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伏兵
リーベルタ軍の大将はしんがりにいた。
大将は自身の斜め四方に親衛隊員を一人ずつ配置し、勝利を確信しつつもなお声を張り上げ、自軍を昂ぶらせながらゆっくりと前進を続けていた。
そのときだった。
ブラナテラ軍から苦し紛れに放たれた矢の一本が飛来し、偶然にも大将の右前方にいる親衛隊員の肩を貫いた!
「ぐっ!」
矢を受けた親衛隊員はうめき声とともにのけぞり、どさりと仰向けに倒れた。
右後方の親衛隊員がそこへ駆け寄った。同時に、左前方の親衛隊員は大将の真正面へと、素早く、大将を庇うがごとく配置を変えた。
刹那、がらがらとけたたましい音が大将の左後方で鳴り響いた!
何事かと大将が振り向いた。
「があっ!」
そこには、悲鳴とともに膝をつく、左後方に配置した親衛隊員と、見知らぬ剣士が一人。
「ふ……」
伏兵――!
大将の脳裏によぎったその言葉は、ついに紡がれることはなかった。大将は身構える間もなく頭と胴とを斬り離され、その首は宙を舞った。
突如として現れたパウルスが、敵軍の大将を討ち取った瞬間だった。