逆転劇
リーベルタ軍は完全に虚を突かれた。
親衛隊員の一人が矢により負傷、断崖より無数の石が弾けて散り、剣士が現れ、親衛隊員の一人が斬撃を受け、大将の首が跳んだ。
これらが息もつかせぬ間に起こったのだ。
その場でまともに動けるのは二名の親衛隊員だけで、彼らも決して油断してはいなかったが、あまりのことに理解が追い付かず身体は硬直してしまっていた。
その隙にパウルスは道を横切る形で駆け抜け、自然の岩場へと姿を消した。
そこでやっと状況を理解した親衛隊員は、うち一人が負傷者の救護を、一人が前を行く副将まで、大将が討たれたことを伝えるべく走ることとなった。
壊滅目前のブラナテラ軍にとって幸運だったのは、リーベルタ軍の副将が慎重な性格をしていたことだった。
リーベルタ軍の副将は、大将が討たれたことを知ると即座に撤退を決め、兵を引き上げた。奇襲の種がどこにどれだけ潜んでいるか知れないと考えたためだ。
一見すると勝勢に映るこの局面も、罠の可能性がある。現に大将は討たれたのだ。
ともあれ、敗北必至だったブラナテラ軍はすんでのところで難を逃れた。
パウルスはというと、岩陰に隠れて、引き上げていくリーベルタ軍が通り過ぎるのを待っていた。
かくして、戦いはブラナテラ軍の勝利に終わった。