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穴掘り
ブラナテラ軍は一夜を過ごすため、明日戦場となるであろう岩場を遠く見下ろせる丘陵に、野営の設備を敷いた。
果たしてパウルスは、一同が眠りに就いた頃合を見計らい、装備を整え、また夜警の目を盗んでシャベルを一本拝借し、陣営から抜け出した。
しばらく歩き、岩場に差し掛かった彼は、遠く前方に敵軍が敷く野営の灯りを確認した。
彼は、明日の開戦前に両軍がどのあたりで布陣するかの見当をつけると、その中間地点まで歩を進めた。
右手にはるかそびえる断崖の地層は、硬い場所もあれば脆い場所もあった。彼は地層が比較的脆く、また向いに位置する岩場が込み入った状態の場所を探し当てると、崖を掘り始めた。
深夜に剣士がぽつんと一人、崖を掘る姿は実に滑稽だった。