と抜け目ない性格をしている。公爵家に嫁いだのだからぼけっとした奥方でいられるわけはないけど……。最近はこうやって、私をからかうのがマイブームみたいだ。


「うふふ、あんまりツンツンしてるとリチャード王子だって来なくなってしまうかもしれないわよ」

「……そんなことわかっています」


 そう、今は聖女が転生してくるまでのカウントダウンをしているにすぎない。もし聖女が来たら、リチャードだってあちらに行ってしまう……。あまり心を開きすぎると、あとが辛い。


「……からかいすぎたかしら、ごめんねリジー」

「いいえ、お母様のせいではありませんから」


 理由も説明できないので気まずい雰囲気に包まれていると、大変間の悪いことにリチャードが遊びに来たことを知らされた。



*****


「エリザベス!今日はエドワードも連れて来たんだ!知ってるだろ?」


 ひい、さすがは悪役令嬢。攻略対象とは全部会わないといけないのね……。前回のリチャードの誕生日パーティーは体調不良で欠席していた三人目の攻略対象に出会ってしまった。これでゲームのキャラはコンプリートだ。


「ええ、お久しぶりですわエドワード王子」

「こちらこそ!最近いつもお兄ちゃんがお世話になってます!」

「お目にかかれて光栄ですわ」


 まさに天真爛漫といった感じの三男はエドワード・ルイ・アルステリア。私たちとは1才下で、年下弟キャラとして強固な地盤を築いている。リチャードとエドワードの母は同じで、2人とも金髪碧眼の王子様だ。

 ルートの流れとしてはきゃっきゃうふふとほのぼの展開した後に「僕だって男なんだよ?」イベントをちょいちょい挟みながらエンディングへ向かっていくことになっている。この末っ子王子のルートはかなりほのぼので、原作の腹黒性悪エドワードもなんとただ1回だけの手合わせに負けただけなのに王位を譲ることになっている。

 実際この兄弟は仲がいいのだ。母親が同じだから一緒に育てられたし、エドワードには野心的な面がないので王位継承にこだわらない。


「焼けちゃうなあお兄ちゃん、母上がこんな綺麗な子との縁談を用意してくれるだなんて〜」

「ばっ、よせよ、からかうんだったら連れてかないって言っただろ!」

「はいはい、お姉ちゃん!今日は新作のフレーバーも持って来たよ!」

「えっと、お姉ちゃん?」

「うんっ!お兄ちゃんのお嫁さんはお姉ちゃんなんでしょ?」


 実際にお姉ちゃんになることはないんだからそう呼ぶのはやめてほしいけど、ああっ!顔がいい。リチャードとエドワードはコピペ兄弟と呼ばれるくらい作画が似ている。もちろん私はどちらも好みドストライクだ。

キャラ的な問題でエドワードを推していたのだけど、キャラ崩壊してしまった今リチャードも悪くない……。


「……そうですわね、お好きに呼んでください」

「お姉ちゃんもエドワードって呼んでくれる?」


「お前!俺もまだ呼び捨てにしてもらったことないのに!!」

「王子殿下を呼び捨てなど!できるはずはありませんわ!」


 危ない、いくら可愛かろうと作画が良かろうと、彼は攻略対象で私は悪役令嬢なのだ。ゲームのエリザベスがエドワードをどう扱っていたのか定かじゃないが、そんなに距離は近くなかったはず。私もエドワードと適切な距離を保たなくてはね。


「エドワード様、ご理解くださいませ……」

「そうだぞ!エリザベスを困らせるんじゃない!」


「……どうしても、だめ?」


 ほとんどリチャードと同じだが、ちょっぴり青が薄い気がするエドワードの大きな瞳がうるうると涙で満たされていく。リチャードは元々エドワードを可愛がっている、私は作画がいい二推しには逆らえない……。


「あの、そうですわね、三人で遊ぶときだけでしたらいいですわ……」

「仕方がないな……」


「わーい!ありがとうお姉ちゃん!」


 どう考えてもこの弟の方が腹黒な気がする。バグはここにも現れてしまったようだ。


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