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安全策
さて、事のあらましを説明しよう。
時を遡ること戦いの前夜、ブラナテラ軍の大将は、作戦を隊員たちに説明していた。
パウルスもそれに参加し、一応聞くには聞いていたが、話半分に流していた。
彼の考えはこうだ。
今回の戦は幅の狭い場所で行われることになるだろうから、いずれ混戦となることは必至。
まあ無策に進軍するよりは何かしらの作戦を持っていた方が良いが、どうせ半分以上は意味を成さないであろう、と。
そして前に述べたとおり、彼は自身の生存を最優先に考えを巡らせていた。
戦場は幅の狭い地形である。両軍が衝突すれば、敵味方入り乱れての戦いになる可能性がきわめて高い。
となると、気付けば敵に背後をとられていた、などということは当たり前に起こるだろう――。
そうして彼の行き着いた結論、すなわち安全策は、戦いに参加しないことだった。